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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

トランプ大統領へのマンキュー教授のアドバイス(What the President Could Learn from Professional Economists)

2017年3月13日(月)12℃ くもり

 

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一国の宰相の政権運営にケチをつけるのは簡単だ。しかしじゃあお前やってみろと言われて、躊躇しないものがいるだろうか。とにかく何でもいいから目立ちたいという、幾分精神構造に支障がある人や、政権を取るというギャンブルに人生を賭けている政治家以外は、とりあえず、悩むのではないだろうか。

 

ことに経済問題に対する判断というのが厄介だ。

 

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トランプ大統領がエコノミストをあまり信用しないところには、ちょっと共感するところがある。テクノクラート官僚の、自分の利害満々と思われる提案と、あまり責任感の強いとはいえない評論家、エコノミストたちの抽象的な提言や、いきあたりばったりのコメントの中で、何かを選択するというのは、たしかにとんでもなく厄介だ。

 

昔経済学を若干かじっただけの自分も、どうも、エコノミストの提言というものに首を傾げてしまうところがある。あまりにも正反対の意見が乱立しているからである。そして、どちらかがどちらを、素人目にも完全に論破しているというのも、あまり見たことがない。

 

そうはいっても、大統領自身が経済理論の専門家でもない限り、どのみち経済アドバイザーは必要になるのだ。

 

昔なら大学の経済学の教科書と言えば、サミュエルソンだったが、最近はどうもマンキュー経済学がそのあたりの影響力を増しているらしい。そのマンキュー教授が、ニューヨークタイムスにきわめてわかりやすいエッセイを投稿している。

 

大統領がプロのエコノミストから学ぶことができるものと言うタイトル。

 

以前話題になった、超特急で政権から去っていったフリン補佐官を夜中に叩き起こして、トランプ大統領が「ドル高、ドル安、経済にはどちらがいいんだ?」と聴いたのに対して、フリン氏が、「自分は軍人ですから、そういったことはわかりません。そういうあたりはエコノミストに聞いたらどうでしょう」と答えたというどことなく「ちょっといい話的(?)」エピソードからこのエッセイは始まっている。

 

What the President Could Learn from Professional Economists

By N. Gregory Mankiw

https://www.nytimes.com/2017/03/10/upshot/what-president-trump-could-learn-from-professional-economists.html?ref=todayspaper

(以下意訳。省略多し)

トランプ氏が集めたスタッフのメンツを眺めていると、彼のエコノミスト嫌いがなんとなくうかがえる。しかしそのうち、法で定められた大統領経済諮問委員会の3人のメンバーを指名しなければならなくなる。トランプ氏が最初のブリーフィングでエコノミストからどんなアドバイスを受けることができるかをここで説明してみよう。

 

まず、最悪の経済を相続したというトランプ氏の言い分ではあるが、ドットコム恐慌のあとに、就任したブッシュ大統領や、金融危機のなかばに選出されたオバマ氏に比べれば相当良好な経済を引き継いでいる。

 

事実で確認してみると、失業率は約5%。長期的に維持可能と多くのエコノミストが考える標準に近い。インフレも中央銀行のターゲットの2%に近い。

 

これは事実であり、最近流行の「代替的」事実ではない。

 

トランプ氏がその気になれば、大幅な減税や広範なインフラ支出によって失業率をさらに低くしようと試みることはできる。しかし経済学的に見て、財やサービスに対する総需要の大幅な拡大は、今経済が必要しているものではない。

 

総需要を刺激すれば、高いインフレを引き起こすか、おそらくはFedのイエレン議長が、今想定しているよりはるかに速い速度で、さらに高い利上げが必要になるだろう。

 

現在の景気回復が歴史的に見て低水準であるというトランプ氏の嘆きはもっともである。しかしその要因を逆転させるのはかなり困難である。

 

低成長の要因の一つ目は人口構成比の変化によるものだ。古き良き時代には、労働力人口に占める成人の比率が増加を続けていた。女性の社会参加が拡大したことと、団塊の世代が働き始めたことがその要因である。

 

今では、女性の役割は安定化しつつあり、団塊の世代は引退しはじめている。

 

さらに大統領の標榜する経済ナショナリズムの観点からは、移民による、労働人口の増加はあまり見込めそうもない。

 

労働人口増が低下すれば、我々はGDPの成長率も鈍化すると予測せざるを得ない。

 

低成長の二つ目の要因は、生産性の成長の低下である。これは米国だけではなく、ほとんどの先進国経済で生じている。

 

生産性低下の理由は、完全には解明されていない。この点に関して、

最近スタンフォード大学のチャールズ・ジョーンズの説明を聞いた。

 

彼らの研究によれば、研究開発に携わるアメリカ人の数は、1930年代から20倍になっているが、生産性はこれと同じ比率で拡大していないという。

 

なぜか。彼らの解釈は、素晴らしいアイディアを発見するのが以前より困難になったから。

 

残念ながら、簡単にこれが変化する兆しはない。

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確かに、トランプ氏は成長を促進するために何かができるかもしれない。規制改革、税改革もうまくいけば、正しい方向へ向かっている動きになりうる。

 

しかし先に述べた人口構成比やテクノロジーのトレンドから見て、政府の政策によって達成できることへの期待をあまり高めない方がよいだろう。

 

大統領の支持者たちの賃金の低迷はそんなに簡単に改善できそうにない。

 

トランプの勝利はかなりの部分が白人の労働層の支持によるものである。

 

Pew Research Centerによれば、全有権者の中で、ヒラリー・クリントンは、大学卒の票で9%リードし、トランプ氏は非大学卒の票で8%リードしていたという。

 

世の中のこの分断の原因は理解しやすい。

 

1970年代から、高学歴者の平均収入は堅調に成長してきた。

 

これに対して、学歴の低い層の収入はインフレ調整後では低迷しているのである。

だからこそ、アメリカを再び偉大にするというトランプの公約は、この層にはかなり響いたのである。

 

問題はトランプ氏がこれらの好ましくないトレンドをどう変えることができるかなのである。

 

大統領が主張するように外国との貿易協定の欠陥を主要な問題視する経済学者はほとんどいない。より重要なのは、エコノミストがスキルにバイアスがある技術変化(skill-biased technology change)と呼ぶものである。

 

起業家が新しい技術を導入するとしよう、例えばロボット。こういった戯jy津進歩は、非熟練労働者を代替する可能性が高いのである。

 

同時に、熟練した労働者も、新しい技術を補完し、維持していく必要があるのである。

 

非熟練労働への需要が低下し、熟練労働への需要が高まれば、賃金ギャップはさらに拡大することになる。

 

この問題に対する本質的な解決は、労働者に良い教育とスキルトレーニングを施して、彼らの生産力を向上させることである。ただ、これは言うは易く、行うは難しなのである。

 

最後に、フリン元補佐官から振られた質問に答えなければならない。

 

ドルの話だ。

 

まずは簡単な答えから。

 

外国為替市場におけるドルの価値もまた、モノの価格にすぎない。他の価格同様、変化すれば、誰かが儲かって、誰かが損をする。その意味では、強いドルと弱いドルのどちらがいいかを考えてもあまり意味がない。目の前の状況を直視して、その変化の要因となっているものが何かを真剣に考えるしかないのだ。

 

まあこういったことを、エコノミストたちは答えてくれるはずである。トランプ氏が早めにエコノミストを任命する判断をするのを期待することにしよう。(以上)