21世紀ラジオ (Radio@21)

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内部にある「他者」としてのFT

2017年3月14日(火)11℃ くもり時々雨

 

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韓国という国の動向に注目が集まっている。当然ながら政治的危機のさなかにある。日韓の歴史という生さぬ仲の関係のためか、日本のメディアは、ともすれば、対岸の火事を上から目線で興ずるというところがある。これはとりもなおさず、僕たちの中にある視線を反映したものだ。お互いに、双方の失敗を喜ぶメンタリティがないかと聴かれれば、即座に否定する自信がない。

 

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日経新聞が英国のクオリティペーパーのフィナンシャルタイムスを買ったことは、今更ではあるが、大英断だと思う。「いい意味でも悪い意味でも」、FTの独立性は担保されるだろうから、メディアとしてのFTは最良の買い手を見つけたと思う。

 

FTとの連携の結果、衛星放送での日経の番組へのFT記者の参加等さまざまな連携の動きはあるが、これも「いい意味でも悪い意味でも」、遅い。拙速は避けるべきだろうが、読者の観点からは、日本語で読める、FTの視点をもっと増やしてほしい。

 

シンプルに言えば、もっと、翻訳の本数を増やしてほしい。

 

今日の、韓国の大統領罷免以降の韓国の動きを好機ととらえるべきというFTの社説は、さきほどのお隣さん同士の陰湿な探り合いを超える、遠いところに住む外国人のドライだがどちらかと言えば前向きな目線の、英語で言う、Inspiringな記事だった。

 

韓国憲法裁、朴大統領を罷免 政治・経済 改革の好機に

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170314&ng=DGKKZO14033170U7A310C1FF1000

『 昨年末に韓国の汚職疑惑が世界的に大きく報じられると、多くの韓国人は国の恥だと感じた。しかし今、彼らは誇りに思うべきだ。(中略) 憲法裁判所は朴氏が「国を守る義務に違反した」として、判事8人の全員一致で弾劾訴追を妥当と判断した。これは韓国だけでなくアジアにとっても重要だ。これにより韓国は、世論に反応して正当な手続きと法の縛りの中で繁栄する民主主義国としての信認を高めた。しかも韓国は、世界中で脅かされている自由民主主義に強い刺激を与えた。』

 

たしかに、メディアのコントロールを待つまでもなく、「いい意味でも悪い意味でも」国民の自己規制が強い日本と比べれば、テレビ等を賑わせるデモの広がりには驚かされる。

 

国民の気質のような文化的分析というよりは、日本に比べて、国の経済、社会システムに大きな危機が訪れていることの現れだろう。

経済、政治、外交、社会すべてにおける抜本的な改革を必要とする大きな危機に直面している。使い古しの決まり文句だが、危機と機会は表裏一体というのが、まさに韓国の今の状況を示しているという内容のコラムである。 

 

『 韓国は過去50年間の急速な発展で、経済に新たな道を切り開く存在として定評を得た。そして今、世界中の新興民主主義国家の政治的な手本、そしてアジアで地政学上の極めて重要なプレーヤーになろうとしている。次の大統領が背負うものは多い。』

 

安倍一強という現状に騙されてしまうが、日本社会は深刻な自家中毒の中にある。外交、政治という側面では、戦後を決定づけてきた体制の強靭さの故に、その変化を妨害する力がいまだ強い。その体制の被膜が弱い、社会という場面では、数々の異形の犯罪等を通じて、毒ガスが漏れ始めている。

 

いずれにせよ、僕たちの立っている位置も決して自然で安定したものではない。

 

僕たちにとって大切なのが、自分たちの社会の健全性をいかに保つかだとするならば、トランプ現象という派手な見世物だけではなく、自分たちの隣国、そして自分たちの住む街で起こっている状況を、広く見つめる必要があるのだろう。

 

「いい意味でも悪い意味でも」完全に内部化されないFTを持つということは、日経新聞にとっても、日本社会にとっても、大きな意味を持つような気がする。