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アメリカのAchievement追及メンタリティに賞味期限はあるのか

投資銀行ヘッジファンドに代表される米国金融業界の米国社会における地位は、ここ数年、彼らが引き起こした様々な問題にもかかわらず、一向に、低下していない。

そこには、米国社会の持つ、達成というものへの妄執と、それをもっともわかりやすく表現する、ウォールストリートの成功者というものの機能があるというのが、NYTのWilliam D. Cohanのブログを読んだ。この帰結として、人々は失敗をおそれ、失敗から学ぼうとしなくなる。しかし、そこから学ぼうとする姿勢を持つならば、失敗には巨大な力があるという内容の「失敗の力」というブログ。

経営教訓のような最後のくだりはつまらないが、たしかに、Achievementを徹底的に追い求めるこのアメリカ的メンタリティにはまだ賞味期限が残っているのかどうかということを考えさせるという意味で面白い内容だった。

http://opinionator.blogs.nytimes.com/2010/11/26/the-power-of-failure/?ref=opinion

彼らが引き起こした金融危機にもかかわらず、アメリカのウォールストリートへの心酔は揺るぐことがない。

我々米国民は、いまだに、彼らに富、威信、栄光を与え続けている。

ウォールストリートは米国のベスト&ブライテストが集まる場所のままだ。

何故こんなことが起こるのか。

なぜ我々はウォールストリートの面々がいまだに道徳的に疑問のある行動を続けることに、寛容なままなのか。

なぜ彼らが生み出す金融的災厄に耐えなければならないのか。

なぜ彼らの起こす法的に問題のあるスキャンダルを許し続けるのか。米国におって本当に必要なのは、金融エンジニアリングではなく真のエンジニアリングのはずなのに、なぜ。

こういった状況が簡単に克服できないのは、それが米国民あるいは、人間そのものの特性に根ざしているからである。

普通の動物は、自分自身を超えようなどとしないし、群れの中で、トップになろうなどとしない。

しかしアメリカ社会全体の中には達成Achievementというものを強く望む気分が横溢している。

その達成の文化とでも言うべきものの到達点として、ウォールストリートが機能している。

しかし解決しなければならないのは、そのウォールストリートが20年間、我々を失望させ続けているという事実だ。

さらに悪いことに、トップ経営者は、自分たちの過ちを認めようとしない。その一方で、何百万ドルという報酬を追い求めるだけで、過去のことから学ぶことができない。

金融業界の経営者たちは、生涯一度きりの金融津波について語りたがり、納税者が他の企業は救ったのに、リーマンブラザーズを救わなかったことに不満を言い続ける。

リーマンブラザーズの元CEOのRichard Fuldも、自社の崩壊を嘆くばかりで、自分の責任を認めることがない。

当然、これは、彼の問題だけではない。

どちらかといえば、勝ち組といえる、JPモルガンチェースのCEOのJamie Dimonはウォールストリートに対する中傷の継続にはあきあきしていると発言する。

しかし真のリーダーは、過ちを犯し、それから学ぶことの重要性を理解している。

真のリーダーの一人である、スティーブ・ジョブスは、自分が共同創業者だったアップルから解雇されたことが、過去に起こった最高の出来事だったと語る。

成功することの重さがビギナーとなる軽さに代替され、自分の人生の中でもっと創造的な時期がその後生じたという。

自分の成功だけを追い求め、失敗を恐れるべきではない。もっとも強力な人間は、自分が失敗することの不安におびえたりなどしない。

それから学ぶことができるならば、失敗には巨大な力がある。

ウォールストリートはいまだに多くの失敗を続けている。しかもその失敗から学ぼうとしている気配はない。我々国民は、ウォールストリートを本来あるべき位置に戻す勇気を持ちえるだろうか。それがどうなるかによって、アメリカにとっての未来というものを決めていくことになるだろう。(以上)