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イギリス連立政権の行方(ニューヨークタイムス)

ギリシア危機に揺れるユーロ圏だが、通貨統合からは一歩距離を置いている英国も、財務赤字のGDP比率は11.8%とギリシアの13.6%に迫る勢いだ。

その意味では久々の連立政権の課題は重い。

ニューヨークタイムスのイギリスの連立という論説。
http://www.nytimes.com/2010/05/13/opinion/13thu2.html?ref=global
第二次世界大戦以来はじめてというイギリスの連立政権の課題と構造的問題点を明らかにしている。

保守党(The Tories)と中道左派自民党Liberal Democrats)の意見はほとんどすべての論点で異なっているという。しかしイギリス経済はひどい状態にあり、強力なリーダーシップを必要としているので、両党が協力する道を探らねばならなくなった。

心から幸運を祈るという論者の言葉が重い。

未来に待ち受けている危機と、政権の脆弱性を踏まえて、キャメロン首相と自民党のクレッグ党首は、(議員の55%が解散に票を投じない限り)議会を5年間継続する法案を提案するという。

これは大幅な変更であり、慎重な議論が必要だと論者は言う。

この審議が、GDP対比11.5%の財政赤字という、市場を怯えさせ、何週にもわたってポンドを動揺させている財政緊急事態への対策を遅らせることがあってはならない。

しかし、当然、イギリスはギリシアではない。労働党政権は粉飾決算を行っていないし、国家支出も概ね賢明だった。

英国の財政赤字は、他の国と同じで、グローバルな不況による税収の落ち込みと、銀行システムの防衛と景気刺激のための巨額の財政支出によるもの。

こういった財政出動がなければ、イギリスの経済状況はもっと悪化したはずだ。

連立政権の閣僚の中で、保守党は、経済、外交、防衛の3つの要職をおさえた。

クレッグ氏は副首相であり、自民党議員が4つの閣僚ポストを得た。

自民党はまた投票総数の23%を獲得しているのに、議席が9%以下という現状のイギリスの歪んだ選挙制度についての国民投票を勝ち取った。

保守党は、今年から財政削減に着手することを自民党に合意させた。翌年に繰り延べて、脆弱な回復に水を刺したくないという考えだ。

保守党はEUには懐疑的、移民には敵対的で、規制のない市場を信奉している。

自民党はEU寄りで、環境主義、人権擁護的で、累進課税を主張し、軍事予算削減とアフガニスタンよりの早期撤退を主張している。

環境と税制のあたりに、保守党に歩み寄る姿勢があると論者は言う。

いずれにせよ、連立政権複数年の財政赤字削減策について市場を再度納得させる必要がある。

累進的税制改革や公共支出削減によって国民に必要なサービスを骨抜きにされてはならない。同時に、この二つの政策が、景気回復の妨げにならないようにしなければならない。

景気回復なしには、イギリスがその健全財政を回復する可能性はないと、論説は締めくくられている。