21世紀ラジオ (Radio@21)

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塩パニックに見る低信頼社会中国(ヘラルド・トリビューン)

世の中が互いに一定レベルの信頼を持っている社会ではパニックが生まれにくい。

今回、日本でも、政府発表に懸念を持つ人はいても、基本線で、彼らが悪意に基づいて情報を操作するとまでの不信感を持つ人の数は多く無いような気がする。

自分のことを考えてみても、責任回避を是とする日本の組織人が、危機状況におけるリスクマネジメントで、ともすれば、本質から外れた判断をしてしまう脆弱性を持っているということに対しては厳しく捉えるとしても、現場で戦っている人々の個人的なIntegrityにまで不信を持つまでには至らない。

ある意味、この国から逃げ出すことはできないという意味で、政府に対する、同じ船に乗った意識は壊れていない。

地下鉄の中で読んだヘラルド・トリビューンのDidi Kirsten TatlowのLetter From Chinaでは、今回の日本の原子力災害が、中国に引き起こしたヨード入り塩パニックや、新規の原子力プロジェクトへの反対がウェブ上で急増し、それを、中国政府が押さえ込んでいる様子が報じられている。

ワシントンのカーネギー財団のKevin Jiajun Tu氏のこんなコメント。

”The salt-buying panic shows that in the future, the lack of trust in this area between people and the government is going to be really serious."

(塩パニックが示すのは、将来、この(原子力の)領域での、国民と政府の間の信頼の欠如は極めて深刻な問題を引き起こすだろう)

経済成長を国家の支えとする中国政府は、「効率的な」原子力発電を必要としている。しかし、原子力発電を安全操業するための多くの経験値をこの国は持ち合わせていない。重要なのは、この国の国民が、そのことを信じていないという事実である。

始終どこかで大事故が起こっているこの国が原子力発電を100%安全に運営できるはずがないという、コラムの最後に引用されたウェブへの書き込みが、そのことを如実に表している。