21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

詩と史の時代 (冲方丁「光圀伝」)

明暦の大火の時のような大量の焼死者を出さないようにということで江戸幕府によって隅田川にかけられたのが、両国橋だという。 東日本橋から、この橋を超えると、江戸ではなく、川向うと呼ばれることになる。 たしかに両国橋を渡り切ると、空の広さを実感す…

元禄デジタル散歩のすすめ(志ん生の中村仲蔵を聴きながら俎板橋跡渡る)

ITだとか、インターネットだとか言うと、若者のため、家に引きこもりがちな人用などという偏見がいまだにあるようだが、電話は若者用だとか、外出嫌いの人用などという発言はもはや見当たらない。技術の導入には時間がかかるというか、人々の意識は、現実に…

金剛寺坂を歩いてみると(永井荷風「伝通院」)

春日通の竹早高校の向かい側の細道を下った。このあたりでは有名な安藤坂に概ね平行した道である。 散策の時に、飯田橋の方へ向かうときに抜ける細い道で、金剛寺坂という名で呼ばれている。 坂を下り始めると、唐突に「金剛寺坂の笛熊」という言葉が頭に浮…

種を蒔く人(水上勉「櫻守」)

朝起きたら、まず、アランの幸福論の一章を読むことにしている。 第89章の「幸福は徳である」。 アランの幸福論の核心は、幸福になるのは、その人間自身の責任であるだ。 他人を幸福にしようなどということに、徒に、時間を使う愚を諫めている。曰く、他人に…

不幸な連中からは逃げるが勝ち!(アラン 「幸福論」)

そこそこ、長く、生きていると、良き哲学というものは実は、良い処世訓であることがわかってくる。 しかも、この良き哲学の世界と自然科学では、「進歩」というものに対する姿勢がかなり違っているようなのだ。 僕も、世界も、この進歩というものを自明なも…

定点観測としての天声人語

「天声人語と村上春樹はどこか似ている」と、出版者の旧友が言った。リベラルさ?と質問すると、彼は、しばらく考えてから、ほんの少し笑って、 「読んでいると、いつのまにか、同じようなスタイルで文章を書いてしまう」。 だとすれば、天声人語は、向田邦…

荷風はラジオが嫌い (永井荷風「鐘の声」、吉見俊哉「声の資本主義」)

ひどい不眠症に悩まされたことがある。健やかな労働というにはほど遠い、頭ばかりが空走る仕事についていた時分のことだ。文字通り、寝る間も惜しんで、頭ばかり使ったせいで、精神のスイッチが壊れてしまったのである。 当時、随分、不眠症の傾向と対策のよ…

フランス有権者はピンを見つけただろうか;   フランス大統領選

外国人の知り合いが多いとは言えない。 だから、一般論という形で表明されることが多い、特定の外国人に対する個人的意見などというものは、おおむね、数少ない自分の知り合いとの限られた経験に左右されることになる。 少々手が込んでる場合でも、その国の…

渡来人の作った日本文化(沖浦和光 「陰陽師とはなにか;非差別の原像を探る」)

日本的芸術の極致のように語られるのが能だ。 その創始者は、風姿花伝で知られる、世阿弥。 世阿弥の実名は元清で、自ら秦氏と称した。 秦氏は、古代の日本文化、文明に甚大な影響を及ぼした。古代の渡来系氏族の中でも、最大の集団だったという。 その一族…

朝日に匂うやまざくら花 (水上勉 「櫻守」、勝木俊雄「桜」)

今年の東京の初春は、桜にとっては、多少、気の毒だったかもしれない。 桜からすれば、いつものように、三寒四温の、気まぐれな、春など、慣れっこかもしれない。気の毒だったのは、花の下で一献傾けたい花見客だけとも言えないことはない。 しかしどうして…

ユーミンが荒井由実だった時代(柳澤健 1974年のサマークリスマス)

2017年4月20日(木) 21℃ 晴れのちくもり ¥/$108.874 心に長く残る歌というものがある。 人生の時々に、何度も、聞き返しても、はじめて聴いた日の感情が、まるで、アルプスの氷河の中に凍結されたように、その日のままに保存されている歌。 そんな歌は、…

エリザベス・ウォーレン 戦い続ける理由 (Paul Krugman Elizabeth Warren Lays Out the Reasons Democrats Should Keep Fighting)

2017年4月19日(水)26℃ 晴れ時々くもり 108.431¥/$ 安倍一強政治の問題点が取りざたされる。しかし感情的に反発するだけでは何も変わらない。民進党の迷走や、国際関係における「危機」が一強状態を強化している。 現政権のすべてを全否定する必要はない…

さよなら英語 (内田樹の研究室 役に立つ学問)

2017年4月18日(火)28℃ 雨のち晴 109.036¥/$ ウェブに溢れる英語のコンテンツの中で、日本語で理解しておくべきことは何かを探すということは、僕の毎朝のルーティンだ。 インターネットが普通の人間の手に届くようになったのが95年ぐらいからだとすれば…

商人たちの共和国の現在を憂う (黒田美代子 商人たちの共和国、青山弘之 シリア情勢、)

2017(平成29)年4月17日(月)25℃ 晴れのち雨 108.325¥/$中東研究者の故黒田美代子さんは、「商人たちの共和国:世界最古のスーク、アレッポ」(藤原書店)という、内容ばかりでなく、その装丁すら中東世界の優美さを漂わせる傑作を私たちに遺してくれた…

スティーブ・バノンは長期戦を戦う (Ryan Lizza;STEVE BANNON’S NATIONALIST TEAM PREPARES FOR THE LONG GAME)

2017年4月15日(土)23℃ 晴れのち曇り 108.627¥/$ マスコミというのは、良い意味でも、悪い意味でも、振り子のようなところがある。一方に強く振れると、必ず、逆方向への力が働くということだ。そもそも世間が一方に振れた時に、それとは違ったことを言う…

トランプがバノンを必要とする理由 (Edward Luce, Why Donald Trump still needs Stephen Bannon)

2017年4月14日(金) 21℃ 晴れのち曇 109.154¥/$ ドナルド・トランプが大統領の役割を果たす中で、既存の政治の仕組みに取り込まれるであろうということは、それなりに世の中が想定したことである。 しかし昨今の、トランプ大統領の既存勢力の取り込まれた…

東芝上場廃止問題で問われているのは何か    (東証の頭痛)

2017年4月13日(木) 17℃ 晴れ時々曇り108.935¥/$ 東芝が債務超過の瀬戸際で揺れている。 東京証券取引所は、この巨大企業の株式の上場廃止を巡って頭を悩ませている。 日々の新聞を読んでると、やけに複雑に見えるが、問題の根本はいたってシンプルである…

スティーブ・ケース『サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る』

2017年4月12日(水)19℃ 晴れのちくもり 109.661¥/$ 「恰(あたか)も一身にして二生を経るが如く、 一人にして両身あるが如し」 福沢諭吉の言葉らしい。出典は文明論之概略らしいが、確かめたわけではない。 一身二生。 江戸と明治。戦前と戦後。価値観の…

シェリフの帰還(Gideon Rachman;How the Washington blob swallowed Donald Trump)

2017年4月11日(火)10℃ 雨時々くもり 110.708 ¥/$ ドナルド・トランプが、とうとう従来路線を踏襲しはじめたのではという「期待感」が世の中で高まっている。 従来路線を支配してきた外交・安全保障分野の既存勢力、エスタブリッシュメントには手放しで、…

グッドバイMrバノン!...?:ニューヨーカー(John Cassidy;STEVE BANNON IS LOSING TO THE GLOBALISTS)

2017年4月10日(月)17℃ 雨のち曇り 111.264 ¥/$ トランプが現実政治の大渦の中に呑み込まれるにつれて、トランプ大統領を実現するのに最大の功のあったスティーブ・バノンとその仲間たちの影響力が急落しているようだ。 その象徴が、国家安全保障会議(Nat…

ジャーナリズム、その可能性の中心(後藤正治 「天人 深代惇郎と新聞の時代」)

2017年4月7日(金)21℃ 雨のち曇り 110.520¥/$ 妻が心底驚いたという、私の父親の言葉がある。 私の母に対して言った、「産んでくれてありがとう」。 これは、企業人として私が成功したとか、その類の晴れがましい時ではなかったから尚更だったらしい。筋…

人生の熟成(開高健 「ロマネコンティ・一九三五年」)

2017年4月5日(水)20℃ 晴 110.788 ¥/$ 最近は、平均的日本人と同じくらいには、食事の時に、ワインを飲む回数が増えたかもしれない。 数十年前、バブルが弾けた直後というか、関西の大地震とカルト教団の東京でのテロが決定的に日本を変質させた頃に、長…

築地本願寺で往生ということについて考えた

2017年4月4日(火)晴 17℃ 110.698¥/$ また古いノートを眺めていた。 2011年3月6日というから、その後、僕たちの生活を一変させてしまうことになる大地震の5日前の日曜日に、僕は、神保町の東京堂書店の平積みから一冊の本を手に取った。 きれいな装丁の…

故郷喪失者たち(柳美里 「JR上野駅公園口」)

2017年4月3日(月)15℃ 晴れ時々曇り 111.378 ¥/$ 上野駅から長い夜行に乗って田舎に帰るという経験は自分にはない。良くも悪くも飛行機の時代になっていたからだ。ただ故郷が北国の人間ならではの、ノスタルジーのようなものがあるのは認める。ラジオで、…

哲学館事件と道徳教科書検定問題(松本清張「小説東京帝国大学」)

2017年3月31日(金)12℃ くもり時々雨 111.773 ¥/$ 明治35年というから115年近く前、今の東洋大学の前身である私学の哲学館と文部省を巡る、ある事件が起こった。 10月に行われた哲学館の卒業試験の倫理の設問である。 「動機善にして悪なる行為ありや」 当…

忖度の帝国 (Unspoken word behind a string of Japanese scandals)

2017年3月30日(木)18℃ くもり後晴れ 111.099 ¥/$ フィナンシャルタイムスは、上役の意向を先回りして想定して、それに沿った行動をするという意味の忖度という言葉が、奇妙な形で、日本の政財界、メディアを覆っているというコラムを載せている。Leo Lew…

思想は事物の中にしかない(春日武彦 幸福論)

2017年3月29日(水)15℃ くもり時々晴 111.175 ¥/$ 「あまり先のことは知りたがらず、足下のことだけを考える方がよい。」(アラン) 古いノート(僕の場合はブログ)を眺めていたら、10年近く前に読んだ、精神科医の春日武彦さんの「幸福論」(講談社現代…

投資家が見た明治国家(三谷太一郎 「日本の近代とは何であったか」)

三谷太一郎さんの「日本の近代とは何であったか」。 trailblazing.hatenablog.com この本については、まだまだ書きたいことがある。 特に、資金調達という、個人的に土地勘のある分野を扱った、第二章 なぜ日本に資本主義が形成されたのかがとりわけ興味深い…

三谷太一郎 日本の近代とは何であったか

2017年3月27日(月)12℃ 雨時々曇 110.54 ¥/$ 書店で手に取り、一ページ目を開いた途端、これは自分に語りかけている本だと思う経験が稀にある。 神保町の東京堂書店で、何の気なしに、手に取った、日本政治外交史の三谷太一郎さんが岩波新書で出版された…

森友学園スキャンダルとは何か(国会証人喚問)

2017年3月24日(金)10℃ 曇り時々晴 111.138 ¥/$ トランプ大統領の政策の実行可能性への、当然の疑念が市場を覆いはじめ、株安、ドル安の状況が生じ始めた。ロンドンでは国会議事堂でのテロがイギリス中に衝撃を与えている。 ワールドカップ予選では、日本…