読みたい記事は数あれど(トランプのアメリカ)
2017年2月4日(土)13℃ 晴
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日本の新聞2紙、アメリカの新聞3紙、イギリスの新聞1紙、雑誌1冊、アメリカの金融情報サービス1社を毎朝眺めるのが日課である。これはデジタル化の恩恵であると、同時に呪いだ。
当然ながら、流し読むだけでも一仕事で、それをそれなりのカテゴリーで整理し、さらにその中から、読みたいものを選び出すだけで軽く1時間以上はかかってしまう。
そうやって選び出した記事のすべてが読めるわけでもない。その意味で、「読みたい記事」の在庫は常に積みあがっている。
記録として整理したものには、今読まずとも一定の価値はあるが、今日の、自分が「読みたい」と思った記事には当然賞味期限があり、それは鮮魚同様かなり足が速い。
さらに、こういった情報分析だけをして暮らしているわけではないのだから、目の前の鮮魚のどれを料理するか、そして食べるかとなると、さらに厳選が必要になってくる。
その意味では100を流し読みして10を選び出し、その10の中から1を選ぶような歩留まりになってしまう。
ほとんどの在庫は数日の後に、賞味期限切れで、私の好奇心をいう食棚から捨てられることになってしまう。
試しに今日はどうか。
マティス国防長官が来日していることもあって、やはり、トランプ政権のこの2週間の外交政策が示すものとか、今後の日米関係の方向性に影響を与えそうな米国側の内在的論理を探し出したいという問題意識が強い。
そんな感じで、日本の新聞以外の中で、とりあえず、魚籠に放り込んだのが以下の記事だ。
マティスのアジア訪問についての報道。
フィナンシャルタイムス
https://www.ft.com/content/a220e68e-e900-11e6-893c-082c54a7f539
Defence secretary says use of nuclear weapons would be met with ‘overwhelming’ force
ニューヨークタイムス
Jim Mattis, in South Korea, Tries to Reassure an Ally
https://www.nytimes.com/2017/02/02/world/asia/james-mattis-us-korea-thaad.html?ref=todayspaper
今日、稲田防衛長官との対談があり、共同声明のようなものも出されるのだから、本格的な分析は明日以降なのだろう。
上記の速報記事よりは、少し深堀りをしている、ニューヨークタイムスの記事がある。トランプのここ2週間の外交活動に対して政治アナリストたちは首を傾げている。果たしてこれは単純に素人政治の無能さを露呈しているのか、それとも、全く新しい危険な外交ビジョンが展開する第一歩なのか。ニューヨークパブリックライブラリーの国際戦略研究所のシニアフェローのJonathan Stevensonという人はおそらくそのどちらの要素も含まれているのだろうと見立てている。
Is Trump’s Foreign Policy Inept, or Radical? It’s Both
さらにアトランチックドットコムには、トランプ政権のこの2週間は、ある意味想定の範囲だった。しかしトランプの語る偉大なアメリカとは、本来とは異なるものだ。トランプとそのスタッフたちは、アメリカ国民とアメリカの諸制度の強靭さを甘く見ている。しかし本当の意味で、アメリカを偉大にするのは、トランプの弄ぶ空言ではなくて、それを牽制し最後には圧倒するであろう、アメリカの国民と諸制度の力に存するのであるというきわめて正論的なコラムが掲載されている。
あと気になるのは、カリフォルニア大学バークレー校でのAlt-Right派の評論家であるMilo Yiannopoulosに反対した抗議運動の一部が暴徒化したと伝えられるニュースに関するニューヨークタイムスの記事も気になるところだ。
バノン氏と圏域に存在するこういった極右の言論に対する反発の大きさとその行方は、彼らの発言自体に触れて、その意味を確認していかなければならないところだと思う。
A Free Speech Battle at the Birthplace of a Movement at Berkeley
最高裁の構成を保守に降り戻したトランプ氏によるGorsuch(ゴーサッチと発音されている)判事の議会承認の動きも、アメリカの政治イデオロギーの方向性を予測する上でもとても重要なスレッドになってくるだろう。
Supreme Court Fight Is More About Trump Than Gorsuch
ちょっと毛色は変わってくるのだが、米国の雇用の行方を占ううえでも、ウォールストリートジャーナルの雇用の終わりというタイトルは気になるところだ。
もっと気になるのは、ニューヨークタイムスの、トランプが政教分離を命じたジョンソン修正条項の撤廃すると誓ったという記事。今週のエコノミストのカバーストーリーではないが、トランプはあたりかまわず手榴弾を投げまくっている。その頻度は留まることを知らない。また新しい爆弾を放り投げたわけだ。具体的には、宗教組織が政治的発言をするとその免税措置が取り消されるという内容の規定を撤廃しようとしているらしい。宗教的保守派に対する色目なのだろうか。
Trump Vows to 'Destory' Law Banning Political Endorsements by Churches
そんな中に、トランプ時代におけるクリントン財団の自分探しというコラムがちょっと切なげである。一つの王朝の没落が起こっているのだろうか。それとも、その復活の可能性は。
Soul-Searching at Clinton Foundation in Trump Era
https://www.nytimes.com/2017/02/02/us/hillary-bill-clinton-foundation.html?ref=todayspaper
完全に毛色は違うが、日本の推理作家の横山秀夫のことを取り上げた書評欄の記事がある。英訳された64についての紹介も兼ねているらしい。
Japanese Crime Thriller in Which Crime Is the Least of It
https://www.nytimes.com/2017/02/02/books/japanese-crime-thriller-six-four.html?ref=todayspaper
これで100分の10である。まるで小学生の頃の夏休みの前に、克明な生活の計画を立てた時のような疲れを感じる。ただただ計画を立てることでこと切れてしまうという過去だけは繰り返したくないものだ。