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マーク・アンドリーセン FTインタビュー

2015年1月18日
東京に住み始めて長くなってきた。この街の好きなところはたくさんあるが、その中でも、この街の冬が好きである。乾燥しているということを我慢すれば、6割方晴天が続くからだ。北国の高校で地理で学んだ太平洋岸気候の特徴だ。高校の頃、抽象的な言葉だった冬は晴れが続くが、生活の実感になった。

行きつけのスタバで、フィナンシャルタイムスの記事を読む。

週末楽しみにしているLunch with the FTだ。注目の人と、注目のレストランがハイライトされる。

今週は、世界最初のインターネットブラウザMosaicを作り、インターネット経済を創り出したNetscapeIPOに関わり、その後も、フェイスブックツイッター、スカイプ、
AirBnBの起業に関わり、今は、アンドリーセンホロビッツというベンチャーキャピタルを起こして、インターネット分野で最大の投資家となっている。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/a0137c36-9659-11e4-922f-00144feabdc0.html?siteedition=intl#axzz3P7oae7kB

出身家庭は、ウィスコンシン州の農家。

“If you don’t plant the fields on time or get the fertilizer out, you have a real problem. You can’ talk yourself out of it—there goes your farm. People are incredibly practical, hard-working. Deferral of gratification is a huge thing. Calvinism runs very deep. It sets you up pretty well for engineering.”

カルビン主義的勤勉さが、彼を成功させたエンジニアリングにもつながるものがあるという発言になるほどなと思う。

自分が幸せだったのは、1970年代に生まれたことと彼は言う。アップルIIが登場した時、彼は6歳だった。パーソナルコンピューターの普及という前提条件を作り上げたゲイツ、ジョブスなどと同世代の僕らにとっては、歳の離れた弟たちの世代がインターネットが拡大するための道具立てを作り上げ、その道具立ての上で、僕たちの子供の世代が新しいUI,UXの実験をしているという構図だ。

彼の行ったイリノイ大学も当時希少だったスーパーコンピューターが置かれた特権的な場所だったということも、もう一つの幸運。

家庭生活はいたって非社交的のようで、家でテレビばかり見ている。

テクノロジーの社会貢献を素朴に信仰しているのも、ウィスコンシンの農家出身という出自のなせる業のようだ。テクノロジーがもたらす生産性向上が、労働人口の減っていく未来にとっては不可欠だという信念がある。

“If we don’t get it quite quickly, we will not be able to afford things like social security, Medicare. We need far higher productivity for the shrinking percentage of people who are going to be working.”

インタビューの中で特徴的なのは、ニューヨークタイムス、ニューヨーカー、ハーバード大学に代表される東海岸に対する反抗心である。リベラル的メディアのテクノロジーのもたらす負の側面に対しては、否定的だ。彼らは、テクノロジーに対する脅威を抱いているから、こういった言説はむしろ自己防衛ととらえるべきと切り捨てる。

このインタビューこの後も、上場企業に与えられる過剰規制に対する批判、そのコインの裏側としての、テクノロジー企業によるプライベートファイナンスの隆盛と話は続いていくが、今の僕に一番関心があったのは、ビットコインに対するこんな発言だった。

「CryptocurrencyはインターネットがコンテンツサービスやEコマースに与えたものと同じ影響を金融サービスにもたらすだろう。」

決済という閉じられた世界の話ではなく、P2PインフラとしてのBitcoinという構図には、文明変化に繋がるようなワクワク感があるなあ。