21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

インターネットが外国語学習を革命的に変化させている

インターネット分野の経験が長い友人から面白い話を聴いた。ある米国人が、韓国に仕事でしばらく滞在していた。その時に感じたのが、韓国のインターネット活用度の深さと、英語学習熱の異様な高さだった。シリコンバレーを本拠にしている彼は、帰国後、中西部の田舎に帰郷した。地元で働いている旧友たちと、久しぶりに会ったりする中で、もう一つの発見があった。英語教育の資格を持っている多くの友人が、不況のあおりを食って失業中だということだった。この二つの事実が、その米国人の頭のなかでパチンと繋がった。

そこはシリコンバレーの人だ、この機会をどうやったら起業に結び付けられるだろうか。

今、韓国と米国の中西部がインターネットで繋がっている。そして、リアルタイムでの英語学習が大拡大しているらしい。

米国のコールセンターをインドにアウトソースするばかりではなく、日本を旅するアメリカ人ではなく、米国で生活している本当の英語教師のコースが受けられるという、まさに逆のアウトソーシングだ。

技術があたりまえになると、今度は、時間と場所というものがどんどん相対化されていく。

ニューヨークタイムスで、Peter Waynerという記者がインターネットがどんどん外国語学習を変えていっていることを取材している。

http://www.nytimes.com/2010/07/29/technology/personaltech/29basics.html?_r=1&ref=technology&pagewanted=print

スケートボードが大好きなチュニジア人の14歳の少年からのメッセージはぶっきらぼうなものだった。「全然違うよ」と私のフランス語を一言で片付けてしまった。動詞活用も間違いだらけだし、スペルも練習しなければ駄目。5段階評価だと私のフランス語は1らしい。それだけ冷たく言い残すと、彼はインターネットの匿名性の中に消えていった。

古いロシアの格言「敵はイエスと答え、味方がノーという」に何らかの真実があるかどうかを知りたければインターネット上でメッセージを交換し、それぞれのメッセージを添削することで言語学習者の手助けをするためのウェブサイトLivemocha.com上で友達を作ってみればいい。

チュニジア人少年が示してくれたように、インターネットは、比類のないパワーで、世界中の人々を繋ぐことで、これまで人々が外国語を学んできた方法に革命的変化を与えている。学習用の教科書、テープ、CDなどがどんどんEメール、ビデオチャットソーシャルネットワークに代替されはじめている。

シアトルにあるLivemochaという会社は、ソーシャルネットワークと38ヶ国語を学ぶコースを組み合わせるビジネスを開始した。既にベンチャーキャピタルはこの会社に1400万ドルの資本を投資している。

最初のレッスンは無料だ。ただ追加的なサービスを受けるためには手数料が必要で、誰かに自分の文章を添削してもらったりするには、一定の契約を結ぶ必要もある。これはチュニジアの少年が私のフランス語作文にしてくれたことだ。教材である、フラッシュカード、クイズ、音声教材、テキスト、音声化されたエッセイなどはすべてウェブブラウザ経由で配信されている。この会社のCEOは、同社のサイトの優れた点は、実際の人間相手に外国語を勉強できることだと主張する。

「何年も教室に通ってスペイン語を学んでも、バーに一人で行って、会話する度胸などつかないのが外国語学習の皮肉な現実だ。」とCEOは続ける。

現実の人々とのカジュアルな交際は、楽しいだけとは言えないし、驚かされることも多い。でもこのやり方を通じて、その言葉が現実にはどのように利用されているかがわかるのだ。チュニジアの少年は、私の動詞活用を厳しく添削する一方で、教科書では決して学ぶことができないスラングや、ある種のスタイルのようなものを教えてくれた。

従来のやり方でフランス語を学ぶ場合には、こんな多様な対話などは不可能だ。このウェブサイトで、私は、ブラジル出身でフランス語を話す中年女性から、親切な添削指導を受けているし、南仏出身の女性は、私の作文の添削に青色マーカを使うというようなパーソナルなタッチが感じられる。

「本当に外国語を使う能力を上げるためには、実際の人間との交流に勝るものはない。私の母親はアメリカに来る前に、英国文学を大方読み終えていたが、到着当初はレストランでコーヒーの注文すらできなかった。」

Livemochaはフェイスブックにあるソーシャルゲームに似た、さまざまな方法でやるきを出させるための実験を行っている。例えば、フラッシュカードのエクササイズには点数がつけられ、学んだり、教えたりすることで獲得されたスコアもウェブページ上に掲載される。私は、初日に銅メダルをもらった。理由は、英語を学びたい人のために、添削指導などを活発に行ったからである。貢献度が高く、メンバーからの満足度が高い人には、外国語学習に本当に真剣に取り組んでいるメンバーに対して、よりしっかりとした教育サービスの提供を行うことをサポートするまでになっている。

すべてのサービスがきっちり出来上がっているわけではない。MyLanguageExchange.comはただ特定の言語を話し、他の言語を覚えたい人のリストを掲載しているだけだ。年間24ドルを支払ってゴールドメンバーになると、他のメンバーにEメールを送信することができるようになる。

メンバーごとに自分のプロフィールすなわち、年齢、居住地、どんな話題を話したいかについて簡単な説明を書き込む。英語のネイティブであるというプロフィールを書き込んだせいで、英語学習への需要がとても大きいことがわかった。このウェブサイトを通じて、多くの文通仲間ができた。

40歳のフランス人女性はスペイン生まれで、現在フランスのボルドーの近くに住んでいる。彼女は英語がうまくなりたいと思っている。そしてその後は、輸出販売業で職を探そうと計画している。引退したパリっ子は、系図学を勉強しており、英語、スペイン語、スウェーデン語の能力を上げたいと思っている。

MyLanguageExchange.com曰く、このサイトには150万のメンバーがいて115の言語を学習している。

私は、事実上、この3行広告のような仕組みを通じて適切なパートナーを発見している。もし私がルクセンブルグ語(ルクセンブルグ的なドイツ語)を学びたいとしよう。このサイトを通じて、この言葉が話される11人のメンバーが英語を話したがっていることがわかる。南アフリカボツワナ中心で放されているバンツ族の言語であるツワナ語が流暢で英語に意欲をもやしている人は32名。実際、Eメールを1通か2通送れば、学習パートナーがすぐに見つかる。

このサイトは、学習に真剣な人をよりひきつける傾向がある。言語を共に学ぶパートナーとしては最適な人たちなので、この属性から、コミュニティはさらに多くの学習希望者をひきつけているという。
他にも限定的だが、便利なサイトは存在する。自分の気に入ったテキストを選んで投稿すると、それを読み上げた録音を別の人が投稿してくれるサービスもある。RhinoSpike.comがこのサービスを提供している。

その文章は実際にはどのように読まれるのかを、聴くことができないというのが、外国語を学ぶ際の共通の問題だ。ネイティブスピーカーがそのテキストをどう読むかがわかるようにすることで、この問題を解決しようとしているという。同サイトは3月に開設されたばかりだが、既に2500件の録音が投稿されている。

国語学習市場では多くのウェブサイトが激しい競争を繰り広げている。(Rosettastone.com, GermanPod101.com, ChinesePod.com)

携帯電話を使った、より安価で気軽な学習インフラも存在する。

UsingEnglish.com、englishcafe.com, Englishbaby.comなどのように英語学習に写真の共有や出会いサービスのような機能も付け加えるプレイヤーも現れてきている。

こういったサービスによって得られる会話の深さや質は当然まちまちだ。とはいえ、バーや店舗や公共の場で、外国人と会話をすることから比べると、はるかに楽だし、安上がりだ。

インターネットを経由した、実際の外国人との交流によって、人々は、安価で、自由度の高い、外国語学習環境を獲得しているのだ。(以上)