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ニコラス・クリストフの「グーグル対中国」(NYT)

ニューヨークタイムスの記者で、北京、東京駐在経験の長い、Nicholas D. KristofがニューヨークタイムスにGoogle Takes a Stand(グーグル中国に物申す)という熱いコラムを載せている。

http://www.nytimes.com/2010/01/14/opinion/14kristof.html?ref=global

短期的には共産党の勝利になるかも知れないが、若い世代は、こういった不正の継続を決して許さない。とすれば、長期的にはグーグル、あるいはグーグル的なものの勝利に自分は賭けるという内容。

By announcing that it no longer plans to censor search results in China, even if that means it must withdraw from the country, Google is showing spine—a kind that few other companies or governments have shown toward Beijing.

事業の撤退になったとしても、今後、中国での検索結果の検閲を行うつもりはないことを宣言することによって、グーグルは、気骨を示した。これは外国企業や政府がめったに北京に対して示したことのないものだった。)

グーグルの意見表明のあと、若い中国人が、グーグルの北京オフィスを花束を抱えて訪ね、敬意を表したという。

政府は検閲に関する議論を抑圧しようとしたが中国のツイッターユーザーたちがうまく検閲の網をかいくぐって、グーグルを賞賛している。

広東からのツイート。

It’s not Google that’s withdrawing from China, it’s China that’s withdrawing from the world.”

(グーグルが中国から撤退するのではなく、中国から世界から撤退している)

どうせ、百度に大差をつけられて、中国ビジネスはうまくいきっこないのだから、ブランド強化のための大芝居だというシニカルな意見もある。

ただ、動機が何であれ、北京政府に屈して、四人の反体制運動家の逮捕の手助けをしたヤフーよりははるかにましだとKristofは容赦ない。

このグーグルの声明は中国の反体制運動家のGメールアドレスを奪おうとする中国発のグーグルシステムに対するサイバー攻撃のあとに発表された。

このニュースには二つの意味がある。

第一には、中国が既にサイバー戦争を全力で開始しているということだ。その方がはるかに安くつくからという理由。ミサイルではなく、サイバー攻撃による電力線の遮断、通信網の破壊、ダムの水門の開放等。(ASHまるでダイハード4.0だ。)

可能性の話ではなく、中国政府は既に実行している。

証拠はあがっていないが、西側の諜報網は、グローバルに生じている西側政府機関向けの中国発のサイバー攻撃の黒幕は中国政府だと考えている。

二つ目の意味。中国はオープンさと経済的効率性のバランスを変えようとしている。開放政策のアーキテクトだった訒小平は、奇跡の経済成長のために、歯を食いしばって、コピー機、ファックス、携帯電話、コンピュータ、弁護士などを受け入れた。理由は、それが近代化の一部だったからだ。

ところがここ数年、胡錦濤主席は、インターネットの自由、独立の弁護士やジャーナリストを弾圧している。胡主席は、頭はいいんだろうが、20年後の中国についてのビジョンは持ち合わせていないようだ。彼は、1978年に権利剥奪された華国鋒以降で最弱のリーダーだ。

その代わりに、中国のネチズンたちが自分の国に対するビジョンとリーダーシップを持ち合わせている。彼らは、多くの外国人のような下手なおべっか使い(lame sycophancy)はしない。若いネチズンたちは、そのツイッターの写真アルバムの中で、最近懲役10年の刑を受けた、中国の作家Liu Xiaobaoへの連帯を示すための黄色のリボンをつけるのを躊躇わない。なんて根性だ。

中国のネチズンたちは、VPNとアメリカにあるFreegateのようなプロクシーサーバを使って、中国のセキュリティウォール(the Great Firewall of China)を軽々と超えてくる。(米国は、中国とイランの検閲をぶち壊し、自由な情報流通を促進する手段として、サーバー容量の増強によって彼らの努力を支援すべきだ。)

若い中国人たちは極めて才能にあふれている。

1990年代に中国に住んでいたときに、初期のコンピュータウィルスによってスクリーン上に「李鵬首相は好きですか?」が現れた。李鵬は当時皆から嫌われていた強硬派の首相だった。この質問に嫌いですと答えると、ウィルスは消えるが、李鵬を支持すると答えると、このウィルスはコンピュータのハードドライブを消去しようとするのだった。

Eventually, I think a combination of technology, education and information will end the present stasis in China. In a conflict between the Communist Party and Google, the party will win in the short run. But in the long run, I’d put my money on Google.

(最終的には、テクノロジー、教育、情報の組み合わせが中国の現在の停滞を終わらせるだろう。共産党とグーグルの対立において、短期的には党が勝利を収めるだろう。しかし長期的には、私はグーグルの勝利の方に賭ける。)

というのが、Kristofの熱いエールだった。

短期的、長期的に何が起こるかは別として、世界第2位の中国が民主主義国ではないということをもういちど良く確認する必要はある。

人権というものに対する「アジア的特性」というものは、他人事ではない。自分の国も含めて、しっかりと考えて置かなければならないことだと思った。