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巨大データセンターの裏側 その4

世界中のデータセンターは今、年間スウェーデン1国より多くのエネルギーを消費している。そして必要エネルギー量は、いまも成長し続けていると、ローレンス・バークレー全米研究所の科学者であるJonathan Koomeyは言う。2000年から2005年まで、データセンターによる電力使用合計は2倍になった。彼の計算では、クラウドは世界の電力の1から2%を消費している。

この理由は、単純で、サーバ数とインターネットが成長しているからだ。

グーグルの検索が環境なんの影響も与えないとはいえないだろう。グーグルによれば、1検索ごとにCO2の0.2グラムにあたることになる。しかし、グーグルの検索を使わず、図書館まで車で行くとなると、グーグルの検索の4500倍のエネルギーを消費し、図書館で調べると、新聞の1ページは、検索の350倍のエネルギーに相当するという考え方も成立するのだ。

データセンターが環境問題の主犯とは言えないかもしれないが、いずれにせよデータセンターがきわめて非効率性なことは事実だ。その中には、システムの中で配信される過程における電力の損失が含まれている。また歴史的に、サーバを稼働させるのと同じぐらいのワット量がサーバを冷却するのにも必要なのである。多くのサーバは単に昏睡状態にある。サーバの10から30%は、何もしていないのである。Koomey曰く、「どこかの部門の誰かが特有の作業を一度行うためにサーバを用い、その後使用を停止したのである。」

最大の問題は、稼働率が低く、電源がオンになっているサーバの10から30%が活用されていない。にもかかわらず、サーバの電源をONにしておくだけで、電力が消費され、さらに、それと同じくらいの電力がサーバの冷却に使われているのだ。誰かが過去に一度行うためにサーバを使い、その後一切そのサーバを使っていないにもかかわらず、電力だけは常に消費しつづけているのだ。ネットワークアーキテクチャーが複雑なので、一台のサーバの役割が明らかではなかったり、存在すら忘れ去られている場合も多いので、稼働していないサーバのスイッチを切って何か問題がおこるよりはそのままにしておこうということになるのだ。

サーバがより強力になると、それを稼働させ、冷却するにはより多くの電力が必要になる。データセンターの面積は、サーバではなく、電力によって埋め尽くされるのである。データセンターが前例のなき規模に拡大するにつれて(グーグルは最近、そのデータセンターの1つは4万5000台以上のサーバを収容しているーこれほど多くのサーバを持つ企業は一握りだが、と報じた)関心はサーバをよりエネルギー集約的でなくするという方向へシフトしはじめた。

サーバが強力になればなるほど、稼働させるための必要電力も冷却用の必要電力も増大する。データセンタースペースは、サーバというよりは、電力供給装置によって埋めつくされることになる。データセンターが前例のない規模に巨大化するなかで、(グーグルのデータセンターの一つは4万5000台以上のサーバが収容されていると最近報じられた。)サーバの省エネ化という動きへのシフトが起こっている。

サーバの省エネ化や、データセンター内の空気の流れの改善などを組み合わせて、データセンターの省電力化が検討されている。さらに、データセンター内の過剰冷房の問題の解決も模索されている。

いずれにせよ、データセンターの将来においては、スペースの問題よりも電力問題の方が大きく立ちはだかることになるだろう。

電力の世界にはムーアの法則がなく、サーバが強力になるスピードにエネルギー供給はついていけないのである。

Uptime InstituteのBrillは、ローエンドサーバの必要電力は、4年でサーバ自体のコストを上回るようになると予測している。コンピュータよりも電力コストの方がはるかに割高になる時代が到来したのである。巨大データセンター、すなわちクラウドの立地が電力料金が低い地域に移動しているのはこの理由からなのである。

必要電力の巨大化は、データセンター自身の構成要素における技術革新に拍車をかけてきた。そのイノベーションはコンテナ型という、データセンターの工業製品化(industrialization)とでもいうような状態にまで進化している。マイクロソフトがシカゴのデータセンターの建物の半分に、サーバを詰め込んだ輸送用コンテナを装備した。

コンテナを利用した理由は、同じスペースでも、標準的なラックマウント環境に比べれば、コンテナ型だと10倍のサーバを収容することができるからである。これはコンテナ型がラックマウント間期用では実現不能な電力密度を提供できるからだ。

コンテナには、前もってラックいっぱいのサーバが装備されており、事実上、データセンターのある場所に持ってきた瞬間からのプラグ&プレイが可能である。機器メーカーの工場から出荷したままで、データセンターの中枢部分に接続させることができるのだ。

データセンターは今後、ひとつの大きな機器のようになり、どんどん自動化されていくことになる。そして、データセンターの外壁は、なかにいる人間ではなく、機械を保護するために存在することになるのだ。

建物自身や外壁、冷房機器も次第に取り除こうとする動きが出てくることも容易に想像可能だ。マイクロソフトがダブリンで計画している第4世代データセンター計画にはこういった考えが含まれている。この建物の一部は、天井も壁もなく、いくつかのコンテナが他のモジュール機器の中に、設置されることになる。このデータセンターでは、外気が冷房に用いられる。マイクロソフトを辞め、大手データセンターREITのDigital Realty Trustに参加したManosが見学ツアーの最中にぼくにいったこんな言葉が耳に残っている。

「我々は情報ユティリティ時代の始まりにいる。データセンターは将来、情報を生み出す変電所のようなものになっていくだろう。(以上)