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バノンの十字軍的理想(ガーディアン)

2017年2月1日(水)晴れ時々曇、11℃

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No-dramaのオバマからAll-traumaへのトランプへの移行は素早かったとガーディアンが書いている。うまいことをいうものだ。

 

www.theguardian.com

 

アメリカの風景はとにかく激変(Upheaval)した。経験のない不動産屋が、世界でもっとも強力な権力を持ち、最も果たすのが困難な業務についてしまったのだから当然だと割り切ることはできないようだ。

 

アメリカ、世界にとって、今回の激変の持つ危険性は、それにとどまらないとガーディアンは言う。この危険性を体現するのがスティーブ・バノンであるというのが今回のコラムの結論だ。

 

今回の入国禁止の大統領令が引き起こした混乱は、未経験による失敗ではなく、確信犯的だったというのがその見立てである。

 

今回の入国禁止の草稿を書いたのも発表の仕方を仕切ったのはスティーブ・バノンだった。トランプのChief Political Strategistである。

 

(最近、何にでもChiefナントカとつけるCorporate Americaの軽薄なタイトル乱発を踏襲しているようで気に入らないのだが、実際、彼が、果たしている役割はお手軽どころじゃない。)

 

グリーンカードの保有者を除外するという提案を却下したのも、一切、国家安全保障省や国務省の専門家に相談しなかったのも、彼の考えだった。

 

バノンは世界を動揺させたかったのだろう。今回の騒動の結果、アメリカ第一主義というものの具体的姿が露呈した。Pugilism(プロボクシング)、parochialism(地方根性)、misplaced protectionism(間違った保護主義)

だ。

 

ブッシュ政権のKarl Roveを踏襲しているとみる向きもある。しかしRoveはどこまでいっても、プラグマティックな政治関係者だった。彼にとってイデオロギーは道具にすぎず、目的は共和党の政治的権力の維持と拡大だった。

 

バノンはこれとは全く違った生き物だ。初期のスピーチを聞くと、彼は無能で強欲なリーダーたちによって裏切られた腐敗した祖国を救済するために戦う十字軍なのである。彼は自分のことをかつてレーニン主義と表現した。その意図は今日のエスタブリッシュメントのすべての破壊だ。

 

今、アメリカは内部と外部からの脅威との闘争に晒されているのである。この戦いは今後何年も続くことになる。この戦いを遂行するには鉄の覚悟が必要だ。もし民主主義的自己統治の拠点である自由報道陣営がこのわかりやすくない真実を理解できないのならば、「口を閉じている」べきなのだと彼は言う。

 

バノンは大統領の下僕ではない。大統領こそ、彼にとっての道具なのだ。長年にわたってバノンはこの戦いを進めるうえでの適切な器を探し求めてきた。Sarah Palin, Rick Perryも素材として検討された。今や、ドナルド・トランプの中に不完全とは言え、適切な素材を発見したのだ。二人とも、仕事中毒である。二人とも保護主義的考え方を共有している。そして二人とも、戦闘的である。

 

しかもバノンは、大統領に比べて、簡単には、気が変わらない。彼は知的であり、明晰であり、自分のイデオロギーにフォーカスしており、この闘争に全身全霊を傾けている。

 

そして今、National Security Councilという国防の最も内側に、気まぐれな大統領によって送り込まれた。しかも、アメリカ統合参謀本部議長 (the chairman of the Joint Chiefs of Staff) やアメリカ合衆国国家情報朝刊(the director of national intelligence)よりも上位の立場を獲得した。

 

その正体はいまだに不明なのにも関わらず、巨大な権力を握った、バノンは、まさにアメリカでもっとも危険な男になったのだ。(以上)

 

鉄の意思を持つバノンが想定内とする今回の波紋は、そんなに彼の思い通りに収束していくのだろうか。ガーディアンが描くように、バノンが信念の人間だとするならば、我々は、途轍もない怪物に直面することになるのかもしれない。