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インプレサリオ ジョン・ブロックマンは日々何を読んでいるのか(Wiredインタビュー)

グーグルでジョン・ブロックマンを検索したらワイアードのインタビュー記事が見つかった。2011年2月3日付のWired UK版。 Duncan Graham-Rowe署名の記事。Edge.orgの記事や、「第三の文化」という彼のエッセイと重複するところは多かったが、この文化的大立者が日々どんな雑誌や新聞やウェブ記事を読んでいるのかということろは興味深かった。それがかなりの部分、ウェブで読めるということもある意味凄いことだなあとしみじみ思った。

タイトルは、『科学とアートのマッチメーカー、ジョン・ブロックマン

http://www.wired.co.uk/magazine/archive/2011/03/start/matchmaking-with-science-and-art

文化的大物(インプレサリオ)にして著作権代理人兼ソフトウェア代理人のジョン・ブロックマンは過去半世紀の間、芸術と科学を融合させて、「第三の文化」と彼が呼ぶ状況を作り出してきた。

1988年に、現在69歳のパナマ帽をいつもかぶっているニューヨーカーで、大物知識人であるスティーブン・ピンカーリチャード・ドーキンスの代理人でもあるブロックマンは、エッジ財団を創設した。

エッジは進化生物学から数学に至るさまざまな領域で傑出した思想家たちのオリジナルな著作を出版してきている。

ワイアードマガジンは、ブロックマンに、オンザエッジを生きることの意味をインタビューした。

W;エッジとは何か

それは対話だ。我々が誰であり、何であるかという概念を拡張してくれるような創造的な仕事をしている人々を常に探している。我々は文化の最先端での仕事や、普通の人々ならかんがえないような研究をする人々を励ましてきた。

W;「第三の文化」について説明して欲しい

1959年にCPスノーが「二つの文化」という本の中で、1930年代には文芸評論家を中心とする知識人が、自分たちのことだけを知識人と呼ぶようになっていたことに注目した。当時の新しい知識人という概念の中には、天文学者エドウィン・ハッブルや、数学者のジョン・フォン・ノイマン、物理学者のアルバート・アインシュタインニールス・ボーアなどのような科学者は除外されていただ。

この本の第二版では、スノーは、楽観的になっていてい、付け加えた新しい章の中で今後「第三の文化」が生まれて、文学系の知識人と科学者の間のコミュニケーションのギャップは埋まるだろうと予想していた。

私も、この「第三の文化」という言葉を、スノーから借りてはいるが、彼が言うような「第三の文化」が到来する考えているわけではない。

文学系の知識人は科学者と直接に対話するようにはならない。むしろ科学者が一般の人々と直接にコミュニケーションするようになるのである。こうすることで、科学者たちは、伝統的な知識人が果たしていた、我々が生きるということのより深い意味を可視的にし、我々が誰であり、何であるかを再定義する役割を受け継ぐことになるのだ。
W; 新しいライター、科学者、アーチストで今我々が注目すべきなのは誰か
一人は、心理学者のダニエル・カーネマンだ。彼は行動経済学の創設によってノーベル賞を受賞した。ジェフ・ベゾスラリー・ペイジセルゲイ・ブリン、Dean Kamen、ネーサン・メイエルホルド、Jimmy Wales, Salar Kamangarは皆エッジのセミナに彼の講義を聴きにきた。カーネマンは超有名とはいえないが、心理学分野におけるトップクラスの思想家である。

W:いつもどんなものを読んでいるのか

ニューヨークタイムス、ウォールストリートジャーナル。科学の分野では、ネーチャー、サイエンティフィックアメリカン、サイエンス、New Scientist, ディスカバー。総合雑誌では、エコノミスト、The New York Review of Books, ニューヨーカー、ワイアード、アトランティック、プロスペクト。これらはすべて印刷版を読んでいる。

オンラインで最初に読むのは、Arts & Letters Daily。そのほかにはガーディアン、インディペンデント、オブザーバー、デイリーテレグラフやドイツの大新聞など。時折はSlateやSalonも読む。

ブログは、リンクを誰かが送ってきた場合以外は読まない。掘り出し物探しには、ツイッターのフィードを使っている。ツイッターでは40人ぐらいをフォローしているが、皆、知人だ。彼らが面白いと思ったもののリンクをわざわざツイートするのだから、読む価値がある確率は高いはずだ。

W;ある人物や仕事に対してあなたはどんな風に関心を持つようになるのか

私は、素材を芸術、文学、科学などの複数の領域から取り出して、それを固有の方法で組み合わせている人々に関心がある。

我々が住んでいるのは大量生産の文化である。そこでは多くの人々、多くの立派な文化的権威ですら、中古のアイディアを弄り回すことに汲々としている。私は、そうではなく、自分の固有のリアリティを作り出しているような人々に出会いたい。模造品の出来合いの現実など断固拒否するような人々だ。私は経験主義者(何も科学の分野に限らない)に会いたい。何かをやっている人のことについて語ったり、分析する人ではなく、自分で何かをやろうとしている人だ。

W;どうやってそういう人々を見つけるのか

口コミや世間の評判に基づいて探している。エッジは、外見と反対に、排他的ではない。エリート主義という意味ではそうだが、実績に基づいた良い意味でのオープンなエリート主義である。具体的にはスティーブン・ピンカーブライアン・イーノ、Martin Rees,イアン・マキューアンリチャード・ドーキンスが推薦した場合にエッジのリストに加えている。それだけの話で、こういった状況で私がノーと言った記憶はない。

W;科学と芸術はどのように出会うのか

通常、アーティストがその仲立ちをしている。アーチストたちは、社会のための装置を常に探しており、探し当てると、常にそれをモニターしている。彼らは自ら前進して、我我々が誰であり何であるかにかかわる重要なシグナルを前線から我々に送ってくれるのだ。

私が科学に引き込まれたきっかけは、60年代半ばのニューヨークのアバンギャルドな芸術家たちの影響だった。ジョン・ケージが、ノーバート・ウィーナーの著書サイバネティックスを手渡してくれた。Robert RauschenbergはJames JeansやGeorge Gamowのような物理学者の本を教えてくれた。

W;今起こっているもっともエキサイティングな領域横断は何か

それはモノではなく人である。HUO、Hans Ulrich Obristだ。彼はロンドンのケンジントンガーデンにあるSerpentine Galleryの館長であり、共同ディレクターだ。芸術の世界で、彼はハリケーンという名前で知られている。彼は単独で(私のほんの少しの手助けだけで(笑))科学と芸術の交差という場にフォーカスしている。彼の活動によって今やロンドンには強烈なスポットライトが当たっている。ロンドンは世界の中で、もっとも興味深いアートシーンを提供することになった。

HUOはあまりに洗練されているので、アーチストと科学者を集めて単純に創造的なコラボレーションをさせようなどとしない。その代わりに、彼は「21世紀への地図」というようなプロジェクトを走らせている。このプロジェクトでは50名のアーチストに部分部分を作らせて、私に頼んで、科学の分野の人々に同じことをさせた。我々は2007年に「21世紀への処方」という同じようなイベントを行った。これらの仕事の共存はきわめて啓蒙的であり、その結果は目覚しいものだった。
ロックマンの主要著作。
The Third Culture (1996)
The Next 50 Years (2002)
What Is Your Dangerous Idea? (2007)
This Will Change Everything (2009)
Is the Internet Changing the Way You Think? (2010)

(以上)