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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

それでもGoldが好き

日経新聞を読んでいたら貴金属ETF東証に上場するという記事が載っていた。

「金やプラチナ(白金)の1キロの延べ板と交換可能な上場投資信託ETF)」が7月に上場するらしい。地金投資に似た安心感を持たせたのが工夫だとか。

商社(委託者)が金市場から現物調達をして、それを信託銀行(受託者)に信託設定して、信託銀行である三菱UFJ信託銀行が信託証券を発行するという仕組。

金現物を裏づけとするETFとしてはSPDRゴールドシェアというのが既に東証上場しているが、これは海外のETFを重複上場しているだけなので、裏づけとなる地金はロンドンの銀行の地下金庫にあるので、国内では交換できないのだそうだ。

商品の仕組みにはそんなに関心はないが、日経のこんなコメントが時節柄面白かった。

「通貨市場が混乱した時、貴金属は有力な貿易決済手段となる。地金を国内に保管するETFが普及すれば国全体でみた有事の備えは厚くなる。」

Fiat currency(不換紙幣)に対する不安も極まるということなのだろう。しかし、いずれにせよ、ムードというものに過ぎない。

金もバブルだというバロンズの記事を前に紹介したが、ニューヨークタイムスはそれとはちょっと論調の違う記事を載せている。書いたのはNELSON D. SCHWARTZ。

今回の金ブームは、未曾有の金融危機に対する不安もあって、それ自体がバブルだとしても、若干長期化するのかもしれないというような気分にさせる内容だ。個人だけではなく、保守派のイデオローグ、リベラルびいきのソロスなども含めて、金選好が高まっているという。

ソロスだろうが、誰だろうが、信用危機の極限での、紙幣が受け入れられなくなる世界に備えて、割高の金を買うというのはやはりバブルだとは思うし、逃げ足を常に考えるようなトレーディングとしてならともかく、そんなに言うほど安全な気にもならない。

結局、古今東西、マネーには究極的な行き所などないということで、それが貨幣経済というものの宿命なのだ。その意味では、ドル高も円高も金高も同じ話の繰り返しなのだということが、僕の読後感だ。


http://www.nytimes.com/2010/06/13/business/13gold.html?sq=Gold&st=cse&scp=2&pagewanted=print

最後の審判におびえる群衆は、「物事がすべてうまく行かない」ことへの賭けに殺到している。蘇る熱情を持って、彼らは「答えは、Goldだ」と言う。

インフレーションデフレーション、政府借入、暴落するユーロなど、心配ごとには事欠かないが、こういった将来への不安によって金への殺到が生じて、この貴金属は新しい高値を目指しはじめているが、これは経済混乱に対する不安がどれだけ市場の周縁から中心へと移動しているかを示していると言える。

結果、地下室に金の延べ棒を溜めむ変人扱いされてきた金投資家にようやく我が世の春が訪れている。

「世界中で、過去に対する多くのしっぺ返しに起こっている。金が唯一の脱出口なのだ」
(John Hathawayトックビルゴールドファンドファンドマネジャー)
金の熱狂的なファンの新顔の中で、有名なのは、フォックスニュースのコメンテーターのGlenn Beckや投資家のジョージ・ソロス


さらには冷静なウォールストリートタイプの中にも金のフィーバーを正当化するロジックを説明しだすものも現れている。言葉遣いは違うが、こういった人々は古くからの緊急避難場所である金が重要性を再び獲得しているという根本的な見解を共有している。とりわけ、株式や通貨のような他の資産の相場が弱さを見せる中で、とりわけ金に注目が浴びている。

世界中の個人も、こういった考え方に追随しはじめた。米国造幣局では手持ちの金貨が枯渇。さらに南ア造幣局は、先月末にクルーガーランド金貨の生産を50%増加させたという。これは急激な欧州からの需要に対応した動きで、過去25年間で最高水準だという。

先週金価格が1オンス1254ドルと急騰した原因の一部は、欧州のソブリン危機と、それにともなうユーロ下落の影響である。さらに米国においても、米国政府借入を維持することは困難で、最後の審判は目前というような不安感が深まっている。これを反映して、アメリカンイーグル金貨(1オンス)の販売はこの5月には前月比で3倍になった。

ロジックは以下の通り。

各国政府が債務返済のために紙幣をどんどん印刷すれば、インフレーションになり、インフレによってドル、ユーロや他の紙幣の通貨価値が破壊され、その結果、金の価値が上がる。

さらに、増税という選択肢も考えにくく、欧州が危機に瀕しているため、以前だったら考えられないと思われていたこと、すなわちソブリン債のデフォルトや信用体系の崩壊のような事態でさえ、突如、想定の範囲内になってしまった。

金の買い手を突き動かすのはいつもこういった恐怖だといってしまえばそれまでだ。ただ少し違ってきているのはウォールストリートでもっとも尊敬されている投資家の中にも、恐れを抱く人が出てきているということだ。

リーマンブラザーズの破綻を、最初に予言した一人であるニューヨークのファンドマネジャーのDavid Einhorn曰く、

「最近、一つのバブルが終わり、救済がなされ、事態は次の段階へと進んでいる。我々の金保有残高は我々の懸念を反映している。米国の財政政策と金融政策は、今後、起こりうる危機を阻止するために必要な方向には向かっていない。」

大昔から、金には本源的な価値があると見なされてきた。政府が破綻し、通貨が崩壊しても価値が維持され、その所有者を魅了しつづけるのである。

とはいえ、金も下落する。時折は急落も生じる。

1980年に1オンス800ドルを超えたところでピークをつけたあと20年間、金価格は低迷した。底打ちは1999年の1オンス250ドルの水準。しかし無価値になる可能性のあるペーパー資産とは違って、金は常に少なくともいくらかの価値を維持している。

最近では、金は政治的なロールシャッハテストのようなものになっている。

保守派のラジオ番組では、オバマ政権の経済政策への異議や巨額の財政赤字がインフレの暴走を招く可能性があることが常に主張され、視聴者の熱い関心が、金に向けられている。

ホットな視聴者には、広告主である金関連会社がひきつけられることになる。

Glen Beckは半ば冗談のように、聴衆に対して「金、神、銃」を検討することをアドバイスした。そして経済の3つの可能なシナリオは、不況、大恐慌、あるいは崩壊だと叫ぶ。

Beckのラジオショーの主要な広告主の一社は、Goldlineという、カリフォルニアの金貨や延べ棒の巨大販売会社だ。

この会社は他の保守派コメンテーターのLaura IngrahamとMike Huckabeeのがホストの番組のスポンサーにもなっている。

Beck曰く、「Goldlineが自分の客になるずっと前から、自分の方がこの会社の客だった。個人的には金は投資ではなく、自己防衛なのだ。」

当然、金マニアは右派だけの独占物ではない。

民主党を思想面、資金面で支援し続けるソロスも、6億ドル以上の金塊と金鉱山株式を保有している。

国際経済への懸念が強まると、金の買いやすい地合が生まれてくるのだ。

金を本当に保険として考えるならば、金庫室の中の金の延べ棒しか信じられないという意見もあるが、金を保有しているETFの人気も近年爆発的に増大している。

金の現物価格を追いかける特性を持つ金ETFは、株式のように売買が可能。

クレディスイスによれば、2005年に500トン以下だった金ETF金保有量は、現在1856トンにまで拡大している。

実際の貯蔵に伴う負担なしに巨額の金を保有することができるETFは、個人以外にも、ヘッジファンドのような金融機関にも魅力のあるものになってきている。

サブプライムモーゲージへの逆張りで数10億ドルを儲けたニューヨークのトップヘッジファンドマネジャーのJohn A. Paulsonは、金ETFを30億ドル保有しており、自己の350億ドルのポートフォリオ中の単独資産としては最大の比率を配分している。

Perella WeinbergのXerionファンドで20億ドル以上を運用しているDaniel J.Arbessも新しい金愛好者の一人だ。

数年前には、金を投資対象として考えることなどなかった。しかしハーバードロースクールの卒業生で一般的には保守的タイプに分類されるArbess氏も今では、金投資にかなり真剣である。

Arbessさんは、米国、日本、英国の急上昇する財政赤字は維持不可能で、結果的に不換紙幣fiat currencyと呼ばれるもの、すなわち金の裏打ちのない紙幣(米ドルなど)への信認を結果的に傷つけることになると主張する。

「こういった債務国はそのうち3つの政治的に難しい選択肢のどれかを選ばなければならなくなる。費用の大幅削減、債務不履行あるいは返済用のための紙幣増発である。」

彼は、最後の選択肢が選ばれる可能性が一番高いと言う。そうなると、政府は輪転機をフル稼働させることになり、結果インフレに火が点く。

こういった流れから論理必然的に金がリスクヘッジに選ばれることになるわけだ。

本格的金信者となると、金が過去9年間常に上昇していたことやS&P500株式指数が2001年から13%下落しているが、金は、その時点より、ほぼ5倍になっていることなどを指摘する。


日々、信者を増やし続ける、金は、信奉者たちの心の中に一種のサバイバル意識のようなものを掻き立てている。Peter Schiffのような金投資家は、将来、米国に闇市場のようなものが生まれるというシナリオをイメージしている。すなわち小売店が、紙幣を拒否して、金を要求するような状況だ。

先ほどの金のファンドマネジャーHathawayさんは信用体系は最終局面に入りつつあると考えている。

「こんなことを言うと多くの人々は私のことを馬鹿だと思うのかも知れない。しかしこんなことを考えているのは私だけではない。」(以上)