FDRは経済音痴(トランプのアメリカ)
2017年3月2日(木)10℃ くもりのち雨
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トランプ大統領の議会における初の施政方針演説は、これまでと違って穏やかで、まるで大統領のような語り口だった。その普通さと大人しさが一種の驚きを与えた。市場は、株式市場はFRBの利上げが近いことと、その背景にある米国経済の強さを期待して、ドル高、株高、債券安という動きになっている。
何もしないことが良いニュースという不思議な大統領だ。
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170302&ng=DGKKZO13560300S7A300C1M10800
経済がわかっていない。発言に整合性がない。できない空手形ばかり乱発していると、「心ある」メディアからは総スカンのトランプだが、歴代の有名大統領もそれほど誇れるほどのものでもなかったようだ。
米国の正史の中では、神格化されている、FDR、第32代米国大統領 ルーズベルトは、経済音痴だったらしい。
渡辺惣樹さんは「戦争を始めるのは誰か:歴史修正主義の真実」(文春新書 2017年)の中のルーズベルト大統領についてそんな評価をしている。
私たちは世界史の授業で、大恐慌から米国を救ったのがFDRのニューディール政策だということを教わった記憶がある。しかしのちの「歴史修正主義」(=反正史的立場)からすると、ニューディール政策は、さほど経済回復に役立ってはおらず、実際には、欧州での戦争で世界の武器工場となったアメリカに押し寄せた軍事特需がその主要な原因であるという見方が強まっているという。
そもそもルーズベルト個人は、大統領選挙で緊縮財政を叫んで現職のフーバーを非難した。それが大統領になると一転して、公約破りのニューディール政策になったという。正史の中で神格化されたFDRは公約破りの常習犯だったというのが面白い。このFDR、チャーチル、スターリンに振り回されて、日本の矮小なファシズムは木っ端みじんにされたわけである。
もっと面白いのは、FDRは経済学を全く理解していなかったというところだ。ウッドロー・ウィルソン政権での内務長官にしてFDRを良く知るフランクリン・レインのこんな言葉が引用されている。
「ルーズベルトはファイナンスというものを何もわかっていなかった。その上、彼は自分が無知だということにも気づいていなかった」
整合性のない発言をする人の特徴は、この自分が無知だということに気づいていないということなのは古今東西不変の真理のようだ。
『ニューディール政策はFDRが考えたものではない。この政策はコロンビア大学などを中心とした若手経済学者がケインズの影響を受けてながら考案したものであった。FDRが経済学を理解していないのは自信のスピーチに二律背反性があることに気付いていないことからもよくわかる。』
フーバー政権の浪費を攻撃しつつ、「過小消費」の弊害を説く。たしかに経済学で赤点を採っても仕方がない。
『FDRのスピーチ原稿を準備したものはその矛盾つまり国民への嘘については十分に認識していた。ルイス・ハウは1936年に亡くなるまでそのスピーチライターを務めたが、彼は嘘をつかずに政治家にはなれないと割り切っている。
「政治の世界で飯を食おうとすれば、正直ではやっていけない。」』
トランプ大統領のスピーチライターは、二人のスティーブのうちのスティーブ・ミラーの方だと言われている。サンタモニカの極右少年転じて、米国大統領の右腕となった立志伝中の人物の頭の中にあるのも、こういった確信犯的政治意識なのだろうか。
とすれば、ここは、ツイッターのビッグデータ分析で、ここは抑え時と判断したのかもしれない。いずれにせよ、この人たちは、前言撤回になんら政治倫理的な負債感を感じないようだから、この発言も二転三転してもかまわないように具体性抜きで仕上げたのかもしれない。
この人たちに本当に具体的な国家運営ができるのか。その疑問はいまだに解けていない。見事と言えば見事な最初の100日間だ。