21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

podcast:StartUp 第2回:Audioのインスタグラム!?

最近はLong-form(長い尺)のコンテンツは、動画、テキスト、音声なんであれ、向かい風のような気がする。自分を見ても、自分の関心を一定時間、一つの対象に絞り込むのが本当に難しくなっている。NHKの朝の連ドラのヒットのかなりの部分が毎日15分という短さにあるという見立てもきわめて、説得力がある。

 

ポッドキャスティング会社が、有能な才能をどんどん引き抜いているのは、このメディアの持つCreative Freedomにあるという意見も大きい。長さの制約もないし、ネイティブ広告に関しても、かなり大胆で本質的な実験ができる等々。

 

たしかにクリエーターにとっての魅力というのも大事だ。しかし、視聴者。リスナーのShort-formコンテンツ好きという部分も真剣に考えるべき点だ。

 

確かにポッドキャストの場合は、少々、長めでも、受け入れられるのかもしれない。しかし、それがより広い観客に受け入れられるためには、長すぎてはいけないはずだ。

 

 

 

そのあたり、Alex BlumbergのStartUpは見事な長さ。25分から30分程度の長さで、なかに二度、ネイティブ広告が挟み込まれる。そしてこの広告も、広告主のトップ、従業員、顧客とのインタビューというドキュメンタリー形式のフォーマットを取っているので、それ自体聴きごたえがある。

 

 

 

 

前置きはこのくらいで、StartUpのエピソード2

 

 

Is Podcasting the Future or the Past?

 

大物投資家からの愛情あるダメ出しを受けて、プレゼンテーションの準備に余念のないAlexの姿から始まる。

 

本日、4回目。妻のナザニン、友人のジョシュ相手のセールスピッチの練習だ。

内容の精査から、暗記まで、今回は、腰が据わった準備を行っている。

 

最初は、個人的な履歴などから。

 

ジョシュ曰く、誰も、街の商店に投資をしたい人間などいない。

 

自分が大きなものの一部に参加しているという意識を持たせなければならないと。

 

アメリカのラジオのリスナー数2億4000万人。週平均聴取時間12から14時間など、市場数字の確認も怠らない。

 

大事な名前も決めた。

 

アメリカンポッドキャスティングコーポレーション(APC)。

 

ジョシュから再度のコメント。

 

プレゼンの中では、APCとは何かを一言で言う瞬間が必要だ。

APCとは何なのかを一言でいう。

 

Dramatic Unveilingというやつだ。

 

いろんな表現を試した結果、3人が合意したのが。

 

Connecting large, passionate audiences with what they want to hear.

 

巨大で、情熱あふれるリスナーと、彼らが聴きたいものを結びつける。

それがAPCだ。

 

ランスルーのあと、Alexは少し安心した。明日LA行の飛行機に乗る。

妻と友人を説得して満足しているわけにはいかない。しかし、はじめて満足いく準備ができたという満足感があった。

 

場面は変わって、ビバリーヒルズモンタージュホテルのロビー。

 

クリス・サッカの片腕マット・マジオがやってきた。コンファレンスルームではなく、ホテルのロビーを指定したのはマットだ。

 

自己紹介や、自分たちの前職などについての説明あたりからミーティングは始まった。

 

マットは、前職はハリウッドの大手タレントエージェンシーのCAA。

 

 

社内のベンチャーファンドを運営して、クライアントであるタレントたちと新しい事業を開発するのが仕事だった。

 

彼がかかわったもっとも有名な仕事は、Adam MckayやWill Farellたちと組んだFunny or Dieというビデオサイト。

 

(アメリカ人なら)皆見たことがあるはずなのが、Landlordというビデオだ。アル中の女大家が家賃取り立てに来る話。

 

 

扉を開けると、そこには大家のPearlが立っている。でも彼女は、当時2歳のAdam Mackayの娘が演じている。

 

こんな和気藹々とした会話が終わり。

 

満を持したAlexのプレゼンが始まる。細部まできっちりと暗記しているし、準備万端なので、自信満々のプレゼンテーションになった。

 

米国2億4000万人のラジオリスナーが急激にデジタルシフトを起こしている。その担い手が、我々、APCだ! 広告収入だけで、12か月で損益分岐点に達する。

 

1年間で、シリーズを3本制作。それぞれ、30万人から40万人のリスナーを集めることが可能。合計100万から150万人のユーザー基盤を構築できる等々。

 

近所の商店じゃないという意識で強め強めのプレゼンをしているが、心のうちでは、一つのポッドキャストで10万人というリスナー数でもかなり大きいのに、30万から50万人という風呂敷を広げまくったことへのかすかな不安が漂ってはいるのだが。

 

大変かを一番よく知っているのは自分なんだけどなあと囁く弱気の虫を振り切りながら、

Alexは決め言葉を発する。

 

ところで、あなたは、InかOutか。投資するのかしないのか!

 

マットはおおっと来たかという感じで苦笑しながらも、いずれにせよ、もっと話を続けたいという。いつもなら、断るときはなぜ断るか理由を3つぐらいあげて率直に答えるのだが、今回はそうではない。メディアの世界にいたこともあり、Alexのような素晴らしい実績を持つ人材が、起業に賭けるというのは稀少性があることがわかっている。

Alexは追い打ちをかける。(リスナーは応援したくなる。もっと行けAlex!)

 

もっと話したいはいいんだけど、具体的にはどのくらいかかるのか?

 

話が具体化する中で、マットからいくつかの重要な質問が出た。

 

一番目は、リスナー数(Audience)。多すぎるんじゃないかといわれるかと思ったら、逆で、

100万人のリスナー数は、そんなに難しくないのではないかというのが、マットの感触。(ほっとすると同時に、投資家と自分のギャップが気になり始めるAlex)

 

それよりもっと大事なのが、テクノロジーの問題。これは、Alexのビジネスプランの中には、含まれていない部分だった。

 

マット曰く、Alexはポッドキャストが、リスナーにとっての最高のプラットフォームだという前提に立っているが、自分はそうは思わない。今のポッドキャストはMP3時代と本質的には何も変わらない。

 

ソーシャルメディアの進歩を一切吸収していないといっていいぐらいだ。自分が聴いているポッドキャストをすぐに友人にツイートしたり、オーディオファイルを送ったり、友達がどんなポッドキャストを聴いているのかもわからない。

 

その意味では、自分のアプリを作って、リスナー行動に大きな変革をもたらすことが最大な事業機会なのではないかというのが投資家マット・マジオの意見だった。

 

一言でいえば、オーディオのインスタグラムを目指せ!

 

今回は、準備も良くしたおかげで、プレゼンは成功し、コンセプトは気に入ってもらえた。

しかし、そのコンセプトには(大幅な)変更が必要だという話になったわけだ。

 

挙句の果てに、APCという名前にもダメ出しをされてしまう。

 

なんとなく、またモヤモヤ感を抱え込んでしまったAlex。

 

マットの言うことはよくわかるのだが、これは、僕がピッチしたビジネスとは全く違う代物だ。エンジニアや、セールス部隊を大量に雇って、もっと大きな資金調達をしてプラットフォームを目指すこと。

プレゼンを終えて、ホテルから妻に電話をする。

 

気分はどう?

 

落ち込んでる。(Shitty)

 

ミーティングの内容を聴いたナザニンが、Good Meetingみたいじゃないと。

 

ただ自分の気持ちは不安で一杯だ。(Unsettled)

 

今回のミーティングで明らかになったことがある。

クリス・サッカのような投資家が見ている世界と自分の見ている世界は全く違くということだ。

 

テクノロジープラットフォームの構築。たしかに彼らの言っていることは正しいのだが、なぜ僕の気持ちは沈んでいく。

 

Alexにすれば、本当に実行可能かどうか不安のある、今までで最大の風呂敷を広げたのに、それでも小さい。もっとScaleするにはどうするのかと言われてしまった。

 

たしかに、グルーポンはもとはといえば、インターネットアクティビストのサイト。Twitterに至ってはポッドキャスト会社として始まった。

 

Alexは起業における最初にして最大の問題に直面している。

当初のビジョンにこだわるのか、そこまで業態を変えるのか。

 

シリコンバレーのスタートアップの世界ではビジネスモデルの変更Pivotが頻繁に起こるのだ。しかし、それは普通の人間にとっては、とても普通のこととは思えない。)

 

自分はいったい何をしたいのか。早々と、Alexは起業の本質に直面したのである。

 

(エピソード2以上)