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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

podcastの時間:Alex BlumbergはポッドキャストのHBOを構築できるのか

人気ポッドキャストのStartUpの紙上実況中継を早くしなけりゃと、焦っているんだが、なにせ、新しい動きや化学反応が日々起こっている市場なので、毎朝、検索するだけでも読まなけりゃと思ってしまう情報がどんどん見つかってしまう。ただポッドキャストという世界がある種、自己言及的というか、自分のポッドキャストのことを語り合うポッドキャストやブログが入れ子のように生成していく世界なので、こういうクロスメディアのチェインリーディングは、案外、新しい革命状況に向かい合う上では正しいスタンスなのかもしれない。

https://nyoobserver.files.wordpress.com/2015/02/ea_gimlet_alex-blumberg-24.jpg?w=953&h=635

 

 

Observerというウェブサイトに、Alex Blumbergのことを取り上げた記事がまた掲載されている。

 

Can Former Planet Money Host Build the 'HBO of Podcasts'?

Kara Bloomgarden-Smoke 

ポッドキャストネットワークを起業することについてのポッドキャスト、StartUpの第一話の冒頭の30秒後、Alex Blumbergの妻は、彼にこんなことを聴く。

 

履いていく靴の思案をしている夫に対する、妻のナザニンのこんな言葉。

 

「お金持ちと会うの?今履いている、ジョギング用のシューズをやめれば、投資してくれるチャンスが高くなるかもね。」

 

こういったリアルでユーモアのあるトーンがシリーズ中、保たれるのがこの番組の魅力だ。

Blumbergはシリコンバレーでの宝探しのために西海岸へ向かう、夢だけは大きいが、格別拠り所のあるわけではないパブリックラジオの元司会者である。

資金調達という目の前の問題は大きいが、根っからのジャーナリストであるBlumbergは、これは良いストーリーになるじゃないかと思いついてしまう。

 

「僕のようなビジネス専門の記者が喉から手が出るほど欲しい材料だ。これまで決して報道されることのなかった隠したくなるようなすべての詳細の舞台裏を目撃することができるんだから。」

 

人気番組This American Lifeの元プロデューサーでNPRの人気ビジネスポッドキャストPlanet Moneyの司会者であるBlumbergは、番組の中でリスナーにこう語り掛ける。

 

This American Life - Wikipedia, the free encyclopedia

「This American LifeはWBEZが制作し、Ira Glassが司会をする、毎週放送される一時間のラジオ番組である。米国内外の多くのパブリックラジオ局で放送されていて、また毎週無料のポッドキャストがダウンロードできる。テーマは重荷、ジャーナリスティックなノンフィクションものであり、時には、エッセイや追想、現場録音、短編フィクション、ビデオ版なども作成される。

第1回は1995年11月17日に放送された。当初の番組名は、Your Radio Playhouseだった。このシリーズは2014年6月までPRI(Public Radio International)が配信していた。2014年6月以降は、Public Radio Exchangeを通じて自己配信されるようになっている。

毎週テーマがあって、何幕かに分けて放送される。一つの回がすべて一幕という場合もある。もっとも幕数が多かったのは、60分間で20幕というものだった。一幕ごとに、スタッフやフリーランス寄稿者の組み合わせで制作されている。(Wiki以上)」

 

「投資家に初めてのセールスピッチのときには、どんな服装がふさわしいんだ?。ビジネスフォーマルか、テックカジュアルか?妻は僕の靴を問題視した。」

 

心の底から非営利育ちのAlex Blumbergが、覚悟をもって、営利追求型の、苛烈なテクノロジー業界の競争に参戦しようとしている。彼が目指すのは次のフェイスブックを生み出すことではない。とはいえ彼の目標も決して大きくないことはない。

 

「最初の僕のプレゼンテーションは、ポッドキャスティングの世界のHBOになりたいだった。」

 

インタビューは、昨年NPRを辞めて、彼が立ち上げたGimlet Mediaのブルックリンのオフィスで行った。

 

「僕たちは皆、自分のブランドを、クオリティに対する強いコミットメントをもって追究したいという点で意思統一されている。ハードなニュースショーや語り中心のストーリーテリングなども試していくが、なんであれ、僕たちは編集的クオリティの維持が重要ととらえている。」と、師匠のIra Glassの影響の見える落ち着きのないトーンで、好漢Blumbergは言う。

 

起業のタイミングは抜群だった。

 

ちょうどその時期、This American LifeのOBであるSarah Koenigによる、1999年に起きた殺人事件に関する、シリアルという大ヒットポッドキャストシリーズが生まれた。シリアルの第一回配信は1か月でダウンロード数が500万件に達した。

 

この番組は巨大で、熱狂的なファン層をひきつけ、他のメディアからも大きな注目を浴び続けている。Slateはそれぞれのエピソードを取り上げる毎週のポッドキャストを立ち上げた。

 

「シリアルは従来のポッドキャストはラジオ番組や従来型のバラエティ(Song and Dance)でなければならないという既成観念を揺るがす、人気のある新しい文化意識に普及に役立った。シリアル以後、広告主との交渉が以前よりやりやすくなった。そして当然ながら、リスナー数も急増した。」

 

シリアルはポッドキャストという言葉を有名にしただけではない。自分のスマートフォンに、なんとかして、ポッドキャストをダウンロードしようとするリスナー数も増やしたのである。

 

Edison Researchの推定によれば、過去1か月で、4600万人のアメリカ人が少なくとも1つのポッドキャストを聴いている。11月にはこの新しい業界についての非公式のニューズレターさえ配信されるようになった。Nick QuahのHot Podである。

 

突然の関心の高まりは、業界の伝道師たる、Blumbergさえ驚かせるほどの勢いだった。Startupは毎月100万人のリスナーをひきつけている。

 

「常にポッドキャストには数百万のリスナーをひきつける力があると考えてきた。だからこのビジネスを起業したのだ。しかしさすがに最初の数か月でそれが達成可能だとまでは思っていなかった。」

 

その後、多くのポッドキャストがリリースされ、ポッドキャストブームが到来しているようには見えるが、実のところ、プラットフォームやブランドなしに、新しい番組に対する関心をひきつけるのは、引き続き至難の業である。

 

市場構造は、まだばらばらに拡散している。

番組はiTuneストアを通じてアクセス可能だが、かなり一般的なカテゴリーでの分類しかなされていない。

聴きたい番組を見つけるためのNetflix的アルゴリズムは存在しない。

 

これまでは、既に観客がいる人気番組を担当してきたBlumbergにとっては、これは新しい挑戦だ。

 

彼は、当初から、Startupをマーケティングツールと考えていた。起業についての魅力的なストーリーによってブランド認知度を上げることが重要だ。

 

たしかに、このシリーズの魅力は、類例のない透明性だ。なんの制約もなしに起業の現実が報道される。

 

 

ドキュメンタリースタイルで、Blumbergは、自分の妻や、共同創業者のMatthew Lieber、従業員、投資家、広告主、そして自分自身にマイクを向ける。

 

この作戦は功を奏した。

 

「もともとは、0から自分が起業する中で、自分の会社のことを人々に知らせ、ある種の観客層を作り上げるだけでも満足だと考えていた。ところが、起業のストーリーといのがどれほど複雑な感情を引き起こし、それがどれだけ自分に思い影響を与え、それがさらには、リスナーにどれほど感情的な共鳴を生み出すかということまでは気づいていなかった。」

 

その共鳴性がどれほど強かったかを物語るのが、ポッドキャストで、リスナーに投資を呼びかけた時のことだ。応募が殺到し、放送の2日後に、「資金調達は完了」というメッセージを録音しなければならなかったほどである。

Gimlet MediaはVC中心に150万ドルの調達に成功した。

 

シリーズ全14回を通じて、Blumbergは投資家向けプレゼンテーションの練習から、ボスとなる現実との格闘まであらゆる経験をする。

 

番組には現実のオフィスの臨場感がある。しかもBlumbergが主役でもありインタビュアーであるのが当のBlumbergだというのがこのポッドキャストの異例なところだ。

 

Nick Quah曰く、

「明らかに、Blumberg氏は、番組の中で演じているよりははるかに賢明だ。しかし、彼の振舞いは、ポッドキャストが望みうる最良の結果を出していると言える。すなわち本当のビジネスの内側に入り込むことができているのだ。Startupが特別なのはそのせいだ。彼は、テクノロジー業界の現実に対して、我々に開かれた扉なのだ。」

 

妻にも常にマイクが向けられる。そして彼は、自分の始めたビジネスが家族や家族の財政状況に与える負荷について妻に質問までする。

 

彼女は、夫に対して、「あなたは本当の意味でお金というものが現実にどういうことなのかをわかっていない。」とまで言い切った。

 

他のエピソードでは、社名決定で右往左往する姿が描かれる。最初はエスペラント語で耳を意味するOreloに決まりかけたが、妻の失笑を誘うほど馬鹿げた名前ということで、最終的には今のGimlet Mediaに落ち着くことになる。

 

 他の回では、労働環境や、従業員が抱えるストレスが描かれる。もっとも注目すべき瞬間は、Blumbergが、最終的には、自分個人の編集スキルというものへの過度の依存度がいらなくなる瞬間が来るということをスタッフに安心させようと発言するのだが、彼の発言によってもスタッフのストレスレベルが変わらないという場面だ。

 

従業員の反応とそれに対する自分の反応を聴いたのちに、Blumbergは彼の経営スタイルの再評価を行う。そしてウィークリーミーティングの開催のような小さいけれど、効果のある変更を行っていく。

 

Gimlet Mediaのスタートがポッドキャストブームを活用できたのは偶然に見えるかもしれない。しかしStartupが成功したもう一つの有力な理由として、世間のテクノロジーブームへの関心の高まりというものがあるのを見過ごすわけにはいかない。

 

昔は、誰も知らないWhatsAppのようなメッセージングアプリが突如数十億ドルの企業評価を受けるということがニュースの一面を飾るようになった時代だ。

 

ユーザーエクスペリエンスやMVP(minimal viable product)のような言葉が北カリフォルニアから全米、全世界の文化シーン全体へと広がっている。

 

Startupはこの世界への窓となって、リスナーを代表する、非エンジニアの文化人が素朴に調達に邁進するという現実のプロセスを描いているのだ。

 

ある意味では、パブリックラジオ版のシリコンバレーなのだ。

 

シリコンバレーは、シリコンバレーのVCや起業家が登場する人気テレビシリーズ)

 

第1回の初めの方で、リスナーはBlumbergがLAのレストランの外で、Inc誌が若きウォレン・バフェットに比較するほど、空前絶後の投資実績を挙げたテクノロジー投資家のChris Saccaに対して、口ごもりながら、プレゼンテーションを行うのを聴くことになる。

 

Blumberg氏は我々と同じなのである。正確には、我々がなりたいと思っている自分の姿なのだ。リッチな投資家が、見かねて、彼の会社のセールスピッチを考えるのを手伝うという異例の行動をとるほど、Blumbergは賢く、熟練しているのだが、その一夫で我々が、共感できる愛すべきやりかたで、不器用であり、真実味にあふれているのだ。

 

自分とSacca氏の違いを説明する際に、彼は自分が、パブリックラジオのプロデューサーになる前に、教師だったという履歴を明かす。さらに教師になる前は、彼はソーシャルワーカーだった。

 

「Chris Saccaと自分は異なる世界に属している。」 

 

この明確な違和感が表明されていなければ、彼の語りの社会的文脈は失われただろう。

シーズン1の中で、Blumberg氏は、巨大投資家が彼に当惑するのと同様、自分も彼らに当惑していることに気づく。

 

「あなたには殺気立つ野心がない。あなたと話していて、今後成長し、巨大なメディア企業を構築するだろうというシグナルを受け取ることができるときもある。しかし、また別の時には、あなたが作りたいのはアートであって、そのためにこの事業を損益トントンに持っていきたいだけだと感じることもある。」

とSaccaはBlumbergに言った。

 

BlumbergはSaccaに対して、自分が損益トントンでいいと思っていたら、パブリックラジオの世界を飛び出したりはしないとその懸念を解消しようとする。しかし彼は、内心、自分の魂は起業家なのかアーチストなのかというより大きな問題について、迷いがあることを隠さない。

 

「多くの創業者たちは、世界を変え、固有のやり方で結果を残そうという覚悟で走っている。それは凄いことだ。しかしそれは僕の現状ではない。僕にとっては、問題なのは、何が自分を突き動かしているかということなのだ。そして僕を突き動かしているのは、こういった番組を作るのが大好きであるということだけなのである。そしてそんな僕なのに、奇跡的に多くの観客を集めることができ、その拡大トレンドが継続しているということなのだ。

 

当然、パブリックラジオの正統派だった彼は、収益を生み出す素質を十分に備えている。

 

おそらく、Blumberg氏のあまり出しゃばらない、思慮深い、自分自身の不安や、クオリティの高いオーディオに対するオタク的な情熱が、彼のUnfair Advantage(アンフェアともいえる圧倒的な優位性;Sacca氏が多用するVC用語。)なのだろう。

 

「Alex Blumbergは、人々がパブリックラジオの司会者に対して持つ暗黙で、微妙な信頼感を本当にうまく活用している。」と、Quahは言う。

 

昨年、大脱出という言葉が使われるほど多くのパブリックラジオの古株たちがポッドキャスティング会社に転職したこともこういったあたりの関係を表している。

 

先週、WNYCのコンテンツ開発と制作のVice PresidentだったChris Bannonが、競合するポッドキャスティングプラットフォームのMidroll Mediaのコンテンツ開発のヘッドに転職することを発表した。

 

Gimlet Mediaの第二のシリーズである、Reply Allは、インターネット文化に関する知られていないストーリーを集めたシリーズだ。

 

司会、製作はPJ VogtとAlex Goldman。

 

彼ら二人は、ともに、WNYCのOn the Mediaの元スタッフである。(彼ら以外にもGimlet MediaにはWNYCのOBが参加している。)

 

こういったポッドキャスティング会社やBuzz Feedのようなメディア会社のポッドキャスティング部門によるオーディオ分野の人材引き抜きが業界に激震を与えているとまでは言えない。

 

しかし新しいポッドキャスティング会社が人材獲得における本格的な競合主体になったことは事実だ。

 

今週の初めに、ポッドキャスト戦争に先行参入していたSlateが、自社のポッドキャストネットワークのPanoplyの設立を公表した。

 

大脱出を試みている、プロデューサーや司会者が求めているのは、制作における自由度(Creative Freedom)である。

 

ポッドキャストには長さの制約はない。非営利のパブリックラジオと違って、多くのポッドキャストは広告があり、番組の司会者はネイティブ広告として番組の中にスポンサーからのメッセージを組み込んでいる。

 

Startupでは、広告も番組の一部になっている。広告と番組の区別がつけやすいように、広告の時間には、広告を表す音楽が流れている。Blumberg氏は、うまく短い部分に広告を組み込んで、企業やその顧客に対するインタビューを行っている。

 

 

「人は普通、ポッドキャストをヘッドフォンで聴いている。そのため、あなたのメッセージは直接、人々の耳に伝わるのである。」とSquarespaceのRyan Stanskyは言う。

 

Squarespaceは、毎月平均100本のPodcastのスポンサーを行っている。その中にはStartupも含まれている。

 

 

「人々がポッドキャストを消費する環境は、きわめて親密な空間である。そのため司会者に対する強い親近感がリスナーの間に生じるのである。そして最終的には、我々のブランドに対する親近感も生まれるのである。司会者がSquarespaceのことを本当に好きになって、使ってくれるようになれば、あとはすべてうまく行くのである。」

 

 

多くの意味で、ポッドキャストは広告主にとっての夢のメディアである。

 

Serialマニアとも言うべきブームの中で、MailChimpの広告は、子供たちが間違って、MailKimpと発音するなど、流行語(meme)になり、このEメール配信会社のPR極めて印象の強い影響を及ぼすことになった。

 

 

 

リスナーは司会者を好きになり、信頼する。

 

ラジオが通常は生活環境の中のバックグラウンドのノイズなのに対して、ポッドキャストはリスナーが聞きたいとき、聴きたい場所で楽しむことができる。

 

Blumberg氏に直接会う前にも、私は、彼の声を同伴して、アスレチックジムや食料品店に行った。

 

私に、現実の世界での電話がかかってくると、彼の話声はいったん切れることになるのだが。

 

リスニングには一定時間、関心を維持することが必要である。

 

テキストやビデオとは違って、オフィスの壁に無造作にはりっぱなし、つけっぱなしというわけにはいかない。

 

リスニング中の広告を早送りするのも難しい。(少なくとも今までのところは)バナー広告のように無意識に見なくなるということもない。(Banner Blindness)観客基盤としてはは大規模とまでは言えないが、彼らはコンテンツを集中して聴くタイプの聴衆なのだ。

 

ただコンテンツの内容をじっくりと聴くタイプの聴衆たちが、ポッドキャストのHBOを作り出すに十分なほど魅力的かどうかはまだわからない。

 

Gimletの二番目のシリーズであるReply Allは、昨年の11月に始まったが、インターネット文化におけるあまり知られていない話を発掘することによって熱狂的な聴衆をひきつけている。Gimletは今後、新しいシリーズの発表を予定している。

 

StartUpのシーズン2は、4月に始まったが、Gimletは異なる難題に取り組む違う企業にフォーカスを当てたいと考えている。Gimletが公式に会社名を明かす前に、Twitter上に流れた。

 

Dating Ringが次の主役だ。

 

この会社、業界屈指のスタートアップインキュベーターであるYCombinator

出身で、設立後1年である。

 

(YCombinatorの中心人物である、Paul Grahamはインキュベータと呼ばれることを好まない。業界的にはオフィスの場所を提供するのをインキュベータ、提供しないものをアクセルレーターと呼ぶようだが、使い方は、この記事のように曖昧である。)

 

創業者は20代の女性たちで、オンラインデート分野のスタートアップだ。前回のようにポッドキャスト業界が対象にはならなかった。

 

Blumberg氏が、会社を起業しながら、マイクの両側に、取材対象と司会者を兼任するのを望まなくなったとしても驚くべきことではない。

ポッドキャスト番組の中の実際のドラマと緊張が、自分の人生のドラマや緊張でなくてもいいというのは素晴らしい。自分にとってひどい日でも「少なくとも、良いポッドキャスト作りはできた」と思うことができるからだ。

(記事以上)