21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

スティーブ・ジョブスの表紙は素敵だ

スティーブ・ジョブスの第一巻の中頃を読んでいる。

日々、iPadが肌身離せぬ状態になりつつあるので、そういった状態の原因を作ったジョブスの人生への関心が増しているからだ。

朝めざめると、iPadを使って海外の新聞、雑誌を熟読するという新しい習慣が生まれ、その結果、最近、やたらこの伝記めぐるコラムなど(昨日ブログに書いたニューヨーカーにマルコム・グラッドウェルが書いたTweakerというコラムが面白い)を目にすることになった。

稀代の改良者(Tweaker)であるスティーブ・ジョブスの軌跡にミクロな興味が湧いたのである。

今朝、地下鉄の中で、読んでいたのは、アップルIIの時代に、ウォズニアックに次ぐ第三のパートナー(株主)としてマイク・マークラが参加する件だ。

マイクは、フェアチャイルドインテルでマーケッティングや営業の実務経験をアップルに持ち込むことになる。

ジョブスのマークラに対するコメント。

「マイクには本当に世話になった。彼の価値観は僕とよく似ていたよ。その彼が強調していたのは、金儲けを目的に会社を興してはならないという点だ。真に目標とすべきは、自分が信じるなにかを生み出すこと、長続きする会社を作ることだというんだ。」


マークラーはこの原理をまとめて、「アップルのマーケティング哲学」にした。

一番目は<共感>。「アップルは、他の企業よりも顧客のニーズを深く理解する。」

二番目は<フォーカス>。「やると決めたことを上手におこなうためには、重要度の低い物事はすべて切らなければならない」

三番目は<印象>。「人は、たしかに表紙で書籍を評価する。最高の製品、最高の品質、最高の便利なソフトウェアがあっても、それをいいかげんな形で提示すれば、いいかげんなものだと思われてしまう。プロフェッショナルかつクリエイティブな形で提示できれば、評価してほしいと思う特性を人々に印象付けることができる。」

こういった考えはたしかに、今でもアップルの製品には染み渡っている。

iPad2を使い出してそれをリアルに感じることがある。このデバイスには、明確な使い勝手への意志がある。自分はこう使いたいという非妥協的な意志。たとえば英文を読むときに、スクリーン上の単語をタッチするだけで、辞書を開くことができるというのは、このデバイスを読書装置として使う側からすると、きわめて重要な使い方だ。iPad2のぼくにとっての魅力のかなりの部分がこの機能から始まっているといってもいい。

日々使いこなせば使いこなすほど、にじみ出てくる使い勝手の良さがある。

二番目のフォーカスということについては、言葉を付け加える必要もない。

三番目の印象は、まさに、ジョブスのアップルの真骨頂だろう。製品をどのようにプレゼンテーションするか。伝統的なメーカーの気質から生まれにくい特性だ。

この件を読んでいるときに、前の座席に座っている人がじっとこの本の表紙を眺めているのに気づいた。ぼくは本にカバーをかけないので、日本語版のスティーブ・ジョブスの表紙には白い背景にスティーブの自信を持って、前を見つめる、強い印象を残す写真が使われている。ぼくは、この表紙が気に入っている。

死後に発売される伝記の日本語版の表紙にまで直接スティーブ・ジョブスがかかわっているわけはないのだろうが、その生き方は、彼にかかわるすべての人々に彼の
遺志を意識させるほどの比類のない強さに満ちているように思う。