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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

Hal Varian ウェブは企業経営にどのように影響を及ぼすのか。

グーグルのチーフエコノミストで、カリフォルニア大学バークレー校の教授のHal Varianが2年前にマッキンゼーのインタビューに答えた、Podcastを、英語の勉強がてら、何度も聞いてみた。

なかなかいいことを言っているようなので、ウェブの検索したら、Transcriptが見つかったので、意訳してみた。

今後、統計手法というのがもっともセクシーな仕事になるというあたりが、とても面白い。

たしかに、多くの情報ログが蓄積されていく中で、そのデータを分析し、そこから価値を引き出し、それを人に伝えるという能力のが重要になるというのは、今後の雇用ということを考える上で示唆に富むと思われる。、


http://olgagil.es/Web/Pdf/0901%20Reshaping%20busineess%20Google%20CFO_%20McKinsey.pdf

インターネットの利用が、ここ10年急速に高まったにもかかわらず、低コストで、どこでも、いつでも手に入る情報というものの持つ経済的意義をしっかりと把握できていない経営者がいまだに存在しているというのは驚きだ。

カリフォルニア大学バークレー校の情報科学、ビジネス、経済学の教授である、Hal Varian
は、これらの新しい技術がどのように自分の産業の仕組みを組み替えていくかということを深く理解することなしに、今や経営者足りえないと強調する。

グーグルのチーフエコノミストでもあるVarianは、現代の我々の経験を過去に生じた工業化における経験と比較する。 曰く、ともに、新しい技術が組み合わされることによって、より複雑で価値のあるシステムが作りだされ、それによって経済全体の形を変えていく過程と見ることができるという。

柔軟なイノベーションについて

我々は今、組み合わせ型イノベーション(Combinatory innovation)の時代の真っ只中にいる。

過去にも、同じように、イノベーターが、組み合わせることで新しい発明を行うことのできる多くの技術パーツが利用可能だった時代というものを見つけることができる。

1800年代には、交換可能な部品がそれに該当する。

1920年には電子機器、1970年代には集積回路

現代は、インターネットというコンポーネントのある時代であり、これを組み合わせるための、ソフトウェア、プロトコル、言語、その他能力が利用可能で、これによって全く新しいイノベーションが行われているのである。

今が素晴らしいのは、こういった部品がすべてビット(電子情報)でできているということである。

ビットは枯渇しない。

再生産も複製も可能で、世界中に簡単に撒き散らすこともできるし、数千、数万のイノベーターが新しいイノベーションを行うために利用可能である。

足らなくなることも、在庫が間に合わなくなることもない。

これらの部品は誰にでも利用可能だ。我々が今目撃している巨大なイノベーションの爆発という状況は、こういったことから説明可能なのである。

企業と仕事について
では「以前に、組織の動き方に影響を与えるような技術が存在した時期とはいつなのか」。

アルフレッド・チャンドラーの著作の中に良い回答がある。

この中で彼は、電報と鉄道が近代企業の発達にどれだけ大きな影響を及ぼしたかを説明している。

こういった技術の存在と、大企業の存在がそれぞれに相互作用を及ぼしたのである。

すなわち、これらの技術を経営するためには大企業が必要だったということだ。

さらに、多くの地域を繋いで経営を行うには、通信と移動手段が不可欠だったのである。

新しい技術が人間の移動性というものを高めたため、人間にとって働きに行くということはかつてと全く違った意味を持つようになった。

むしろ、仕事の方が人に近づいていくというのが正確な表現のように思われる。現在、利用可能になっている技術インフラを使って、人々は、いつでも、どこでも自分の仕事を行うことができるようになっている。

こういった行動の変化を可能にしているのは、ネットワークをより高品質、高速、低コストにするためのイノベーションの基礎インフラの存在である。

人間とコンピュータの関係に多くの改善が生じた。こういった改善は、移動体通信という、きわめて制約の大きいインタフェースにどのように対応するか、小さな画面で人間にとっての使いやすさをどのように追求するかという多くの努力の中から生まれてきたのだ。

私が考えているイノベーションとは、こういった基礎的技術インフラに加えて、その上で、仕事がどのように行われるのかについての革新である。今後の技術発展の中で、これがもっともエキサイティングなものの一つになることは間違いないと思っている。

20世紀の初めには大量生産方式というイノベーションを目撃することになった。

ヘンリー・フォードとその仲間たちは、みずから腕まくりして、工場現場にやってきて、様々な改善、革新を行い、組み立てラインの速度を上げたり、物を作り上げる方法を抜本的に変えることで、以前とは比較にならないほどの効率性を引き出すことに成功した。

同じことがデジタル技術においても生じている。

人々が皆ネットワーク化されるということは、皆が、同じ書類にアクセスでき、同じ能力を活用し、同じ共通インフラを活用できるということである。これによって、人々の働き方自体が変化するのだ。ネットワーク化された組織を通じた、知的作業、知識ワークフローの革新が行われるのである。

私見では、こういった革新が生産性における巨大な優位性を生み出すことになる。

フリーの財と価値について
ウェブの黎明期には、ウェブ上の文章には必ず、勝手に再配布しないようにと書かれていた。コピーライト1997年版だ。これが2008年には、同じ場所にあなたの友人に送るにはこのボタンをクリックしてくださいと書かれるようになっている。

1997年と2008年の間には、知的所有権についての大きな革命が起こっている。

今や、どれが所有されていて、どれが所有されていないということは問題ではない。

価値を実現するために、利用可能な資産を最大限活用できるかどうか、どれだけレバレッジがかけられるかが問題になっているのである。

こういった流れの中で生み出された低コストのプラットフォームを誰もが利用可能であるということは、競争が激化することを意味している。

コンテンツは以前同様重要である。にもかかわらず、その価格をほぼゼロ近くまで押し下げるのは、この競争の激化なのである。

コンテンツ製作者は、認めたがらないとは思うが、このトレンドは技術変化の必然なのである。

こういったビジネスモデルの場合、バリューチェーンのどこかに収入を生み出す要素が通常は存在するものである。

今日もっとも普通の要素は広告である。

歴史的に見ると、こういったことは目新しいものではない。

1920年代の技術的課題は、「ラジオ放送を中心としてどのようなビジネスモデルを構築することができるか」だった。

誰もすぐに良いアイディアを思いついたわけではなかった。試行錯誤の末に、広告モデルが生まれたのである。

1990年代の半ばには、「インターネットを中心にどのようなビジネスモデルを構築することができるか」が現代の我々の課題となったのだ。

そして当時は、マイクロペイメントシステムへの期待が大きかった。

いくつかの理由でこのやり方が実現することはなかった。その代わりに我々は広告モデルを実行し、驚くほどの成功を収めることになったのである。

インターネットを中心とするビジネスモデルを理解するためには、今日の経済というものをもう一度じっくりと見つめてみる必要がある。

(経済活動において収益を追求するためには、置かれた環境の中で、希少性のあるものは何かを理解する必要がある。)

「インターネット経済において本当に希少なものは何か」を問う必要がある。

その答えは関心(Attention)なのだ。

心理学者のハーブ・サイモンは、これをかなり以前から認識していた。

曰く、「豊富な情報がむしろ関心の欠乏状態を生み出す。」

少ない時間で、誰かの関心を獲得することができるということは、きわめて重要な資産となったのである。

グーグルは関心をいかに獲得するかという考えを中心としてすべてのビジネスを構築している。検索するということは、それに関心があるということなのであり、検索の際に、そのユーザーの関心が獲得できるのならば、それは最適な瞬間なのである。

検索した内容に、関連した製品、補完的な製品の広告を見せるには、まさに理想的なタイミングなのだ。

労働者と経営者
私は、前から、今後10年間、もっともセクシーな仕事は、統計専門家だと言い続けている。

皆、私が冗談を言っていると思っているようだ。

しかし1990年代にコンピュータエンジニアが今後セクシーな仕事になるなどと思っていた人がいるだろうか。

データ収集を行い、それを理解し、その後情報処理をすることによって、価値を引き出し、それをビジュアル化し、人に伝える能力が、今後数十年間極めて重要なスキルになっていくことだろう。これは専門家に限った話ではなく、小学校、高校、大学などの教育レベルにもあてはまることだ。

理由は、今や、本当の意味で、ただで、どこでも、いつでも利用できるデータをすべての人が持つようになったからである。

希少な存在はこういった保有情報を理解し、そこから価値を引き出す能力の方なのである。

統計専門家はこういった希少な要素の一部ではある。しかしそれはほんの一部に過ぎない。

データ分析からこういったスキルによって得た洞察を活用し、他人に伝えることができるスキルは、今後、どんどん重要になっていくだろう。

経営者も、自分自身でデータにアクセスし理解することができるようにならねばならない。

経営者には、すべてをあらかじめ咀嚼し、自分が理解したあとで、上にあげようとするイエスマンに取り囲まれてしまうというリスクがある。

旧型の組織では、トップの意志決定者に対してあげる情報を事前に咀嚼するための多くの階層を持つ必要があったのだ。

しかし今やそんなやり方は必要がない。情報は組織内の全ての人々にとって利用可能なものとなったからだ。

誰もが、自分の日常的意思決定をするために、関連データへのアクセスが必要になったのだ。

そしてこれらの作業は、かつてに比べればはるかに簡単になった。そしてこういった環境の変化が、知識労働者の効率性を大幅に強化しているのだ。

コンピュータモニタリングとリスクについて
過去20年間に起こったことの中で、本当に興味深いのは、コンピュータ仲介型取引と呼ばれる現象である。今や、個人対個人、組織対組織など、ほぼ全ての取引をコンピュータが仲介しているといえる。

コンピュータが取引をモニターし、情報を記録し、データを集め、取引が当初想定されていたように実行されるようにするのである。

自分で契約を書くと、それが今では昔とは違って、法的強制力が生じているというのは、この現象がもたらした微妙な帰結の一つである。

レンタカーの例を考えてみることにしよう。

「速度制限を守ったならば、10ドル割引する」とレンタカー業者は言う。

まあ、悪くない取引のようだが、どうやったら、速度制限を守ることができるのだろうか。

おそらく今では、答えは簡単だ。すべてのレンタカーのトランクの中に無線中継器があって、あなたの行動をモニターし、それにしたがって、あなたを見張っているのである。

同じことが、配送用トラックについてもあてはまる。今日路上を走っているほとんどすべてのトラックにはコンピュータが搭載されている。

コンピュータがロジスチックを改善しているのである。

コンピュータによってドライバーの仕事ぶりをモニターし、品物がより速く、消費者に届くようにするのだ。

かつては利用可能できなかったやり方での多様な契約形態が、コンピュータを仲介にすることで可能になっている。

新しい技術を取り込むことで、人々は、技術の持つポジティブな側面を肯定的にとらえることができるようになる。

ただこの新しい発展にネガティブな側面があるのも事実だ。

ネガティブな側面に対処するための規制インフラが構築されるようになっていくだろう。

個別の消費者を対象に、パーソナル化し、それぞれの関心とニーズをモニターすることで、それぞれの人々に密接に適した製品を提供ができるようになるというコンピュータが可能にした側面は私にはエキサイティングなものである。

人々がインターネットに関して懸念しているのは、当初意図しない結果をもたらすのではないか、すなわち、インターネットを経由した取引の持つダウンサイド、セキュリティへの不安、なりすまし、ゆすりなどの問題である。

インターネットやコンピュータによって人々にとって何が可能になるかということより、こういった技術が適切に管理されない場合には、どんな悪いことが起こりうるかということが問題になるのだ。

産業形態を再構成することについて
テレビ、印刷、ラジオその他、伝統的なマーケッティング関連業界に大きな変化が生じている

インターネットによって、我々は広告の有効性を測定することができるということを学んだ。そして今やこの同じ測定の有効性を非インターネットのオフラインメディアへ移行させる動きが生じている。

この移行は可能だ。

このシフトが起これば、マーケッティング業界には広範な機能改善が生じることになるだろう。

サービス産業一般に関して、多くの効率性改善が生じるということを否定する人は少ないだろう。

我々には必要な技術インフラがある。

さらに通信フローも改善することができる。

製造業における生産性の改善を目撃したサービス産業の人々はこの技術革新の受益者となることだろう。

今、我々が、解決しようとしていることこそ、一番の難題なのである。

私が実際多くの時間を費やしているのが、グーグルで行っているオークションモデルの構築である。

周知の通り、グーグルの広告はすべてオークションによって販売されている。

オークションは、広告の世界では比較的新しい値付けの仕組みである。

オークションは具体的に運営することは、かなり複雑なものである。

我々はこのモデルをラジオ、テレビ、印刷、その他のオフラインメディアに拡げたいと思っている。

これはインターネットによって可能になったモデルである。

この情報技術がなしには、この新しいビジネスモデルは不可能だった。

そしてこのモデルはあらゆる資源配分問題を解決するにはとても素晴らしい方法となりうるのだ。

2001年にこの有用なモデルを思いついた人の洞察力は素晴らしい。

彼らは、コンテンツプロバイダーは販売可能なインプレッションを持っているということに気付いたのである。

具体的にはテレビ番組には一定のスペース(空き時間)がある。

あなたのウェブページにも一定のスペース(空きスペース)がある。

このスペースには広告を載せることができるということに人々が気付いたところからこのビジネスモデルは始まっている。

しかし広告主がお金を払っていいと思うのは、その広告が実際に何回クリックされるか、そのクリックによって生じる自分の広告スペースへの訪問回数であり、その訪問が実際の購買に繋がることだったのである。

どれだけ多くのインプレッションを表示できるか自体は、広告主にとってはあまり重要ではないのである。

繰り返しになるが、通常、広告主が重視するのは、人々を自分の店舗へと連れてきて、最終的に彼らが自分たちの商品やサービスを購入してくれるかどうかなのだ。

その意味では、Web publisherがインプレッションを売ることが出来て、しかも広告主が必要なクリックを買うことのできるシステムを構築する必要があるのだ。

そしてグーグルはこれを適切かつ、エレガントなやり方で達成してきたといえるだろう。(以上)