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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

NYT 中国経済の行方(日本と比較した場合)

今回の経済危機で、身にしみてわかったのは、世の中は持ちつ持たれつだということである。小さな集団の中では自明な事実が、近代社会が成長する過程で少々見えにくくなっていた。

小さな集団の中では、この言葉は道徳的というか、ある種の優しさを持って使われるのだが、グローバル化の進展の中では、うってかわって、単なる冷徹な事実として、ぼくたちの前に現前しはじめているのだ。

そして重要なのは、持ちつ持たれつが、情報の透明化の中で、多くの人々に明らかになっていくにつれて、その現実を受け入れる共通の信憑というか、別の言葉を使えば連帯感のようなものなしには、ひとときも維持できないものだということが急激に明らかになってきているのだ。

こういった加減は、米国でももっとも優秀と言われる人たちを集めたと言われる金融機関や、一流企業の公的資金を注入の直後に高給(それも目の飛び出るような)を得ても、あたりまえと思うようなタイプの人々には決してわからない部分なのだろう。

この持ちつ持たれつはなかなか続けられないとは思うのだが、とりあえず、昨今のグローバル経済を支えているのは中国という機関車である。でも、この機関車のパワーがいつまで続くのかということを心配する人々も増えてきている。

透明化で、みんなが多くの情報を持てば持つほど、逆に世の中は不安定化するのかもしれない。

世の中の底が抜けているなどということを、皆が理解したあとで、それでも、持ちつ持たれつで生きていくためには、新しい連帯感の醸成が必要だ。

そして、今は、それとは逆の方向に向かっているような気もしてならない。

とはいえ、ここでは、皆の期待の星、中国経済はどこへ行くかという話である。

ニューヨークタイムスのMichael Winesの「中国経済は危険な経路に足を踏み入れている。(日本に学ぶことだ)というコラムがよくまとまっていた。


http://www.nytimes.com/2010/05/26/world/asia/26beijing.html?ref=global-home&pagewanted=print

ホワイトハウスは200名の政府高官を中国の首都に送り込んだ。目的は、今週の関係緊密化のための政府間対話のためだ。

200名という人数自体が世界秩序が置かれているただならぬ状況を物語っている。

過去10年で3倍という中国の経済成長の中で、多くの高級ホテルや高級車が氾濫する現実を見ると、中国という驚異の存在(juggernaut)という言葉も少々ありきたりなものになってしまった。

実際、世界は動揺している。

20年前は日本がいわゆる驚異的な存在(juggernaut)だった。

日本が、今後数十年、世界貿易とグローバル外交を支配するのだという内容の書物が多数ベストセラーとなった。

父ブッシュが大統領の頃、訪日中に風邪で、会食時に不始末をした風景も、東の軍門に下る西を象徴するものとしてくりかえしメディアに登場した。

実際にはそういった予想通りにはならなかったということは、今後中国の将来を予測する上での予兆となる。

中国が単なる農業国家から、経済大国に急激に成長するのを見た、外部者が、現在から未来に向けて、過去を外挿して予測するリスクを無視すべきではないだろう。これまでの上昇は疑いもなく経済的奇跡だった。しかし、日本の奇跡と違うのは、中国の国家主導の成長モデルは、開発初期には完璧に当てはまっても、将来の成長の維持を保証するものではない。

北京に拠点を経済予測会社のドラゴノミクスのArthur Kroeberは語る。

「日本の経済モデルは40年間ぐらいは素晴らしくうまく機能していた。そして突然このモデルは機能を停めた。だからといって最初の40年間が間違っていたというのだろうか。答えはノーだ。日本の当時の発展段階にとってはこのモデルは適切なものだったのだ。」

北京での米中の戦略会議においても、市場の閉鎖性、米国のテクノロジーの不当な利用、割安に操作された人民元による米国貿易赤字などという言葉が飛び交った。

20年前の日米対立とそっくりだ。

第二次世界大戦後、日本には、国と密接に結びつき、優遇された企業群による帝国が築き上げられた。アメリカ人の中には、貿易大国日本は、政府によって人為的に割安に置かれた円によって、作り上げられたのだと批判するものも多かった。日本のメーカーも、低価格の電子機器を大量生産するために、アメリカの技術を不正利用したと非難された。さらには、日本の小売市場と金融市場は、アメリカ企業には参入不能だった。

その後、米国の対日赤字の増大によって、米国議会が激怒し、1980年代には米国企業を保護するための円切り上げを誘導するためにワシントンを動かすまでになった。

今日の中国にも多くの巨大企業が存在する。しかし日本と違ってこれらの企業は明示的に国営であり、政府の政策実行の道具であるとみなされている。

金融、通信、エネルギーや一部重要な製造業は外国人に対しては実質的に立ち入り禁止で、さらには国内の競合相手にもほとんど開かれていない。

中国の通貨である人民元は、中国以外の全世界から、中国の輸出を促進するために不当に割安に置かれていると批判されている。米財務長官のティモシー・ガイトナーも日曜日の会談で、初めから、中国の規制によって、米国企業は、市場に参加するためだけに、自社の重要技術を与えるという高いチケット代を払わされていると切り出した。

輸出主導で経済を高成長させるという戦術は、過去の日本のような経済発展段階の国には珍しくない。

中国は、二つの点でこういったモデルとは異なっている。外部者にはこの二つの戦術が対外に矛盾しているようにも見える。

第一の戦略は石油、通信、銀行、航空のような主要産業は戦略的と見なされ、完全な国家管理のもとに置かれている。

フォーチュングローバル500に入っている22の中国企業のうちの21社は中国の中央政府か国営銀行によって支配されている。上海自動車だけが例外で、地方政府によって経営されている。この中には民営企業は1社もない。

中国政府からすると、これらの超一流国営企業群は、中国のグローバル市場侵攻への前衛であり、中国の経済価値の伝道者なのである。

他方、軽工業、小売業や、好調な輸出セクターには、アダム・スミスの法則がより貫徹している。

日本に比べると、中国にはウォルマート、スニッカーからテスコなど多くの西側の小売業や消費財が広く存在しており、国内企業と精力的な競争を行っている。

中国の主要輸出品であるiPodナイキのスニーカーは、外国の多国籍企業によって製造されたり、中国の下請け企業によって委託製造されているが、利益のほとんどはこういった多国籍企業が取っている。

こういった二重の市場が存在することは、中国人の論理からすれば何の矛盾もない。

言論の自由や、人権やその他多くの社会的基本制度と同様に中国の企業活動は活発に行うことが可能であり外部者にも開かれている。ただ、それが国家の利益を脅かさないという条件付というのは自明なのだ。

こういった考え方は、西側の資本主義者たちには、ひどく嫌われているようだが、中国政府の過去30年に及ぶ急激な成長という実績が彼らの選択が正しかったこと物語っているようにも見える。

米中対話の中で、中国側のトップ財務官僚は、対立する諸勢力のバランスをうまく取るという職人芸を発揮することによって、13億人の経済をこれまでうまく率いてきたのだと発言した。

(それを認めるとしても)多くのエコノミストも含めて、今ひとつ明らかでないのが、この方式がいつまで機能するかなのである。

中国自体も急激に変化してきている。既にベトナムのような低コストの競争相手が、中国の急成長の中核となった労働集約型産業の事業を奪いはじめている。

全世界の景気後退と、中国が既にいくつかの重要産業で支配的な立場を獲得してしまったという事実は、この国がもはや、輸出拡大によって成長を続けるということが困難になっていることを示唆している。

中国政府は、国内消費を高めることで、輸出への依存度を緩和することを誓ってきた。

しかしこの実現には、中国国民の消費行動を一変させることが不可欠で、これには時間がかかりそうなのだ。これまで中国人たちは、足元の消費を行うよりは、教育、医療のようなまさかの時のための貯蓄を行うというライフスタイルに慣れ親しんでいる。

さらに中国の債務問題がある。

有力エコノミストの中には、中国の経済成長の一部は、(国営銀行を通じて)国民の貯蓄を取り上げ、高速列車、製鉄工場、投機的不動産投資を行うことで達成されてきたと主張している。

国家主導の投資がどれほど生産的の結果をもたらすかは議論の分かれるところだ。

ただこういったやり方がこれまでのところ中国の発展を助けてきたのは明らかである。

しかし輸出がいつまでも拡大しつづけられないのと同じように、新しい道路や工場を作ることから生まれる収益が減り始める時が来るのだ。

中国政府は過去10年間、なんども債務危機を乗り越えてきた。政府は、不適切な投資によって破綻した銀行の救済を行ってきた。

多くのアナリストは、2008年の金融危機後に政府が低金利資金を注ぎ込んだため、こういった破綻が今後発生し、結果、政府による多くの銀行救済が起こることを予想している。

日本経済の奇跡は、未曾有の不動産バブルの崩壊とともに終焉を迎え、その後、繰り返される政策の間違いによってさらに悪化し、日本経済は長期的な低迷に陥った。

中国の経済はいまだ発展の早い段階にいる。そして中国政府は日本の不況を悪化させた日本政府の轍を踏まぬようにしている。

しかし中国を経済大国にした、国家主導の投資と輸出主導の発展に代わる、新しい成長源を見つけられるかどうかがより緊急の課題なのだ。

MITのスローンスクールの教授のHuang Yashengは次のように言う。

「中国の経済ファンダメンタルは良好である。自分が言いたいのは、中国政府の方針はいまだ以前のままだということだ。しかし中国経済を今後も維持していくためには、人為的な刺激策にはもう依拠できないのである。」(以上)