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「日本語を作った男;上田万年とその時代」


日本が近代国家の道を急いでいた明治時代。近代国家の土台として国語の構築が目指されていた。その中心を走っていた上田万年という人を中心として、日本語が出来上がってくる原過程を描いた「日本語を作った男」を読んだ。

 

日本語を作った男 上田万年とその時代

僕たちが今使っている日本語を形成する過程で、江戸と明治という時代の想いがぶつかりあう様が面白く描かれていた。

 

なかでも、言文一致と言えば、最初に名前が浮かぶ二葉亭四迷が、新しい言葉を探す中で、坪内逍遥のすすめで、名人三遊亭円朝の牡丹灯籠の速記本を参考にしたという件、というよりは、この本の中で引用されていた円朝の語り自体がとても魅力的だった。

 

「団扇を片手に蚊を払いながら冴え渡る十三日の月を眺めて居ますとカラコンコンと珍しく駒下駄の音をさせて生垣の外を通るものがあるから不図(ふッ)と見れば、先へ立ったのは年ごろ三十位の大丸髷の人柄のよい年増にて其頃流行(はやった)た縮緬細工の牡丹芍薬などの花の附いた灯籠を提げ其後から十七八とも思われる娘が髪は文金の高髷(たかまげ)に結い着物は秋草色染めの振袖に緋縮緬長襦袢

 

こういった語りを残すために速記という仕組もゼロから作り上げられたということに明治という時代を感じた。

 

漢字圏の国として、中華文明圏から抜け出て、西洋文明圏からの脅威に対抗しようとしていた時代の物語である。

 

 

 


三遊亭円朝 作,「牡丹灯籠(フル)」,生声朗読 1