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グッドバイMrバノン!...?:ニューヨーカー(John Cassidy;STEVE BANNON IS LOSING TO THE GLOBALISTS)

2017年4月10日(月)17℃  雨のち曇り 111.264 ¥/$

トランプが現実政治の大渦の中に呑み込まれるにつれて、トランプ大統領を実現するのに最大の功のあったスティーブ・バノンとその仲間たちの影響力が急落しているようだ。

 

その象徴が、国家安全保障会議(National Security Council)からのバノン氏の退任(追放?)のニュースである。

 

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現実政治によって、トランプもかなりの部分、既存の方向性に回収されていくというシナリオは、常にメインシナリオにあった。しかしそういったメインシナリオをこれまで裏切り続けてきたのがドナルド・トランプだったのも事実だ。しかし慎重なメディアも、トランプ政権の明確な方向転換に意を強くしていきているようだ。

 

しかし習近平訪米、シリア爆撃等、バノンのシナリオと正反対の方向にトランプ政権は向かっている。その背景にある、バノン勢力の勢いの急落と、その一方での娘婿のクシュナー氏の影響力の増大について、ニューヨーカーのJohn CassidyがSTEVE BANNON IS LOSING TO THE GLOBALISTSという現状まとめのコラムを寄稿している。

 

予想できない逸脱をせず、ほどよく、既存路線にトランプ政権が回収されてくるのであれば、とりあえず、安倍晋三首相の、ギャンブルは、そこそこ上手く行ったと言えることになるのかもしれない。国内での国民を舐めるような火遊びから遠ざかるならば、安倍政権への支持率は衰えないような気がする。(安倍一強に伴う、与党議員の劣化と、官僚勢力の腐敗を是正しなければならないという国民的課題は残るのではあるが)

 

しかし、ある意味、メインシナリオ通りとはいえ、そのコアな支持層をこれほど明確に裏切ったことの政治的な反動はどのように起こってくるのだろうか。結局、トランプが、長年、有権者を騙し、裏切ってきた、共和党主流派同様、そもそもの公約の掌返しをし、トランプのアジェンダを設定してきたバノン陣営を弊履のように捨てた場合、一体、何が起こるのだろうか。

 

むしろ、トランプが既存政治の中に回収されて以降の国民の政治行動が気になって仕方がない。

 

http:// http://www.newyorker.com/news/john-cassidy/steve-bannon-is-losing-to-the-globalists

(以下要約)

 

アサド政権の化学兵器利用、北朝鮮によって繰り返されるミサイル発射、習近平の訪米等、連日新聞の一面をビッグニュースが覆ている。しかし、この政治的バブルの中で、今、最大の話題は、なぜ、スティーブ・バノンが国家安全保障会議から追い出されたかである。

 

http:// https://www.nytimes.com/2017/04/05/us/politics/national-security-council-stephen-bannon.html?_r=0

 

主流メディアの中には、マイケル・フリンに代わって、トランプの国家安全保障補佐官となったH.R.マックマスターによる組織内の大掃除とみなすものもある。

 

バノン自身は、そもそもNSCに席を置いたのは、フリンを監視するためだけだったので、追い出されたわけではないと主張している。

 

事実はそんなものじゃないはずだ。

 

ニューヨークタイムスは、バノン陣営の、最初のイニシアティブであった、入国禁止大統領令が複数の裁判所によって拒絶されるという大失敗に終わったことで、ホワイトハウス内での立場がなくなってしまったと報じている。

 

バノンはさらに大統領の経済担当大統領補佐官のゲリー・コーンとも対立している。コーン氏は、トランプの娘婿のクシュナー氏と近い。

 

クシュナーは、内々に、バノン氏が大統領の衝動を最悪の形で操ることを不安視していると、内部事情を知る者が言う。

 

ホワイトハウスのリーダーは自分だけであることを自負しているトランプ自身、バノンがマスコミで、自分を操る黒幕のように描かれるのを好まなかった。大統領のスタッフによれば、これらの報道に対して大統領が苛立ちを隠さなかったという。

 

バノン氏が政策アジェンダを設定してきたことは事実だ。しかしトランプ氏は、雑誌、深夜のトークショーツイッターでまき散らされるトランプという操り人形を操る「バノン大統領」というテーマに怒りを隠さなかった。

 

Time cover labels Bannon ‘The Great Manipulator’ | TheHill

トランプお気に入りのJared Kushnerもバノンの右派革命的言説にウンザリしており、元GSの社長のゲリー・コーンはそもそもバノンの主張に全く与していなかった。

 

トランプ大統領本人もタイム誌の2月13日付のカバーストーリー「大黒幕The Great Manipulator」というバノンの記事にとうとう我慢がならなくなったのだと。

 

バノンのNSC辞任を、個人の性格や、宮廷闘争的にのみとらえるのも事実とは違う。これは、ここ数週間、強まってきているホワイトハウスの趨勢を裏打ちしている。

 

トランプ政権のグローバル派である、クシュナーやコーンがその勢力を増し、バノンが率いるナショナリストが防戦一方となっているのである。

 

党派を問わず、ワシントンの外交筋は安堵を隠さない。ようやく通常通りの仕事が始まりそうだからである。大西洋主義、自由貿易、世界全体に対するアメリカの経済的、軍事的関与という慣れ親しんだ日常が戻ってきている。バノン氏は、これまで、これとは全く異なるビジョンを提示していた。経済ナショナリズムである。

 

反バノン陣営は、彼が、第二次世界大戦以後の国際秩序を破壊し、保護主義的、自民族中心主義の体制に変えようとしていると批判を続けてきた。曰く、米国、ロシア、そしてナショナリストがリードする欧州諸国が連合して、イスラムと戦い、力を増す中国と対決するという図柄である。

 

選挙中、政権移行中、しばしば、トランプの発言がバノン氏の方向へ向かうように思われることがあった。

 

しかし大統領就任後は、政権の動きはこれまでとは違った方向へ向かいはじめた。

 

変化の最初の兆しは2月。

 

中国が中華帝国の不可欠の一部とみなす台湾の大統領からの電話を受けるなどして、それまで、中国政府を苛立たせてきた一連の発言が一変した。

 

習近平主席との2月9日の電話会議の中で、1972年のニクソン訪中以後米政府が認めてきたOne China政策を尊重すると発言した。

 

 

www.wsj.com

娘のアラベラが中国語を学んでいる、クシュナーが重要な役割を果たしたようだ。ウォールストリートジャーナルによれば、崔天凱Cui Tiankai)駐米大使は、クシュナーの元に足繫く通っているという。その成果はこれまでのところ既に、明らかである。中国メディアも、クシュナーの重要性に注目している。

 

トランプは、NATOに対する耳障りなレトリックも抑えるようになった。1月、就任前のトランプが、ドイツの新聞に対して行ったNATOは時代遅れという発言は、トランプ政権がアメリカの孤立主義を再び目覚めさせるのではないかという不安を欧州全土に巻き起こした。

 

 

しかし、3月の初めに、ティラーソン国務長官(Rex Tillerson)は上院院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコーネル(Mitch McConnell)に対して、NATOへのモンテネグロの加入に対する、議会の批准を正式に要請した。

 

これはNATOの今後の拡大を支持するという明確な表現である。

 

数週間後、ホワイトハウスは、トランプが、メルケル独首相や他の欧州のリーダーたちとともに5月のNATOサミットへの参加することを確認した。

 

トランプのシリアへのアプローチも変化しつつあるように思われる。バノン陣営の反ユートピア的「文明の衝突」シナリオでは、シリアを過激主義イスラムに対抗する米国主導の十字軍的活動の重要な足場と捉えており、将来の米露協力の具体例となるべきものだった。

 

しかしアサド政権の化学兵器の被害を受けた子供の写真がトランプにアサド・プーチン枢軸との連携を留まらせたように思われる。水曜日の記者会見で、彼は、「シリアとアサドに対する自分の態度は極めて変わった」と発言した。

 

最も変わったのは、貿易分野である。

 

選挙運動の間中、トランプは中国に45%、メキシコに35%の関税を課するという威嚇を行った。就任初日に、彼は中国を名指しで通貨操作国と呼んだ。

 

実際には、トランプが言ったようにはならなかった。最近の動きを見ると、メキシコとの貿易戦争は開始されておらず、NAFTAへのほどほどの変更を模索しているにすぎない。トランプが「大災厄disaster」で史上最悪の貿易協定と呼んだ、あのNAFTAである。WSJの報道によると、NAFTAの条項の中で、もっとも論争を呼んでいる、争訟の処理プロセスについて、ホワイトハウスは、争点としておらず、さらには、NAFTAの交渉を外為政策や二国間貿易赤字の数値目標のような議論と切り離す方向の模様である。

 

まさにこれらの貿易関連が、バノンとコーンの対立理由の一つであった。貿易分野におけるこういった最近の動きは、コーンのみならず、同じくゴールドマンザックス出身のミニューチン財務長官(Steven Mnuchin)の考え方も反映している。

 

バノンも元ゴールドマン出身である。しかし彼は、ウォールストリートのエリート層に共通するインターナショナルで、コスモポリタンな考え方からは遠く逸脱している。

 

ホワイトハウスには、自由貿易に懐疑的な、新設の国家貿易協議会(National Trade Council)の長であるピーター・ナバロというバノンの仲間がいるにはいるが、グローバル派が経済政策を指揮しはじめているようだ。

 

金融市場は、現在の流れを以上のように結論づけている。

 

選挙後、トランプ政権の保護主義傾向と逆相関するとみなされてきたペソの価値は、急騰している。

 

唯一の謎、そして大きなサプライズの可能性に繋がるのは、やはりトランプである。

 

初めから世界に対する彼のアプローチには明らかな矛盾があった。彼のレトリックには、自国主義孤立主義保護主義を肯定する言葉が溢れていたが、彼自身は完璧なグローバル派なのである。テレビの有名人、不動産デベロッパーとしての、彼の事業は、主として世界中に自分の名前を売り込み、海外の資金を自分の米国不動産事業にひきつけることだった。海外資金の中にはその出自が疑わしいものも含まれている。

 

残る問題は、結局、どちらのトランプが勝つのかということである。ナショナリストの大衆煽動家(rabble-rouser)かグローバル資本主義の権化(Avatar)か。

 

結論を言うのは時期尚早だろう。しかしこれまでの事実を直視すると一つの方向性が見えてきており、習近平の訪米がそれを裏打ちしたかに思われる。

(以上)

 

 

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