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オランダ人は何に不満なのか Dutch discontent: wealthy but angry(FT)

2017年3月7日(火)11℃ 曇り時々晴

 

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テレビのコメンテーターが、金融市場における当面のリスク要因として米国FOMCの動向、つまりは、アメリカの利上げはどの程度まで行くのか、そして今後の欧州各国の政局に影響を与えそうな、15日に予定されているオランダの総選挙を挙げていた。そのコメンテーターは、オランダ自体の動向についてさほど懸念してはいないが、その結果がフランスに与える影響が問題であると。

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FTにオランダ総選挙での極右自由党の躍進の背景を分析する記事が載っていた。

 

恵まれているはずの、オランダ人は何に対して起こっているのか。

昔フランス語の教師が、フランスには幸福というものはない、あるのは幸福感だけだと言っていたような気がする。たしかに、幸福かどうかは、客観的に決定できるものではない。

  

幸福感は、主観的なものだというのが、この記事の主旨。

 

オランダ人はギリシア人に比べて、自らの幸せをかみしめるのではなく、金融危機以前という生々しい記憶、あるいは彼らが想像する10年前の幸福と比較して、自分の現状に不満を感じるという、私たちにも比較的わかりやすい心理的メカニズムなのだ。

 

Dutch discontent: wealthy but angry

https://www.ft.com/content/c0887142-ff5c-11e6-96f8-3700c5664d30



各種統計値から見ると、欧州各国の中でもかなり恵まれた立場にあるはずなのに、オランダ人は何に不満をもっているのか。

 

 

恵まれたオランダ人の不平の受け皿となり、拡声器となったのがGeert Wildersだ。

 

世論調査でリードする、一匹狼の反イスラムのポピュリスト、Geert Wildersにとっては現代産業社会の無秩序に悩むオランダを想像するのは簡単なのだ。不平等、不均等な人生のチャンス、中間層に対して加えられる醜悪なプレッシャーなど、問題には事欠かない。』

 

労働年齢人口の雇用率は約82%。(ドイツ68%、フランス67%)

 

25歳以下のオランダの若者の3人に2人は職についている。

 

欧州の基準で見ても、オランダ人は裕福である。一人当たり国民所得は約5万3000ドルで、スペイン、イタリアよりも38%、イギリスよりも21%高い。

 

国民はかなり平等であり、貿易収支も安定している。

 

 

 

たしかに政治動向を読む上では、平均値というよりは統計値のトレンド、方向性がより重要だ。その意味では、数値の中には悪化の兆しもあるのは事実だ。

 

雇用の質は悪化しはじめている。2008年の金融危機以降、非正規雇用の比率が高まっている。オランダでは4人に1人が非正規雇用であり、これはOECD諸国の平均の2倍の数字であり、金融危機以前に比べると4%高くなっている。

 

25歳以下の半数以上が非正規雇用だ。彼らが満足しているとは思えない。景気状況も芳しくはない。2016年後半に若干好転したが、その前の8年間は低迷を続けていた。さらに改善したといっても国民所得は2015年の金融危機以前の水準に戻ったに過ぎない。

 

『「うまくいっているかどうかというのは常に相対比較なのである。オランダ国民は、自分たちをギリシア国民と比べはしない。彼らは10年前のオランダ国民の生活水準と比較するのである。さらに悪いことには、彼らは、10年前はこうだったであろうと自分たちが考えている生活水準と比較するのである。」ジョージア大学のCas Mudde教授は言う。

 

オランダの問題の一つは中小企業の資金調達が困難なことだ。中小企業の約12%がローンが借りられない。これはユーロ圏内で最高の水準で、借入申請の拒絶率はギリシア以上なのだ。

 

3大銀行への集中と、中小向けローンの高金利が借入の困難の原因である。

 

最後に地域格差がある。オランダの失業率は1月に5.3%に低下した。これはOECD諸国の中でも低い水準だが、これも金融危機以前よりは高いままである。

 

地域毎に見ると、違いが見えてくる。例えば、北部国境地域のGroningenの失業率は9%以上である。この地域はウィルダース氏への支持率が高い。

 

ただ失業率とウィルダース氏の支持率が単純に相関していないところが、オランダ政治のややこしさである。もっとも失業率が低い、Zeeland, Limburgのような地域でもウィルダース氏が優勢なのだ。(以上)

 

 

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