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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

ニューヨークタイムスは反トランプで株価上昇?(トランプのアメリカ)

2017年2月27日(月)10℃ 曇時々晴

 

112.184 ¥/$

 

獰猛なポピュリスト集団、トランプ政権と、米国メディアとの戦いは激化している。

 

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しかしながら、その表面上の確執の激しさによって、政権とメディアというものの本質を見失ってはいけない。

 

政権とメディアはどれだけ対立していようと、権力システムの一部として欠かすことのできない一対なのである。

 

公共の場におけるトランプのマスコミに対する罵倒や、記者会見からの締め出しなどの表面的な混乱の下で、その不思議な共棲は深まっている。

 

マスコミもビジネスである。しかもアメリカの場合は、新聞メディアも株式を上場し、常に市場からの評価にさらされている。

 

ニューヨークタイムスの時価総額は24億ドル(約2700億円)である。

ちなみにフェイスブック時価総額は3900億ドル強だ。

 

株式市場の従来型マスメディアに対する評価は厳しい。

 

直近で、個人的に新聞の宅配を止めて、完全なデジタルオンリーの読者になったことや、若い世代の紙の新聞の購読度合いを見ていても、この市場の見方に概ねは賛成する。

 

単純に言えば、ニューヨークタイムスを購読することへの自分の長期的忠誠度はそれなりに予測できても、株主になれるかどうかは全く別の問題だということだ。

 

 

とはいえ、いまだにニューヨークタイムスの株価は80倍というたかいPERで取引されている。

 

紙媒体の終焉は見えてきたのかもしれないが、紙媒体の終焉がニュースメディアの終焉を必ずしも意味するわけではない。

 

当のニューヨークタイムスも、古典的な紙媒体の新聞社からグローバルなメディア企業へと静かに変身を遂げている。この移行に成功すれば、営利企業としてのタイムスにも未来はあると考える投資家も存在するのだ。そして、読者である自分は、その未来に期待してやまないのである。

 

 

www.fool.com

 

メディア企業の投資を考える場合には、3つの尺度があると言われる。

 

購読者、デジタル収入の比率、デジタル収入の成長率。

 

ニューヨークタイムスのデジタルのみ購読者数は155万7000人。デジタル収入の比率は34.2%、デジタル収入の成長率は15%。

 

環境の厳しさはあるとして、やはり、最後に、読者が重視するのは、そのメディアを通じて得られる情報、分析のクオリティである。その意味で、タイムスのブランドはある意味圧倒的である。さらにデジタル化戦略を追及するために、T Brand Studioという内部代理店の構築及び、外部人気サイトの買収などを行っているらしい。

 

タイムスは、読者一人一人の住んでいる地域、関心、過去の既読記事の履歴などに基づいて、パーソナルなメディア環境を提供することを最終目的にしている。これに成功すれば、当然、デジタル広告主にとっての媒体価値を上げることができる。

 

市場は海外事業と紙媒体事業の可能性を引き続き無視しているという。長期投資の観点からは、それを以て、割安ととらえる者もいる。しかし引き続き紙媒体事業が生み出すキャッシュフローの比率は大きい。減収事業だとしても、それが生み出すキャッシュフローで新しいデジタル事業構築の投資資金を生み出すことが可能なのは大きい。そして紙媒体で培われたコンテンツ力が、デジタル分野での購読者のロイヤルティを獲得する上で最強の競争優位性に繋がるのも事実だ。

 

しかしこの会社の未来であるデジタル事業における広告収入をめぐる競争は熾烈である。紙媒体の購読者の長期的な慣性的ロイヤルティには当面依拠できるとしても、広告主は別だ。個人の読者よりはるかに速く、広告主たちは紙媒体の広告価値を見限っているという。さらにデジタル分野での広告競争にはフェイスブック時価総額 3916億ドル)アマゾン(時価総額4000億ドル)、アルファベット(時価総額 5773億ドル)の巨人たちがひしめいている。

 

広告主がニューヨークタイムスが個人消費者にアクセスするための意味のある場ではないと見限られることがこの会社の最大のリスクになるだろう。

 

ニューヨークタイムスにとっての個人は二つの顔を持っている。読者と、消費者である。

お金を払ってでもタイムスの記事を読みたいと思う人が今後増えていくのか。この点に対しては、個人的に強気である。

 

若者層におけるトランプ不支持層の広がりは、独立した、信頼できるメディアを求める動きを加速するはずだ。さらにまだ手がついてないアメリカ以外の海外事業の中にも大きな可能性がある。米国の動きを注視することへのグローバルなニーズが高まっていくからである。

 

しかし広告媒体としての部分については、不確定の部分が大きい。独立したコンテンツの提供と、広告の同居はこれからも常にメディア事業に緊張をもたらし続けることだろう。

 

コンテンツのクオリティと広告の訴求性というもののニューヨークタイムスなりのバランスを見つけられるかどうかが、このブランドの寿命を決めていくことになるのだろう。

 

トランプの敵対的姿勢が作りだす、反トランプという機運は、間違いなく、ビジネスとしてのニューヨークタイムスにとってはポジティブの影響を生み出していくだろう。彼らが開拓しきれていない、若いデジタル読者層に対する絶好のチャンスが訪れているはずだ。

 

トランプがロールモデルとするニクソンを倒したニューヨークタイムスとの一周回った復讐戦の行方から目が離せない。