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司法を揺るがすトランプという脅威(Real Fear of Trump NYT) (トランプのアメリカ)

2017年2月8日(水)11℃晴れのち曇り

 

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あと二日で、安倍首相はトランプとの首脳会談に臨む。政府関係者から朝貢外交だとかいう、自嘲めいた発言が大手新聞を通じてリークされてくる。当然、こんな言葉を真に受けるわけにもいかない。トランプが破壊しかけているアメリカのエスタブリッシュメント同様、日本の政治をコントロールしてきた日本のエスタブリッシュメントが存在する。財務官僚、外務官僚たちと官邸の暗闘は、自民党政権の安倍の回りの政治家にきわめて近い、TBSの山口敬之の「総理」「暗闘」に詳しい。

 

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ここまでの安倍晋三の動きは、現在の動乱という環境の中では、さほどの選択肢のない中での、ギリギリの綱渡りだと思っている。省益を正論めいて恥ずかしげもなく押し立てる官僚というアニマルの関与は、おそらく、この微妙な政治過程の中でプラスに働かない可能性が高いという点では、安倍政権に与するからだ。

 

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トランプというよりは、トランプに投票した人々によって、その欺瞞を暴露されたニューヨークタイムスに代表される大手マスコミだ。しかしトランプが大統領候補から大統領に変わったことによって、米国民の側も、再び、その価値というものを再認識しなければならない。それを反映してか、ニューヨークタイムスのデジタル版の加入者数が増加したというニュースがあった。

 

とりわけ、トランプが三権分立の根幹を揺るがす可能性のある場合、炭鉱の中のカナリアとして最大限鳴きまくるべきなのであり、それに国民も、同盟国の国民である我々も耳を傾けるべきなのだと思う。

 

結論的に言えば、同盟国の外交としては、憲政の根幹である司法までも威嚇するようになったトランプ政権のそもそもの安定性を疑うというシナリオのウェイトを少しあげるべき時なのではないのだろうか。

 

 

President Trump’s Real Fear: The Courts

司法を揺るがすトランプという脅威

https://www.nytimes.com/2017/02/06/opinion/president-trumps-real-fear-the-courts.html?ref=todayspaper

トランプ大統領は欲しいものが手に入らない時は、非難することができるものを探す傾向がある。不正を行う投票調査員(pollster)、投票者、嘘をつくジャーナリスト等々。彼に疑問を呈するものは皆彼の敵になる。

 

過去数日で、連邦政府の全部門を彼の敵になった。金曜日に、シアトルの連邦判事、James Robartはトランプ氏のイスラム7か国からの難民と移民の入国を禁止する大統領令(executive order)を阻止した。翌日、大統領はジョージWブッシュ大統領が任命したRobart判事を、自分のツイッターの中で、「馬鹿げた」(ridiculous)判決を行った「いわゆる判事」 (“a-so-called judge”)として嘲った。

 

これだけでも十分に最悪なのに、日曜日には、トランプ氏の嘲笑はさらに寒気がするようなものになった。

 

「一人の判事が我々の国をこのような危険にさらすとはただただ信じられない。何かが起こったならば彼と裁判システムを非難することになるだろう。人々がこの国に殺到する。最悪だ。」

 

“Just cannot believe a judge would put our country in such peril.If something happens blame him and court system. People pouring in. Bad!”

 

とトランプ大統領はツイートした。

 

どこからはじめたらいいのだろう。

 

彼が最高裁判事の使命を公表した同じ週に、米国の大統領が一人の判事だけではなく、司法全体を、テロリストによるアメリカ国民の殺人教唆として全面的に非難したのである。司法は、彼の権力へのチェック機能としてもっとも頼りになる制度である。トランプ氏が将来の攻撃に対して邪魔な裁判所を非難する方法を既に検討しているのではないかと疑うに足る状況である。

 

実際、トランプ氏が移民関連の大統領令を発令した直後に、テロ攻撃が起こった。

 

政府発表によれば、ライフルで武装した白人至上主義者が、ケベックシティのモスクに乱入して、礼拝中だった6人のムスリムを虐殺したのである。トランプ氏はこの虐殺については一切口を噤んでいる。

 

これに対して、数日後、パリの軍事警察を、ナイフをもったエジプト人が攻撃し、一人の兵士が負傷したのに対しては、即座にツイッターで「賢くなれ」( “Get Smart”) とつぶやいた。

 

 

トランプ氏とそのトップアドバイザーであるステーブ・バノンが棲んでいる暗い世界では、賢くなれということの意味は、20年以上前に米国に対して行った一つの重大な攻撃に対して責任があったとはいえない諸国からの移民を締め出すことなのである。

 

複数の国家安全保障の専門官によれば、この大統領令は、むしろ、アメリカ国民に対するテロの脅威を増すものなのである。トランプ氏の主張と正反対に、人々はアメリカに殺到しているわけでもない。難民や他の移民は既にほぼ2年に及ぶ、十分な多層的な審査プロセスを経てきているのである。

 

しかしトランプ氏の威嚇は恐怖に基づいているのであり、合理性に基づくものではない。合理性は裁判所の領域である。

 

Robart判事はトランプ氏が中傷した最初の裁判官ではない。昨年の大統領選の期間中に、彼は自分の「いわゆる」トランプ大学(so-called Trump University)に対する詐欺訴訟を担当した連邦判事に対して人種偏見に基づく攻撃を行った。

 

トランプ氏曰く、Gonzalo Curiel判事は、中立ではないと。理由は、「彼は、たまたまと我々は思うが、メキシコ人なのである。

 

He “happens to be, we believe, Mexican”

 

そしてトランプ氏はメキシコ国境に壁を築き、数百万人のメキシコ人違法移民を国外追放することを公約にしていた。(Curiel判事はインディア州生まれであり、トランプ氏は11月にこの訴訟を2500万ドルで和解した。)

 

大統領候補の発言としては,これは単に言語道断なものにすぎない。しかしいったんこれが大統領の口から発せられるならばこれは「法の支配」(the rule of law)に対する脅迫なのである。裁判官たちは、今や、トランプに異議を申し立てるならば、彼及び、数百万に及ぶツイッターのフォロワーの怒りに触れることを想定するようになっている。トランプ氏の司法(the judiciary)に対する繰り返される攻撃はニュースメディアを恫喝し、破壊する彼の努力と議会がトランプの責任を問うよりも自分の立場を中立にしておこうとする議会の動きを前提にすれば、さらに一層、脅威となるのである。

 

現在のところ、新政権はルールに従って、Robart判事の判決を連邦控訴審(高裁)に控訴した。しかし明日、トランプ氏は判決への怒りあるいは、一人の裁判官に対するいやがらせ(spite)として裁判所命令に従う必要はないと判断する可能性もあるのだ。その時、誰が彼を止めることができるのか。(以上)