21世紀ラジオ (Radio@21)

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政治の時間:沖縄戦とは何か

沖縄ということを、自分としてどう考えればいいのか。

 

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ユンカーマンのドキュメンタリーが語り掛けているメッセージで自分の気持ちのど真ん中に伝わってきたことがある。

 

 


 国家から逃れることはできないが、国家というのは決して、良いものではないということだ。

 

そして官僚制、そして軍隊というものが、決して国民を守ることを一義に置いていないことだ。国家という想像の共同体を利用して、官僚制、軍隊は自己保存の本能に基づいて動く生き物であるということ。

 

日本が沖縄を強制的に自国の版図の中に取り込んだという歴史から生じる差別意識が沖縄戦における共死という醜悪な戦術に繋がっていたという点はあるのだろう。

 

しかし、自己保存のために、沖縄の次に、九州という風に、周縁を切り捨ててでも盲目的に生き延びようとする自己保存能力の恐ろしさが日本の軍国主義の文化の中には厳然として存在するということを僕たちは、再び認識しなければならない。丸山真男が抉り出した日本の軍隊の過酷さを産み出した僕たちの社会が持つ嫌らしさは決して克服されていない。そのことの恐ろしさは他人事ではないのだ。

 

沖縄で国家、軍隊が起こした醜悪さを直視することからしか、僕たちは自分たちの生活や平穏を守ることはできないのだ。

 

大田昌秀・佐藤優著の「徹底討論 沖縄の未来」(芙蓉書房出版社)が沖縄戦と日本軍の醜悪さを語りつくしている。

 

 

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大田昌秀

「結局、沖縄戦の最大の教訓は、軍事力では国民の生命、財産を守ることは到底できないという一語に尽きるように思われます。さらにいえば、戦争の過程で沖縄は、日本本土防衛の防波堤の役割を担わされ、多くの人命を犠牲にしただけではありません。戦後は戦後で、沖縄は、連合国軍が本土を非軍事化し、民主化するための、いわば一種の担保措置として、軍事基地化したのです。そして、戦争で致命的打撃を被った沖縄住民は、未だ戦傷も癒えぬまま、異民族の軍政下に27年もの間、放置されました。このような歴史的事実は、日本国憲法の保障する地方自治どころか、中央政府の辺境県に対する明白な、差別的、不当な処遇というよりありません。しかも、復帰後30年以上も経った現在でも、沖縄の圧倒的多数の県民が、戦争と結び付く軍事基地を否定し、切実に平和を希求しているのもかかわらず、日本政府はなんら顧慮することもなく、依然として県民に危険な基地との同居を強いている実情ではありませんか。このような事態は、一般日本国民がいまだ何ほども沖縄戦の教訓を汲み取っていないことを示すと共に、日本の民主化が極めて未熟なままだということを端的に教えています。」

 

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日本の官僚主義の内部者であった佐藤優軍国主義における権力の醜悪さについての以下の言葉は、恐ろしいほどのアクチャリティをもって今の僕たちに迫ってくる。

 

佐藤優

「つまり、いつの世でもそうですが、一部の例外を除き、己れの生存をはかるためにいとも安易に他人を犠牲にして顧みないのが、戦時における権力者たちです。このような態様は、むろん沖縄戦だけに限られるものではなく、どの戦場においても見られる現象といって差支えありません。」

 

戦場において良い兵士、悪い兵士がいるのは当然として、そもそもの方針が組織の自己保存であるとするならば、末端の兵士ではなく、将校級の中にその醜悪さが突出して現れることになった。

 

 

「戦争の過程で守備軍将兵は、住民に対しては、「絶対に捕虜になるな」「一人十殺を実行せよ」などと叱咤激励しながら、肝心の部隊指揮官や部隊長らは、身に危険が迫ると、「生きて虜囚の辱しめを受けず」という戦陣訓の規定を無視して、ちゃっかりと捕虜になって生き延びる者も少なくなかったのです。それに反して、一般住民はといえば、軍部の偽りに満ちた宣伝を真に受け、捕虜になるのを恐れるあまり、慶良間諸島における「集団自決」が例証する通り、愛する者同士が集団での死を強制された人たちもいれば、水や食糧もなく絶望の果て、自らの手で命を絶つ者も相次いだのです。」

 

世の中が、戦時期の匂いを増す中で、僕たちは、自らの身を守るために、歴史を見つめなおす必要がある。沖縄戦、そして沖縄から目を背けることは、自分たちの未来を失うことなのだ。

 

人々にとって本当の敵は自国の軍隊であるという歴史の中の、不都合な真実に目を向けることが生き延びていくためには必須なのだ。