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Podcastの時間:SlateのPodcastネットワーク

アメリカのポッドキャストの世界が面白いのは、規模は決して大きいとは言えないが、しっかりとしたプロの業界が存在しているということのような気がする。既に存在しているというよりは、こういった新しい業界が生まれていく上での、しっかりとしたロジック、先例がいい意味で存在し、それを、緻密に踏襲しているというところだ。

 

アメリカのポッドキャストを調べる上で、とても役に立っているものがある。

 

Nick Quahが毎週送ってくるポッドキャスト業界情報のニュースレターHotPodである。他の分野で存在するような業界情報ソースが出来上がっていない中、ポッドキャスト業界での新しい動きを毎週伝える彼のニュースレターの価値は大きい。ここで新しいポッドキャストの情報などが得られる。

 

 

今週の情報の中で、目についたのは、SlateグループのポッドキャストネットワークのPanoplyのことで、そこで紹介されていたMashableの記事が面白かった。ポッドキャストネットワークというものがどのように形成されていくかに興味があるのでためになる。(調べれば調べるほど、日本とのギャップが見えてくる!)

 

Wikipediaによれば、

Slate (magazine) - Wikipedia, the free encyclopedia

 

Slateは1996年に元New Republicの編集者だったMichale Kinsleyが設立したオンラインマガジン。当初はMSNの一部としてマイクロソフトが所有。2004年12月21日、ワシントンポストが買収。2008年6月4日からウェブ上のみで発表される雑誌として、Graham Holdings Complanyによって設立されたThe Slate Groupによって運営されている。

 

 

http://By Jason AbbruzzeseFeb 25, 2015

 

SlateのAndy Bowersはポッドキャストの分野で10年の経験がある。単発でポッドキャストの傑作作りを行う以上の、野心的なプロジェクトをすすめる可能性を見つけるために10年かかったともいえる。

 

そんな彼の前に、シリアルという超人気ポッドキャストが登場した。

「去年の夏に、この市場が拡大する準備が整っていると本当に感じたのは去年の夏だった。そして偶然、シリアルが登場し、急に物事がやりやすくなった。」

とMashableのインタビューに答えている。

 

Slateのポッドキャストの責任者であるBowersは、10年間に及ぶインフラ、業界知識の蓄積を活かして新しいビジネスを作りたいと常々感じていた。

 

シリアル登場後の興奮の中で、Slateはまさにその新しいことを始めようとしている。

具体的にはPanoplyだ。

これはポッドキャスト制作を考えているパートナーに対して、Slateのフレームワークの利用を可能にするプラットフォームだ。このプログラムを使うと、3つのポッドキャストサービスの中からアラカルトでの選択が可能になる。

 

番組制作、リスナー開発、配信/販売である。

このプラットフォームを利用している事業パートナーは、ニューヨークタイムスマガジン、ハフィングトンポスト、ポピュラーサイエンス、ニューヨークマガジンなど。

 

このプラットフォームは誰もが利用できるわけではない。

 

Slateが有望と考えるパートナーのみに利用可能なのだ。

 

普通の人は参加できない。しかし個人はダメということではない。Bowersによれば何人かの個人とも契約を締結した。

作家のGretchen Rubinは、幸福についてのポッドキャスト、作家のBaratunde Thurstonはアメリカにおける人種についてのポッドキャストの運営のためにSlateのプラットフォームを使っている。

 

様々なポッドキャストを維持するのに必要な規模のリスナー層を構築しつつあるとBowersは言う。

 

Panoplyのビジネスモデルが成功するためには、すべてのポッドキャストがシリアルのような大ヒットをするという前提が必要なわけではない。

 

リスナー基盤の拡大とデジタル市場の成熟化によってビジネスの経済モデルが変化してきている。

 

これまでは、ポッドキャスト広告主は、主としてダイレクトレスポンス型(無料のサービスによってEメールアドレスを得るなど、リスナーからの返信を求めるやり方)だった。

 

これだけが限定的な市場において一定数のクライアントを維持するためにはこの方法しかなかった。こういった方法の前提となる技術環境、リスナー行動の変化が、スマートフォン経由でのリスナー数の拡大を後押ししている。

 

Slateのポッドキャストの広告主の中にはGE, Acura、Prudentialなどの名前が並んでいる。当然、このクラスの顧客名は、潤沢なブランディング用予算を意味している。

 

「地上波ラジオからの収入のシフトだけではなくモバイル予算からの流入も見えてきている。Podcastメッセージは親密で、より効果的である。ユーザー調査によれば、ポッドキャストリスナーの3分の2がモバイル端末で番組を聴いていることも判明している。ポッドキャストはモバイル主体のテクノロジーなのである。」

 

Panoplyは、ポッドキャストネットワーク第一号というわけではない。実際、このモデルに対する関心が突然高まっている。

 

ポッドキャストネットワークの起業の様子をドキュメンタリー番組にしたポッドキャストが現れてきているのだ。

 

Startupだ。

 

Public Radio Exchangeは最近、キックスターターが支援するネットワーク、Radiotopiaをローンチした。

 

Public Radio InternationalはSoundWorksを擁している。

 

Earwolfはコメディ専門。

 

TwiTはテクノロジー専門。

 

この分野で、先行者というわけではないが、Slateには奥の手がある。

 

同社はポッドキャスト制作の分野では既にトッププレイヤーの一つであり、熱心な聴取者を集めており、広告収入も増加してきている。

 

Slate自身の成功している番組の中には、Political Gabfest, Culture Gabfestや

スポーツショーのHang UpやListenなどがある。

 

これらのプログラムは現在Panoplyに属している。

 

Panoplyプロジェクトは、The Slate Group全体にとっても重要なステップとなった。

 

ニューヨークタイムスマガジンの編集長であるJake Silversteinはポッドキャスティングを始める事業パートナーとしてはSlateが最適と考えた1社である。

 

雑誌のコラムの一つから出来上がったポッドキャスト、The Ethicists倫理学者を既にローンチしている。

 

Silverstein曰く、

「シリアルに関して皆が騒ぎ始めるかなり前から、Slateは我々がやりたいような種類のポッドキャストの市場を支配してきた。」

 

こういった新規参入者にとって、Bowersは頼りになるパートナーで、ポッドキャスティング界のゴッドファーザーと呼ぶ人もいるようだ。

 

Silverstienはこう続ける。

「我々は、ポッドキャスティング分野での全くの新参者だ。リスナーとしては長年の経験はあるが、製作となるとずぶの素人だ。とりあえずはAndy Bowersのプロの運転に任してみたというところだ。」(記事以上)