映画の時間:イニシエーション・ラブ
セッションを観にいった。
上映前に、5月26日公開の堤幸彦監督の「イニシエーション・ラブ」の宣伝が流れた。
原作は乾くるみの「イニシエーション・ラブ」。
最後の二行で、恋愛小説が大どんでん返しという帯の宣伝はずっと気になっていたが、読もうというほどのモメンタムはなかった。
この宣伝の影響と、ゴールデンウィークという気楽さもあってか、帰りに文庫を買った。
9割、学生時代に出会った二人の男女の恋愛とその変化が語られる。
確かに、最後の最後で、この物語の構造の謎が一行で明かされる。
必ず二度読みたくなるという煽りもあってか、かなり精密に読んでいったつもりだったが、最後の仕掛けには気づかなかった。
もっと言えば、明かされた謎も、頭の中で一気に明らかになるというよりは、少しの間、それをかみしめる時間が必要だった。
しかし、僕の関心は、この小説にはない。むしろこの小説の謎がどのように映像的な謎に昇華するのかという期待である。
原作を読んだ後でも、この映画を観に行きたいと思った。
原作と脚本のインタープレイ。それもかなりアクロバティックなものにならざるを得ない。そこが最大のドラマだ。
映画館の中で、僕は、それが成功なのか大失敗なのかを目撃することになる。これ以上にスリリングな映画鑑賞体験もないはずだ。