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映画の時間:セッション:天才を目指す狂気、育てる狂気

新宿コマの跡地にできた馬鹿でかいシネコンに初めて行った。

昔のままの歌舞伎町の中に、突如タイムスリップして突き刺さったような建物だった。

 

目的は「セッション」という映画。(原題 Whiplash:映画にも登場する曲名で、鞭の嵐って感じか)

狂気をめぐる映画だ。

 

バディ・リッチチャーリー・パーカーのような天才への道を目指そうとするドラマーの青年と、天才になり切れず、天才を育てることにかけた指導者の話である。

良くあるスポーツドラマの結構である。

 

舞台はニューヨークで、ジュリアード音楽院をモデルにした音楽学校。

 

自分の求めるテンポを求めて、徹底してバンドメンバーを痛めつけるサディスティックな指導者。バンドのレギュラーを目指して、まめが潰れ、血だらけの手を、氷の入った水で冷やしながら、練習を続ける主人公。汗が飛び散り、指導者の怒号が執拗に追い詰める。

 

目指すのは、大会での優勝。

 

一味違うのが、戦う相手は、ライバル学校でも、レギュラーを目指す仲間でもなく、まさに、大会をともに目指す、指導者だったことである。

 

指導者フレッチャー役のJ.K.シモンズの悪役ぶりが半端なくいい。オスカーの助演男優賞を獲得した怪演。

常軌を逸したフレッチャーの厳しい指導のせいで、青年は挫折する。彼の指導のせいで自殺した別の学生の件で、青年はフレッチャーの責任を問う親の要請で、証言をし、その結果、フレッチャーは教壇を追われる。

その後、偶然、出会った二人に、再び同じ舞台に立つ機会が生じる。恩讐を超えたクライマックス?

とはいかないのが、サンダンス映画祭でグランプリを受賞し、オスカー候補にまで成り上がったこの作品。

実は、これはフレッチャーが青年に復讐するために仕掛けた巧妙な罠だった。そして、本当の戦いが始まり、その先に二人が見た境地は?

僕も、どちらかといえば、ジャズファンで、新宿や四谷のジャズ喫茶には入り浸った方だ。ただ、この映画のクライマックスで繰り広げられるド派手なドラムソロというよりは、ビル・エバンスやリー・コーニッツ好きなので、音楽的にはあまり趣味じゃない。

ただスポーツ映画の結構を採るジャズ映画としては、やはり、ドラムという肉体性の極地が映像的に必要だったのだろう。

いずれにせよ、最初から最後まで、観客の関心を逃すことのない映画作り。

1985年生まれこれが2作目という若手監督。見事な出来栄えだった。