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政治の時間:この祖父にしてこの孫あり

 

安倍訪米は異例続きだった。

滞在日数も長かったし、大統領との共同会見で、現状の日本憲法に抵触する可能性が大である軍事協定について日本の首相は高らかに、宣言し、TPPに関しては、その先兵となって、日本の農業改革に対処すると上下院両院合同会議という象徴的な場所で言い切った。

 

異例さのハイライトが、議会演説である。海外の元首で最初に米議会演説を行ったのはチャーチルだという。

 

その後も、何か、大きな政治的イベントがある際に、海外のリーダーが議会演説を行っている。

 

インターナショナルヘラルドトリビューンの記者として日本に駐在した経験のある

Patrick SmithがSalonに安倍訪米の真の意味というエッセイを掲載している。

 

http://www.salon.com/2015/04/30/the_real_story_behind_shinzo_abes_visit_china_tpp_and_what_the_media_wont_tell_you_about_this_state_visit/

 

岸と安倍という二人の首相が50年を隔てて、日本国民の民主的総意を押しつぶし、それを、冷戦という論理で二度までも、誤った方向性をサポートしてきた米国政府に対して冷徹な批判を行っている。

 

祖父と孫が驚くほど類似した環境で同じような役割を果たしている。

 

安倍首相の祖父の岸伸介は、1960年の日米安全保障条約の改定を、民意に背いて、単独で締結し、その後、強行採決という民主プロセスを度外視するやり方でむりやり国会を通した。それが戦後もっとも革命状況に近づいた大規模抗議行動を引き起こした。

 

当時の岸も米国政府によって歓迎され、ヤンキースの開幕戦で始球式を行った。

 

その孫は、同じく、良くも悪くも国民の大半が心理的結びつきを強く持っている平和主義憲法に反する防衛協定を単独で締結している。冷戦パートIIとでもいうような、時代遅れのロジックのもと、アメリカは日本の民主的プロセスやメディアの自由な意見の発露を抑圧する安倍のやり方をスタンディングオベーションで賞賛した。

 

米国のアジアシフトは、アジアにこの冷戦パートIIのロジックを持ち込もうとする考え方だ。

安倍が賞賛されたのは、彼がアメリカが最も求めてやまないものを与えたからだという。

すなわち、米国および米国の同盟国に脅威が生じた場所に日本がその軍事力を展開することを米国は望んでいるのだ。そして、それを安倍は高らかに宣言し、議会はスタンディングオベーションで称えたのだと。

必ずしも読みやすいとは言えないこのエッセイを簡単に要約すべきではないだろう。しかし、岸と安倍という二人の血のつながった首相が、米国という権威を傘に、国民に不人気な政策を強行するために訪米したという日本の歴史の悲劇を鋭く暴き出している。

その見方に賛成するにしても反対するにしても、無視のできない意見だ。

 

再度じっくりと読み直してみたい。