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Redditの歴史 最終回;シリコンバレーの宇宙人

要約というには、少々長々とMashableの記事のことを書いてきた。

それには理由がある。Redditという光と影のあるウェブサイトが、今、メディア全体で起こっている新しい動きの一つの鍵を握っているような気がしたからだ。

 

ポッドキャストの世界で、シリアルブームを巻きおこしたReddit.

 

まさにインターネットであるコミュニティのパワーを代表している場所だ。

光と影があるからそこにエネルギーが生まれる。

 

リニアな単純志向ではとらえきれないインターネットの未来を考えるうえで、多くの示唆があった。これからも、目の離せない場所だ。

 

mashable.com 

 

 

 

 

 

児ポルノ問題、Anderson Cooperからの批判、大規模調達など次から次へ重い課題を一人処理しなければならないYishan Wongは、ついに、オフィス移転に対する周囲からの反対という表面的には、軽い問題をきっかけに、突然辞任することになった。

 

その予測不能さに驚く暇もなく、YC CombinatorのSam Altmanが、後任のCEOを決め、創業者の一人であるAlexisを会長として招聘したのは以前に説明した通りだ。

 

 

2014年11月に会長としてサンフランシスコオフィスに戻ったAlexisが最初にしたのは、現場チームへの自己紹介だった。

 

彼は、新しいCEOのEllen Paoを含むすべてのメンバーの仕事ぶりに最大の感謝を行った。

 

今では31歳になったAlexis。Redditで働いた年数よりも辞めてからの年数の方が長くなっていた。

 

Redditを辞めた後、彼は、世界を旅し、スタートアップ投資を行い、起業家のメンターとなり、回想録を出版し、SOPAやネット中立性を否定する新しい法案に反対するなど活発な活動を行ってきた。

 

しかし、心がRedditから完全に離れていたわけではなかった。

 

自分のブログや本の中で、頻繁にRedditについて触れ、インタビューのたびに、自分とRedditの関わり合いについて語っていた。

 

2011年9月にRedditが独立した時に取締役に就任した。

 

RedditがAlexisを必要としたように、AlexisにとってもRedditがかけがえない存在だったのだ。フルタイムでの復帰というのは双方にとって重要なことだった。

 

Yishanの突然の辞任の後、Redditの取締役会から復帰の打診があった。父と恋人に相談した。しかし気持ちは変わらなかった。Redditのおかげで今の自分がある。とすれば戻るならば今しかない。

 

Redditの内部の人間は皆、彼の帰還を歓迎した。

従業員の中には、創業者だけが社員のモラール士気)を高めるための権威を持つ、これによって新機能、新基準の承認、推進など難しい決定が可能になるのだ考えるものも多い。

 

とはいえ、今のRedditは、Alexisがいたころよりもはるかに巨大でコントロールしにくくなっている。創業者の権威をもってしても、このミッションは困難だと危ぶむ人々もいた。

 

 

就任後、AlexisがRedditの方向性として描いたビジョンは、皮肉にもモバイルの強化だった。

 

そもそも10年前にSteveとAlexisが作りたかったのは、モバイルアプリであり、Y Combinatorのせいでそれをあきらめなければならなかったのだから。

 

調達した5000万ドルを使って、コンテンツをみつけやすくする機能や積極的な戦略的買収を行い、エンジニアやコミュニティマネジャーの積極採用を行うということも彼のビジョンの中の一部だった。

 

戦略的買収の具体例としては10月に行った第三者アプリのAlien Blueの買収がある。

 

しかしユーザーの年齢構成の偏りやテーマの特殊性など、Redditをニッチサービスにとどめている特性についてどう対応するかという大きな問題は残っている。

 

就任後、Alexisがあえて語らないポイントがある。

 

収益化(Monetization)だ。

 

ギフト交換や最近ローンチしたクラウドファンでイングプラットフォームがより多くの収益フローを生み出すという見方もある。しかし、もっとも重要な広告収入をどれほど増加させることができるのかについてはいまだ疑問符がつく。

 

Redditは他のソーシャルプラットフォームと違って、ターゲット広告用のスペース、フォーマット、ツールを準備していない。準備したところで、性格がきついコアユーザーたちがどう反応するかも大きなハードルだ。

 

 

 

Redditのユーザーは、嘘やたわごと(Bullshit)を見抜く力鋭いし、Redditはコメントに介入しない、ユーザーたちの逆鱗に触れた広告を大炎上し、その様子はずっとインターネット上に晒され続ける可能性があることを懸念する専門家もいる。

 

Redditのビジネスモデルは、一味違ったものが不可欠だろう。モバイル広告を強化し、ターゲットに対応した広告を超えるフォーマットの創造が必要になるだろうと専門家は続ける。

 

消費者を取り込みたい企業に対して、今後ウェブ上でクチコミで広がる可能性があるストーリーやトピックを発見するための有料プラットフォームのような仕組みである。

 

Alexisとそのチームが悩んでいる一番面倒な問題は、ユーザーの一番攻撃的なコンテンツをどうするかだ。Alexisはこれに対して、満足のいく回答を与えられていない。とにかく問題が起こったときにベストを尽くすのみと発言しているだけだ。

 

脅迫や攻撃からコミュニティを守るためのコミュニティ運営方針、ソフトウェアの開発なども課題として挙がっている。Alexisはオンライン、オフライン問わず、安全なコミュニティ運営の経験豊富な外部者も入れたラウンドテーブルを開催しようとしている。

 

Alexisは盟友のSteveにも就任前に相談した。

 

Steveは2009年にRedditwo辞めたあと、バージニアに戻り、結婚をし、一時的な引退生活を楽しんだ。しかしすぐに、人生の目的の喪失感にとらわれ、新しく動き始めることになった。

 

翌年、Redditのオフィスの近くで、旅行関連のスタートアップのHipmunkを起業した。

この新しい会社にはChrisなど元のRedditのスタッフが複数加わっている。

 

Redditよりは有名じゃないが、儲かってるはずだとSteveは笑う。

 

CTOへの就任打診に対しては、Hipmunkへのコミットメントを理由に断った。

 

しかしその後のインタビューでは可能性のあることをほのめかしていた。

 

 

 

Alexisは、創業時の価値を語る大きな声の存在の必要性を感じた。そしてそれが自分の役割だということを自覚している。Reddit上で自分の復帰について積極的に発言するようになった。ここ数年、Redditの経営トップがサイト上でこれほど活発に発言することはなかった。

 

Redditの経営が改善する有望な兆しのようだ。ただYishanが抱えていた大きな問題は、Alexisとて簡単に解決できるようなものではない。ユーザーからもスタンスが曖昧だなどという批判も増えている。それに対して、繰り返し回答するAlexisの口調にも少しうんざりしたような様子も見える。

 

トップスピードでさまざまなことをやり遂げようとしている。はっきりとした決定をする前に断定的なことを言いたくない。それが曖昧に聞こえるのかもしれない。しかしわかってほしい。数週間前まで、僕は別の仕事をしていたのだと。

 

Redditのユーザーにも(投資家たちにも?)少し忍耐力がいるのかもしれない。

 

 

 

(完)