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Tim Cookのインディアナ州法問題での発言がなんで思いきりがいいかというと

インディアナ州法がLBGT(レズビアンバイセクシャル、ゲイ、トランスジェンダー)に対する差別を認容ということに対して、米国の大企業、特にアップルのCEOのTim Cookが批判意見を公式に新聞紙上に発表したことを受けて、議論が沸騰している。

 

イギリスのフィナンシャルタイムスの良いところは、そのあたりを、経済論理を軸にすっきりと整理してくれることだ。当然いい点、悪い点はあるが、今回のは、すっきりとしていて面白い。John Gapper名義のコラム。

 

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f3ea465e-d6c9-11e4-97c3-00144feab7de.html?siteedition=intl#axzz3W7nUroW0

 

アップル、セールスフォース、スターバックスなどの大企業のCEOたちが続々と、インディアナ州の新法に対して非難発言を行っている。

 

言っていることはもっともだし、その理念において、おかしなところはない。ただ、通常はこの種の微妙な問題に対しては、発言を差し控えるのが通例だったのに、今、声をそろえて高々と声を上げる背景はというのが、ファイナンシャルタイムスの目線である。

 

つきつめれば、差別は商売に差し支えるということである。

 

保守層の感情的反発が起こりうる問題でリベラルなスタンスを明確にするにはするなりの理由がある。

 

企業経営の観点から言えば、Tim Cookは批判などしない方がいい。宗教色の強い保守派の経営者がゲイの人たちを採用しなかったり、顧客として認めなかったなら、単に、その企業体力が損なわれるだけであり、競合他社が弱くなることはアップルにとっても悪いことじゃないからだ。さらには差別的採用方針は、当然、労働コストの上昇につながり、対象市場も限られてしまう。

 

繰り返しになるが、差別は商売に差し支える。

 

企業経営の観点からは、労働者がどんな出自であれ、生産性が高く、適応力に優れ、勤勉でありさえすれば構わない。

 

だから大騒ぎする必要もなかったのだが、あえて、こういったCEOたちが高らかに理念を述べたにはそれなりの理由があるというのが、FT流の読み筋。

彼らには緻密な計算があるという。消費者という観点から見れば、宗教色の強い保守派層よりもリベラルなスタンスの若い消費者の方が、市場規模が大きいのである。企業は一気に、消費者戦略をMillennials(1980年以降に生まれた35歳以下の世代:Y世代)にシフトさせているのだと。

 

アップルは誰に対してもオープン。さまざまな出自、見かけ、信仰、信条に対して平等であるというのは、マーケティングスローガンとしても効果的なのである。

 

同性婚などをめぐる世論はめまぐるしく変化している。どこかが主流の意見かというのが常に変化している。そういった変化の行方をうかがう上で、こういった経済論理を通じた分析というものには、一定の有効性があるのは否めない。