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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

Empireのルシウス・ライオンかTidalのJay Zか

FoxのEmpireが大人気だ。たしかに音楽業界の内側が描かれるという知的好奇心をひく部分と、rags-to-richesの成り上がりストーリー、王国の危機など人気ドラマの要素が満載である。しかも、ティンバランドの音楽は本物。

 

 

 

ヤクの売人からラップの世界のスーパースターに成り上がり、自分の会社はIPO直前のルシアスがALSを発病し、余命3年というところから物語は始まる。彼には、元妻のクッキーとの間に、三人の子供がいる。その三人の中から急ぎ後継者を見つけなければならない。クッキーは会社の基礎を作るための闇の仕事の責めで刑務所に入っていた。しかし謎の取引で出所し、突然ルシアスの前に現れる。会社に対する自分の権利と、A&R(Artist & Repertories)への復帰を主張する。

 

ルシアスの今の恋人でA&Rのアニカと元妻クッキーとの対立など見どころは多い。

 

特に、ルシアスをスーパースターに育て上げたという自負のあるクッキーの浪花節的育成は、五木寛之の「艶歌」に出てくる演歌の竜を思い出させるところもあっていい。

 

現実の世界の成り上がりサクセスストーリーを体現するJay Zの存在とこんなドラマが複合的に絡み合っているから、TidalもEmpireに対する関心も大沸騰することになるということか。

 

今日もニューヨークタイムスにTidal関連の記事。Vikas Bajaj名義。

 

The Risks of Jay Z’s New Venture - NYTimes.com

 

(当然、続報に次ぐ続報だから、繰り返しは仕方のないところ。ただ後で出る記事の方がこなれてくるのは必定。Chain-Readingの良さは、そのあたりのプロセスも味わうことができることだ。暇人ならではの楽しみ(笑))

 

1919年のユナイテッドアーチスト設立のように、「搾取されつづけてきた」ミュージシャンが一堂に立ち上がったという呈で始まったTidal。たしかにミュージシャンが団結してというところが、他のストリーミングサービスとの決定的な違いだ。

 

Spotifyの無料配信の中に組み込まれるのを嫌がってSpotifyから全面撤退したTaylor Swiftも満足する仕組みだろうとBajajはいう。Jay Zの仕組みは、通常音質のフォーマットは月額10ドル、CDレベルの高音質は月額20ドル。

 

ただアーチストは本当に賛同するのか?賛同したとしても、それが何か意味があるかと疑問符を呈する。実際、ストリーミングサービスに対して楽曲の使用権を許諾するのはアーチストじゃなくて、レコード会社だという現実がある。Jay ZはアーチストをTidalの出資者にすることで、彼らがレコード会社との契約変更を行うということを期待しているのかもしれないが、それは長く、時間のかかるプロセスになるだろうと。

 

Madonna, Kanye West, Jack White, Alicia Keysなど錚々たるメンバーが並んではいるが、これがその他の大多数のミュージシャンを巻き込む動きになるかもまだわからない。なにせ、エゴの塊だからねえ。

 

自分でもサービスを使ってみた。確かに音質は他のストリーミングサービスより素晴らしい。でもユーザーインタフェースは使い勝手がいいとは言えない。高品質版の値段も含めて改善の余地は多い。

 

というような、続報特有のまとめてみました的な記事だったが、面白かったのは、記事へのコメントの方だった。最近、このウェブのコメントを読むのにはまっている。

 

Twitterやサウンドクラウドなどへの投資で有名なベンチャーキャピタリストのFred WilsonのブログサイトA VCのコメント欄は、まさにコミュニティの掲示板で、ホストが投げたテーマに対して多くの識者が喧々諤々の議論を行い、どんどん暴走し、新しいテーマが語られるというような感じになっている。

 

音質をそれほど消費者は気にしていないんじゃないか。Tidalの動きを、すでに多くのタイトルを抱えていたVHSに対抗して、後発で戦いを挑んだBetaに譬えるような意見の人。簡単に言えば、これはアーチストのためのプロジェクトで、あまりリスナーのことは考えていないね。

 

プロジェクトの理想の良さは認めるものの、実現のためには多くのハードルがある。大変だと思うけど、僕は期待しているよというCautiously Optimisticという派。

 

 

何がアーチスト、音楽のためだ。結局、自分たちの金だろうという意見もちらほら。本当の音楽愛好家のために音楽制作が行われていたのは大昔のことで、今は絶望的だと。

 

なかには、Alicia Keysが記者会見で、これは商売以上のものなのだと発言に対する

カンザスのPat Coxさんのこんなコメント。

 

Do they think we’re stupid? THIS IS ALL ABOUT THE MONEY FOR THEM AND NOTHING ELSE! Don’t play us for fools and then expect us to pay for your “service”! Give us the courtesy of your honesty!

 

もうすでに大金持ちのミュージシャンがもっと取り分をとるって話じゃないか。何を気取ってるんだ!という感じか。

 

Empire人気もあって、成り上がった過去はともかく今は大成功者のミュージシャンに対する憧れと同時に、嫉妬やある種の憎しみのようなものもまじりあった大衆感情というものが逆巻いているんだろう。

 

ある意味、Alicia Keysの発言もそれも踏まえた炎上マーケティングの一種かもしれない。