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NYT Lynn Margulisの追悼記事(Obituary)

11月25日にニューヨーク・タイムスが掲載したLynn MrgulisのObituary(追悼記事)。
彼女の最初の夫が「コンタクト」などのベストセラーで知られるカール・セーガンだったのは知らなかった。

不眠症になった時に、彼が原作の映画「コンタクト」だけは、閉所恐怖症的になっていた当時の僕を普通に受け入れてくれた。唯一、映画館の闇の中で苦しく感じなかった映画だった。

微生物たちの惑星という眼で地球をとらえることのおおらかさが魅力的だ。

ブルース・ウェーバー名義の追悼記事。

進化生物学者リン・マーギュリス、進化論者73歳で死去
http://www.nytimes.com/2011/11/25/science/lynn-margulis-trailblazing-theorist-on-evolution-dies-at-73.html?_r=1&scp=1&sq=Lyn%20Margulis&st=cse
By BRUCE WEBER

細胞の起源に関する研究で進化理論の分野を大きく変革した生物学者のリン・マーギュリスが火曜日にマサチューセッツ州アムハーストの自宅で亡くなった。享年73歳。

彼女は5日前に脳出血で倒れ、そのまま回復することがなかった。と、最初の夫であるコスモロジストのカール・セーガンとの間に生まれた息子Dorion Saganは言う。

マーギュリス博士は、1988年よりアムハーストにあるマサチューセッツ大学の地球科学の名誉教授だった。

彼女が1960年代に、どちらかといえば嘲りの対象だった何人かの先駆者たちの仕事に依拠して、自分の理論を公表した。真核細胞は、複数バクテリア間の共生関係の結果、誕生したしたという考え方である。

この仮説は当時支配的だった「進化を促進する主たるメカニズムはランダムな突然変異である」という新ダーウィン主義的考え方に真っ向から挑戦するものだった。

マーギュリス博士は重要なのは共生のメカニズムだと主張したのである。すなわち、進化は相互に助け合いながら成長し、一体となり再生産をするようになった複数の生命体によるものだと考えたのだ。この理論は当時主流だった進化理論の重要な部分を破壊した。そして進化というものは種のレベルで視えるようになるかなり前に、微生物の段階で始まるのだという考え方だった。

娘のジェニファー・マーギュリスは次のように語る。

「彼女はいつも微生物のが重要なのだと言っていた。そして自分のことを微生物のスポークスパーソンと呼んでいた」

マーギュリス博士が最初に発表した論文は、1967年にJournal of Theoretical Biology上で発表される前に15の学術雑誌から拒否された。


その後、この理論を支持する追加的な証拠を加えた拡大版が彼女の最初の書籍となった。彼女の連続細胞内共生理論に基づく「真核細胞の起源」である。

改訂版が1981年に「細胞進化における共生」というタイトルで出版され、多くの著名科学者の理論上の前提に果敢に挑戦しているにもかかわらず、進化理論として一般に受け入れられることになった。

1995年にマーギュリス博士は次のように語った。

「進化論者たちは過去5億年にすぎない動物の歴史に没頭している。我々は生命自身がそれよりはるかに古くに発生したことを知っているにもかかわらずだ。化石記録はほぼ40億年前までに遡ることができるの。1960年代までは、科学者たちは生命の進化を考える際に化石証拠の存在を無視していた。理由はそれが解釈不能だからだった。

「私は細胞と微生物を視野に入れて、進化生物学を研究してきた。リチャード・ドーキンス、ジョン・メイナード・スミス、ジョージ・ウィリアムス、リチャード・ルウォンティン、ナイルス・エルドレッジ、スティーブン・J.グールドはすべて動物学的伝統の出身である。同僚のサイモン・ロブソンの言葉を借りると、こういった人たちは30億年ばかり時代遅れの情報を使って研究していることになる。」

Lynn Petra Alexanderは1938年3月5日にシカゴで生まれた。彼女が育ったのはシカゴのサウスサイドの悪い環境の下だった。父親は弁護士兼ビジネスマン。早熟な彼女は、シカゴ大学を18歳で卒業。シカゴ大学で、後の結婚相手であるセーガン博士と階段で良くすれ違うようになった。

彼女はウィスコンシン大学から遺伝学と動物学で修士号を取得し、カリフォルニア大学バークレーで、遺伝学の博士号を取得した。マサチューセッツ大学に職を得る前に、彼女は22年間ボストン大学で教鞭をとっていた。

マーギュリス博士は、James E. Lovelockの協力者であり支援者としても知られる。この方面の活動では何かと物議を醸している。Lovelockはガイア理論を主張している。この理論は地球自体、すなわち環境、地質、そこに住む生命体が自動制御システムであり、それ自体で永久に存続することを可能にする条件を維持していると考えるものである。別の言い方をすれば、それ自体が生きているということである。

マーギュリス博士とセーガン博士は結局離婚することになり、彼女は化学者のトーマスN・マーギュリスと再婚することになった。セーガン博士は1996年に亡くなった。

多くの子供と9人の孫に看取られることになった。

マーギュリス博士とドリオン・セーガンは1986年に出版された40億年の進化の歴史を読みやすい言葉でたどった「ミクロコスモス」の中で、こんなことを書き残している。

「かつて存在した種の99.99%以上が既に絶滅した。しかし多くの細胞をが住んでいる緑の惑星は30億年以上も継続している。現在、過去、未来におけるこの緑色の基礎は、ミクロコスモス、すなわち数兆の対話し、進化しつづける微生物たちなのだ。」
(以上)