ビジネススクールにはiPadが似合う(NYT)
スティーブ・ジョブスが生きていたら、次に革命を起こしたいと思っていたのは、テレビ、教科書、写真だったと、アイザックソンがニューヨークタイムスのインタビューに答えていた。
テレビや写真はともかく、教科書というか学習という制度は、まちがいなく、ウェブ技術が革命的変化を与えられる分野だと思う。
ただ既存の制度は、この変化を恐れることはなはだしい。これはある意味、仕方のないことである。しかし、欧州のビジネススクールでは、新しい個人向けデバイスやウェブ技術をどんどん活用しはじめているという記事がニューヨークタイムスに載っていた。
そこで起こっていることが、日本で目新しいのかどうかは定かではないが、象牙の塔の中でも資本主義により密接に同期しているビジネススクールからこういった動きが起こったというのはある意味わかりやすくもある。
ただどこまでいっても、最後に教育において大切なのは、内田樹さんがどこかで書いていたように、生徒が一人もこなくても、なんとしても教えたいという教える側の情熱だという点に変わりはない気がする。
http://www.nytimes.com/2011/11/24/world/americas/schoolwork-gets-swept-up-in-rush-to-go-digital.html?_r=1&ref=technology
CHRISTOPHER F. SCHUETZEという記者の。ビジネススクールにはiPadが似合うというような内容の記事を要約してみると
フランスのビジネススクールEssecでは入学するとすぐにiPadが手渡されるらしい。これはこの大学だけのことではなく、欧州のビジネススクールではiPadやインターネットサービスの活用が進んでいるという。
1学期に数回しか集合授業のないクラスは、Facebookで同級生意識を高めている。大教室で自分の意見や質問を発表するためにはツイッターが活用され、ビデオコンファレンスソフトを使って学生の教員や専門家との対話が行われる等々。
Essecの教育専門家たちによれば、個人向けのアプリや端末がビジネススクールの学生たちにはとても役に立っているという。
タブレットは、ビデオやオーディオファイルの再生ができるので、これにインスタントメッセージやビデオコンファレンスを組み合わせて、より実体験に近い教育環境を提供しはじめているらしい。
Essecはグーグルのサービスを全面利用している。すべてのEメールはGメールのカスタム化バージョンで、リアルタイムコミュニケーションはグーグルの新しいソーシャルネットワーキングサービスであるGoogle+、ケーススタディなどのテキスト教材はGoogle Docというような利用状況らしい。
個人向けデバイスやサービスを採用したのは、単純にそれが、企業向けソリューションより効率的だからという理由らしい。
(セキュリティということにひどくセンシティブになる企業に比べれば、学校組織はより生産性の高い個人向け技術が使いやすいのだろう。)
コンピュータを持っていて、インターネット接続ができるのならば、この学校の学生は一定の同校のファイアーウォール内で全グーグルサービスが利用できるのだという。
講義風景も様変わりである。大教室での講義の最中に、学生たちは、その講義用のハッシュタグを付けて、質問をツイートすることができる。すると、授業をしている教授が手元のスクリーンを流れるタイムラインを眺めながら、重要と思われるものに回答するという流れになっている。
昔ならあまりに基本的すぎるので、質問しにくかった内容も、このやり方だと平気になるようだ。さらに、教える方も、学生の理解度がわかるので、講義も進めやすくなるという考えのようだ。
欧州のビジネススクールは、フェイスブックを使って自分たちの学生やそれ以外の人々と対話する方法も模索しはじめた。
マンハイム大学のビジネススクールでは、フェイスブックのページを使って、教師が自分の学生とコミュニケーションをとっている。この教師は、このページを意図的に公開し、入学希望者や、OBが情報を利用できるようにもしている。
マンハイム大学は、卒業生グループに正式にアプローチする場合には、Facebookではなく、Linkedinというビジネスマンが広く活用しているネットワーキングサービスを利用するようにしているらしい。
同じようにLinkedinのサービスを利用しているEssecは、マンハイム大学とは違って、内部者に利用を限定している。
EssecのOBの多くはグローバル企業の経営層の人々で、彼らは同校のOBや自分の後輩とだけコミュニケーションをとることができるようにしている。
(このあたりは企業というものへの配慮なのだろう。)
すべての学校がテクノロジーに熱心なわけではないようだが、流れは個人に人気のテクノロジーを最大限活用するという方向に向いているようだ。
人気なのはiPadである。
実際に採用した人々は、流行だからではなく、教育の現場で、このタブレットが一番便利だからと強調している。
特に30代後半や40代でビジネススクールの授業を受ける学生たちは、既にタブレットを個人的には使っていて、フェイスブックやツイッターにアカウントを持っている場合が多いので、学ぶという環境では、そういった新しい技術を利用するのにまったく抵抗がないという。
ビジネススクールによっては、iTuneストアのUページを使って学校の人気授業(ビデオ、テープ等)を販売して収益を上げるものも現れてきているという。
こういったコンテンツや、ウェブサービスを組み合わせて、どんどん実体験に近い学習環境が提供されるようになっている。
教授たちも、広い対象にアピールできる可能性に目覚めて、新しい教育コンテンツを作り出す意欲を高める結果になっているらしい。
フランスのビジネススクールが、アップルのiTuneのUページでコンテンツを提供した結果、アメリカ人学生の開拓に成功した例もある。
この試みによって、アップルサイトにおける同校のプレゼンスが上がり、結果、多くのアメリカ人学生をひきつけるようになったという。従来型の教育方法によっては開拓できなかった領域である。
さらに、ウェブ上で学生が質問をすると、それに対して他の学生が投票するシステムを作り、その投票結果を見て、教授が講義内容を準備する学校や、オンライン上でテキストを自分のコースにより適した形で編集することを可能にするシステムを提供する教科書会社も現れている。オンライン利用も、昔どおりの印刷されたテキストも利用可能にしているのだ。(以上)