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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

英国大使館におけるBCCJの状況説明の口述記録(Transcript)

日経新聞等に相当割愛されて報道された結果、不必要に不安感を煽る結果になっている外国大使館の自国民に対する勧告だが、やはり、ジャーナリストたるもの、速報性だけではなく、じっくりと読んでみるという姿勢が必要な気がする。現在の日本のメディアにそういった分業体制はあるのだろうか。大量な情報の一部を恣意的かつ扇情的に使うというのは適切とは思えない。

前のブログで概要を要約したBCCJの専門家による英国大使館向け電話による説明の口述筆記(Transcript)がウェブ上に公開された。

内容の正確さというよりは、状況によって、どのように危機を腑分けして、わかりやすく、信頼性の高い形で伝えるかというあたりに、学ぶべきものを感じた。

口述筆記なので、かなり、重複するので、自分にとって重要と思われる部分をかなり選択的に要約しているので、正確を期したい人は是非原文に当たって欲しい。

Nuclear situation at Fukushima nuclear plant
福島原発における核の状況
16 March 2011
http://ukinjapan.fco.gov.uk/en/news/?view=News&id=566811882

(英国政府のCSO(主席科学オフィサー)であるJohn Beddington教授とそのスタッフが、福島原発の爆発に伴う展開についてコメントをした。(実際には原子力、医療等の専門家数名が、説明及び質問に答えていた。

電話会議なので、日本の英国大使館のDavid Fittonさんがモデレータを行っている。

口述筆記の前に、状況の説明がある。)

福島原発の爆発以後、日本政府は原発から20から30km範囲のすべての人々に対して屋内にとどまり、窓を閉めることをアドバイスしている。20kmの立入禁止地域は依然として変わらない。英国政府はイギリス市民全員に対してこのガイダンスに従うことをアドバイスしている。




主席科学顧問は今朝、日本政府のアドバイスは現状のリスクから見て全くふさわしく、適切なものであると語った。

彼は、現在の福島の状況をチェルノブイリと比較することは全く間違っていることを強調した。チェルノブイリでは、長期間にわたって放射能雲が高度3万フィートの高さにまで放射された。

福島の場合、妥当な(reasonable)最悪シナリオにおいても、爆発の際の火柱、蒸気の柱はせいぜい500mの高さまでに到達するに過ぎず、放射能雲は、極めて原子炉に近い場所だけで発生することになるだろう。

彼は日本政府による20kmの立入禁止地域と、住民が屋内待機の勧告を受けている追加的10km圏の設定は、直接の放射線被曝による健康への悪影響を最小化する上では全く適切な措置であると述べた。

以下は、Sir John Beddingtonが3月15日の東京時間17時に英国大使館との間で行ったカンファレンスコールの口述記録である。英国大使館側には、日本における英国コミュニティのメンバーが参加した。

以下口述記録(transcript)部分の、部分訳である。

[JB] どのように我々が状況をみているかを詳細に説明し、何が、妥当な(reasonable)最悪シナリオで、何がもっともあり得る(most likely)シナリオかについて話そうと考えている。。

基本的な状況は周知の通りだ。日本政府は、原子炉に海水を注入して冷却する努力を続けている。これが第1の防衛線である。これまでのところ、これはそれなりにうまくいっている。

基本的に原子炉は大きな密閉装置(containment vessel)の中に入っている。しかししっかりと冷却しないと、密閉装置の中の圧力が上昇して、その装置では対応できないレベルにまで達してしまう。

しかしながら今朝の結果を見ると、密閉装置の一つがある程度破損している可能性があるようだ。


現場は温度を低くし、密閉装置の内部の圧力を許容範囲にとどめる努力を継続している。この活動に伴って外部に流出する放射性物質の量はかなり限られている。

私の見解では、これが現在起こっていることである。これについてまず最初に言いたいのは、人の健康に与える影響はどれくらいかである。影響はあるがそれは原子炉の周辺の人に対してだけであるというのが私の答えである。

日本政府が実際に課した20kmという立入禁止圏はバランスが取れている(sensible and proportionate)ものだ。この範囲を少し拡大して30kmにすれば、我々もかなり安全(extremely safe)と考えられる水準になると思われる。

ここで、妥当と思われる(reasonable)最悪シナリオは何かについて考えてみることにしよう。現場が原子炉の冷却に失敗し、密閉装置内部の圧力を適切なレベルに維持できなかった場合には、このシナリオが実現する。劇的な言葉であるが、メルトダウンである。しかしメルトダウンとは実際には何を意味するのだろうか。

メルトダウンとは、基本の原子炉の炉心が融解することであり、融解に伴って、核物質がコンテナのフロア部分に落ちることである。すると核物質がコンクリートや他の資材と反応を起こすことになるのである。考えられる最悪のシナリオであるということは、これ以上悪いことが起こるとは考えていないということだ。

この妥当な最悪シナリオにおいては爆発が生じる。この場合は、核物質が空中500メートルほどの高さまで舞い上がることになる。これはかなり深刻である。しかしその地域にとって深刻なのだ。爆発が起こっても、500メートル上空にまで舞い上がるだけならば、すべての場所にとって深刻な問題にはならないのである。

では、こういった核物質が風にのって首都圏(Greater Tokyo)の方向に運ばれ、降雨によって地上に落下してきたならば、問題があるのだろうか。答えは、明らかにノーである。絶対に問題はない。(Absolutely no issue.)

さまざまな問題は原子炉周辺の半径30kmの範囲内で起こっている。具体的なイメージを持ってもらうために、チェルノブイリの例をあげてみることにしよう。チェルノブイリの場合は、グラファイト(黒鉛)製の原子炉で大火が起こり、核物質は高度500メートルではなく、3万フィートにまで舞い上げられた。この状態は数時間ではなく数ヶ月継続した。放射性物質が大気圏上層部にきわめて長い時間とどまることになったのである。

しかしチェルノブイリの場合でも、立入禁止圏は、30kmだった。この範囲外では、人体に放射能が問題を引き起こしたことを示した事実は実証されていない。

チェルノブイリの問題は、人々が(汚染された)水を飲み続け、野菜を食べ続けたことなどである。そこから多くの問題が生じた。日本ではこの問題は起こらないだろう。

ここで再度強調したいのは、これはこの地域や、近接地域にとっては極めて問題が多いし、現場で作業している人々にとっては懸念せざるを得ない問題だが、20から30kmを超える範囲では、健康に対する問題を実際に引き起こすとは思われない。

(健康についての問題についてはHilary Walkerが補足。)

[HW] 強調したいのは、対象地域の外側では、健康問題にはならないということだ。東京に住んでいる人々は、原子炉から極めて遠いところに位置している。そして放射線レベルが若干上昇したという報道がなされたとしても、これは健康への影響という観点からは些細なものなのである。原子炉から遠く離れた人々にとって、生活を脅かす問題はないということを再度確認しておきたい。

(以上がJBとHWによるプレゼンテーションである。これ以降質疑応答に入った。)


[Q]東京でも放射線レベルが正常値より高くなっている報道がある。ある記事では正常値の8倍という表現があったが、正常値の何倍以上になったら懸念する必要があるのか。


[HW] 通常レベル(a background level)の100倍というような単位である。(Orders of a hundred or so).

[JB] 8倍は全く心配すべきレベルではない。100、200、300倍などの数字が測定された場合には、心配する必要が出てくる。

[Q] 許容可能水準はという質問に対して)

[JB] 許容可能水準は基本値(Background)の100倍だろう。

[Q] 今回に状況説明(briefing)の前提になっているのは日本政府や東電が提供している情報だと思うが、そのその信ぴょう性についてはどう考えるか。

[JB]我々の判断のベースになっているのは日本の関連当局が、適切な国際機関に対して提出している情報である。これが普通のプロセスである。

彼らが提供しているのはかなり包括的な情報であり、こういった情報は適切な国際機関に対して提供されているのである。もしあなたが、放射線に関する情報が隠蔽されているというかなり被害妄想(paranoid view)に囚われているとするならば、そんな隠蔽は不可能だと言える。これらの情報は世界中からモニターされているのだ。

放射線レベルが実際にどのくらいかを、外部から正確にモニターできるので、そんなことは起こらないのである。日本政府が実際にすべての情報を提出しているかについては一定の懸念はある。しかし実際には、我々は国際エネルギー機関から情報を得ているので、これらのプラントがどのようなものかについてもかなり詳細な知識を持っている。

[Q] いつになれば安心していいのか。
[JB]いつになったら安心できるかという質問に対しては、率直に言ってわからないと答えるしかない。多くの不確実性があるからだ。今朝爆発があったと聞いて、正直若干驚いた。起こったのは、冷却のために海水を注入するためのバルブがうまく機能せず、その結果、冷却が効率的に行われなかったのだと考えている。

おそらく現場は、これを修理することだろう。重要なのは水を注入することであり、すべてを冷却し、妥当な圧力水準を維持することだ。そうすれば問題はない。

[Q]福島における最悪シナリオの程度がチェルノブイリよりはるかにましであるのはなぜか。

[JB]チェルノブイリにおいては、まず、原子炉が爆発し、炉心部も吹き飛び、炉心部を取り巻いていたグラファイト黒鉛)に着火し、長い間燃え続けるという事態が起こったのである。そのためかなり高熱の火がすべての核物質を通常の対流プロセスの中で大気中に押し上げることになった。

福島の場合は、放射性物質がコンテナのフロアと反応を起こして、圧力が高まると、一度爆発は起こるが、爆発が継続することにはならないと思われる。

この爆発は核物質を500メートル程度上空にまで押し上げる程度のものと予想している。ぴったり500ではないとは思うが、517か483かというぐらいのものである。この点からも、半径20kmを超えるエリアで人間の健康に危機的影響を与える可能性はないと考えている。

[Q] 数日前、日本政府機関が、マグニチュード7を超える余震が起こる確率が70%と予測し、津波の可能性もあると予測した。これが生じた場合、今の最悪シナリオにどのように影響を与えるだろうか。

[JB] 最悪シナリオは変わらない。基本的な問題は、冷却ができず、密閉容器内の圧力が低く維持できない場合の帰結は爆発だからである。

妥当な最悪シナリオは、こういった問題が単独の原子炉で生じるということである。巨大な津波が連続的に起こるというのは相対的に低確率の事態とは思うが、その場合でも要点は引き続き同じであり、爆発が1つではなく2つだったとしても、問題に変わりはない。掛け算でリスクが高まるわけではないからだ。ということで1000m以上まで核物質が巻きあげられるということにはならないと思われる。

いずれにせよ上空500メートルである。さらに爆発の状況も長くは続かない。そして重要なのは、風の向きである。それはいつ起こるのか。風が核物質を乗せるしても、太平洋の方に向かうので、問題にはならないはずだ。

そして二番目の津波が襲来して、現場の人々が問題の起こっている炉心で作業ができないと、問題は起こる。しかしその問題とはこの3つの原発が炎上するということである。こういう事態が発生したとしても我々の先ほどのアドバイスは変わらない。

[Q] ブリティッシュスクールを閉鎖すべきかどうか

[JB] 核物質についての懸念で、閉鎖する必要は全くない。しかし、他の要素によって、閉鎖する必要があるのかも知れない。

[Q] チェルノブイリに関する質問だが、他の国の人の中で病気になった人がいた。問題が立入禁止地域だけの問題だったとしたらなぜこんなことが起こったのか。

[HW] チェルノブイリでは、事故の後に、他国の多くの人々が、汚染された水や食物を摂取した。こういった状況は日本では起こらないと考えている。

[Q] 幼児や妊婦に対する許容水準についてはどう考えればいいのか。

[HW]許容水準というのはもっとも影響をうけやすい人を基準にしているので、我々が語った倍率は、幼児や妊婦を対象にしたものである。

[Q] ヨウ素(iodine)の投与についてはどう考えるか

[Nick Kent] Radio iodineへの被曝は、蒸発しやすいRadio iodineを吸引することで生じる。これは原子力発電所の近接地域で生じることである。そういう状況になった人は、甲状腺(thyroid)へのヨウ素の摂取を阻止するためにStable iodineを摂取すべきである。しかし、東京に住んでいる人がそうする理由はないと思われる。

二番目のもっとも重要な経路は穀物や動物を通じて、牛乳などに入り込むことである。


甲状腺癌(thyroid cancer)が多く見受けられたチェルノブイリでは、ロシア連邦ウクライナにおいて汚染された食品とりわけ牛乳の摂取による被曝が起こったということが今や明らかになっている。

こういった食物連鎖的な問題はこの国では生じない。

要約すると、ヨウ素の服用が緊急に必要とされるのは、原発周辺で吸入リスクをかかえる場合であり、食物連鎖上のヨウ素被曝の可能性もないとすれば、ヨウ素を処方する必要はない。

[Q] どのくらいの風の強さならば、東京へも放射能が飛んでくるというようなことは言えるのか。

[JB] 基本的にそんなことは起こらない。

[Q] 放射能汚染した人と接触する場合には何に気をつけるべきか。

[HW] 現在放射能汚染の問題が最も深刻なのは、原発内で作業している人々である。こういった人々は、特定の浄化プロセスがある。30km圏内の外では、公衆衛生(public health)に悪影響を及ぼすような汚染は予想できない。

[Q] 東京での降雨についてはどうか。屋内にいるとか、帽子を被るとかが必要か。
[JB] 問題はない。重要なのは、福島では放射性物質が500メートル程度上空までにしか舞い上がらないということだ。爆発があったとしても事態に大きな変化はない。さらにこれまでのところ爆発はなく、臨界事故にもなっていないし、原子炉崩壊にもなっていない。しかし妥当な最悪シナリオのもとでも、問題はない。ただ、20、30km圏内では核物質が人体に影響を及ぼす可能性はある。

[Q] 魚介類についての汚染リスクはどうか。

[Lesley P] その可能性はある。しかし日本の食品に対するモニタリングシステムはしっかりしているし、彼らは、それが可能性のある被曝経路であることを理解しているので、魚介類の消費の前に、適切なアドバイスをし、モニタリングを続けると思われる。

[Q] 妥当な(reasonable)最悪シナリオと言っているが、理不尽な(unreasonable)最悪シナリオとは何か。

[JB] 妥当なシナリオは、原子炉の一つが臨界状態になり、爆発することである。あまり起こりそうには思えない(less likely)が不可能ではないのが、原子炉が3つとも臨界状態におちいり爆発することである。これは3つの原子炉すべてでの海水の注入による冷却がすべて失敗し、密閉容器内の圧力が3つすべての原子炉の許容度を超えるということである。これが複合的に起こることはあまり起こりそうには思えない(less likely).