21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

ニューヨークタイムス「米国原子力規制委員会議会証言と米国大使館退避勧告について」

米国大使館の米軍や自国民への避難勧告の背景を説明するNYTの記事。

一部要約。原文はウェブ上で直接要確認。

U.S. Calls Radiation ‘Extremely High’ and Urges Deeper Caution in Japan
(By David E. Sanger and Matthew L.Wald)
http://www.nytimes.com/2011/03/17/world/asia/17nuclear.html?_r=1&hp

原子力規制委員会 Nuclear Regulatory Commissionの委員長が、日本の原発危機に対して、日本政府よりかなり厳しい評価を発表した。その結果、米国民に対して日本政府が設定した立入禁止区域より広い地区からの退避を勧告した。

Gregory Jaczko委員長は、議会において、福島第一原発の第四号機の使用済み燃料棒用のプールの水はすべて蒸発してしまっていると思うと証言した。そのため、プール内の燃料棒が露出し、放射線がにじみだしているだろうと。そして放射線水準は極めて高く、対応努力の遂行能力におそらくは重大な影響を及ぼす可能性があると結論づけている。

彼の分析が正しく、現場の作業チームが現在も、プールを水でいっぱいにして、原子炉の使用済み燃料を冷却させることができない場合には、現場の放射線レベルは、第四号機の修理を困難にするだけでなく、第一原発で他の問題のある原子炉での作業も困難にすることになる。

彼の証言に基づいて、東京のアメリカ大使館は、原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission)のアドバイスを受けて、アメリカ人に対して、福島原発から半径約50マイルからの退避を勧告した。これは日本政府の退避勧告である20km(12マイル)、屋内待機の20kmから30kmよりはるかに広い範囲となっている。

彼の証言は、日本政府が今置かれている問題を明らかにしている。すなわち、放射能の極めて高い領域に少数のチームを送り込んで、プールへの注水を行い続けるか、作業者を守るために、プールを放置して、より広範なメルトダウンを引き起こすかである。

日本政府は、現場の状況をJascko氏ほどは詳細に説明していない。日本政府は、使用済み燃料の完全露出というJascko氏と違う見解を持っている可能性もあるが、見解は同じでも、人々にパニックを起こさせないために説明しないことを選択した可能性もある。

燃料プールの水がすべて蒸発した状態で、作業を行うのは極めて困難である。通常の状態では、水が、冷却だけでなく、作業者をガンマ放射線から遮蔽する働きを果たしている。ヘリコプターから水を放出するという方法は、放射性の蒸気の水柱の中に突入するというリスクからいったん取りやめられている。

Jaczko氏の分析は、こういった状況が連鎖して、原発全体での対応作業のすべてを困難にする可能性があることを示唆している。

ペンタゴンは水曜日に、日本のアメリカ軍は、原発の50マイル内への立入禁止を命じたと発表した。そしてヘリコプターの乗員等には、放射能からの影響を避けるために、ヨウ化カリウム(potassium iodide)を服用しているという。

日本政府や東京電力は詳細は明らかにしてはいないが、対応作業の継続を示唆している。
(以上)