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3月16日ヘラルド・トリビューンが報じた原発事故

2011年3月16日(水)晴天
地下鉄のキオスクで久しぶりにヘラルド・トリビューンを買った。最近は、さほど日本が取り上げられることもないので、ウェブで済ますようにしていた。3月11日以降は、当然ながら、日本のニュースが一面を賑わせている。こんな形で、賑わせることはきわめて残念だ。基本的に日本のマスコミの能力に対する不信感が強いので、報道というものを強く必要とするようになると、いきおい、海外報道に頼らざるを得ない。

彼らがすべて正しいとは思わない。ただし、日本政府、東電などに対する配慮が相対的にないという点では、一面の真実を表すはずだ。

Nuclear Plan in Japan on the brink(By Hirko Tabuchi, David E. Sanger, and Keith Bradsher)

瀬戸際の日本の原子力計画という記事の中のこんな一節。

The succession of problems at Daiichi was initially difficult to interpret, with confusion compounded by incomplete and inconsistent information provided by government officials and executives of the plant’s operator, Toyo Electric Power.

(第一原発で連続して起こった問題を読み解くことが当社は困難だった。理由は、政府当局、東電の経営陣が、不完全で、整合性のない情報を提供を行って、混乱を招いたことが原因である。)

このあたりの情報開示における不誠実さを、上杉隆さんなどのフリージャーナリストが、ツイッター、Uストリームなど新しいソーシャルメディアの中で、批判し続けている。

たしかに、地上波テレビの報道は、NHK以外は見るきがしない。

少々毛色の変わった視点としては、
A disaster, yes, but not a deterrent( Heather Timmons and Vikas Bajal)
日本の災害は、インド、中国の原子力計画を一切抑制しないという記事。

曰く、インドや中国など経済成長をしている国は、今回の日本の事故によっても、今後の原子力発電の政策の変更を考えていない。まだまだ国民に十分な電気が行き渡っていないのだから、自分たちは、原子力発電という選択肢を外すことはできないということだ。

欧米先進国においては、間違いなく反原発の動きが勢いを増すはずであり、このあたりには、南北問題的な違いが生じてくるのだろう。この記事の細かい点でなるほどと思ったのGEと原子力発電所のプロジェクトを考えているインド政府が、その契約の中に、事故の際の発電所プラントのサプライヤ(GE)に対する賠償責任の条項を盛り込もうとしてもめているという件だった。通常はオペレーターに対する賠償責任条項をあっても、サプライヤーに対する責任条項は盛り込まれてこなかったわけだ。今回も、福島原発は確かGEだと思うが、契約上は責任は及ばないわけだ。

昨今の報道の中で、一番重要性を持ってきている使用済み燃料棒のリスク(spent fuel rods)については、

A radioactive peril that’s ‘worse than a meltdown’(BY William J. Broad and Hiroko Tabuchi)

という記事が詳しい。

使用済み燃料棒のリスクは、現在使用されている燃料棒に比べればリスクが低いという発表が東電からなされているが、この記事の中で、インタビューに答えて、David A. Lockbaumという原子力エンジニアが意見をいっている。

使用済み燃料棒においては新しい方が古いものよりも発熱性は高い。冷却プールの中で、数日から1週間近く、プールの水を沸騰させ続ける可能性がある。プールの水が枯渇し、燃料が露出すると火災になる可能性があると述べている。

現実に直近で起こっていることの中にはこういった事態も含まれているのだろう。

「使用済み燃料棒が数ヶ月前のものならば、その最も危険な放射性副産物の一つであるヨウ素 131は無害な形に分解される。しかしセシウム137の場合は、半減期half-life)が30年と長く、放射能を1%レベルにまで低下させるには2世紀かかることになる。

1986年にメルトダウンを引き起こしたチェルノブイリ発電所の周辺の土地を依然として汚染しているのはこのセシウム137なのだ。」

最近、使用済みのプールが着目されているのは、この放射能汚染のリスクの故なのだろう。


外国人が一斉に日本から逃げ出しているというツイッターなどで伝えられる情報については、

Problems intensify for survivors (BY Martin Fackler and Mark McDonald)
という記事の中でこんな風に報じられている。

「連続する原発事故の影響で出国を急ぐ外国人が急増している報道に対して、ある西側外交官は、火曜日の夜に、こういったanecdotes and rumors(ここだけの話や噂)が外国人コミュニティの中で出回っていたと発言した。

ただし、未だ大量出国というような事実は見受けられていないようだ。ちなみに米国大使館は在日米国人に対して、出国勧告はしていない。」

ルース米国大使は、東北5県に1300人の米国人が居住することを明らかにした。現在大使館は、米国人の安否確認を急いでいる。

さまざまな情報の中でぼくが一番大切だと感じたのは、
Radiation Exposure Could Curtail Workers’ Efforts(By Henry Fountain)
原発事故に対応する上で東京電力が直面しているもっとも深刻な問題は、労働力不足であるという内容の記事だった。これはブログを分けて、少し、詳細に要約してみる。
http://www.nytimes.com/2011/03/15/science/15workers.html