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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

クルーグマン 無気力なFed

15年間のデフレ経済の責任は、日本銀行の金融政策の失敗にあるという本がどんどん出版されている。それも中途半端な人たちが主張しているのではない。ちゃんとした経済学者が、続々と、日銀の金融政策批判をあげはじめている。日銀の「信認」などというものにこだわることで、国民生活に多大な損害を与えているということがあまりに自明になってきているのだろうか。

日銀に比べれば、国民生活を守るために、活発に活動している米国Fedも、クルーグマンの眼から見ると、「組織的信認」などというつまらないものにこだわって、米国経済が恐怖のデフレにおちいるのをおめおめと見過ごしている役人根性の塊にしか見えないらしい。

無気力なFedというクルーグマンのコラム。

http://www.nytimes.com/2010/07/12/opinion/12krugman.html?_r=1&ref=global&pagewanted=print

2002年当時、ベン・バーナンキは、日本で起こっているデフレについて深く憂慮していた。長年に及ぶ痛みを伴うほどの低成長、上昇する失業率、明らかに解決困難と思われる金融問題などが日本で生じていた。当時は、優れた為政者がいる先進国でこんなことは起こりえないと考えられていた。こんなことが米国でも起こりうるのかとバーナンキは自問した。

2002年の有名なスピーチの仲で、彼は当時その心配はない、なぜならFedは日本病を阻止するための道具を持っているし、必要なときにはそれを使う覚悟があるからだと答えた。

現在そのバーナンキFed議長。

2002年のスピーチは、彼の遺言のようだ。

たしかに、厳密に言えば、まだデフレ状態ではない。しかしインフレは、Fedの目標とする1.7から2% をはるかに下回っており、恒常的に低下している。

来年のどこかでは、ある程度デフレにおちいる可能性は高い。その一方で、我々は、当時の日本と同様、痛みを伴うほどの低成長、極めて高い失業率、厄介な金融問題を抱えている。

さて、この想定されていたはずの事態に対するFedの対応はどうか。重々しく、のろのろと議論することである。「おそらくはこの状況にいつか何かをしなければならないのかどうか」を長々と論じている。

Fedの無気力さは、今だけのことではない。

経済危機がどんどん悪化する過程で、アメリカの政治的階級が「普通の状態」の定義をどんどん切り下げていくのには、本当にびっくりさせられ、同時にひどく腹立たしかった。

2年ぐらい前までは、現在の状況(失業率が破壊的なほど高いだけでなく、ほとんどの予測者が、この高失業率が長い間続くと予想している)の脅威を予測するだけで心配性の狂人扱いされた。

悪夢が現実、しかも、数百万人のアメリカ人にとって現実になったというのに、いまだに政治家たちには何の緊急性も感じられない。国民の希望は粉々にされたのか、中小企業は破綻するのか、多くの国民生活は破綻するのか。細かいことを気にすることはない、さあ財政赤字の悪を議論しよう。

それでもFedはまだましだろうと期待する人がいるかもしれない。

先ず、Fedオバマ政権と違って、かなりの行動の自由を持っている。上院での60票もいらないし、政策が実行できるかどうかが、ネブラスカメイン州の上院議員のものの見方で決定されるようなことはない。さらに、Fedはこの状況に対して知的な備えができているようにも思われる。先に述べたようにバーナンキ氏は、日本型の経済的罠を逃れるためにはどうすればいいのかを長く、真剣に考えてきたのだ。Fedのアナリストたちは同じ問題に長年執着してきた。

ところが、今や明らかにデフレに向かっているにもかかわらず、Fedは考えを変えようとしない。

Fedはこの状況のもとで、何をしなければならないのか。

Fedが短期国債を買うことで、短期金利を引き下げるというような従来型の金融政策が、限界に達している。

短期金利が既に0に近い。これ以下にどんどん切り下げるというわけにはいかない。(投資家は、マイナス利回りの債券は買わない。それだったら現金を溜め込んでおいた方がいい。)

2002年のバーナンキ氏のメッセージは、0金利状況でもさらにFedにできることがあるということだった。

たとえば、Fedは長期国債を買うことも民間企業の社債を買うこともできる。

短期金利を長期にわたって低水準に維持するとアナウンスして、市場の期待に影響を与えることもできる。長期のインフレ目標を切り上げて、民間セクターに対して借入が良いアイデアで現金を溜め込むのは間違いだと説得しやすくすることも可能だ。

こういった行動のどれがうまくいくかは誰にもわからない。ただ重要なのは、Fedにはまだできることや、すべきことがあるのに、それをしていないということなのだ。

何故なのか。

Fedのスタッフの経済見通しも、他の市場関係者同様、かなり暗いのである。でも私から見ると、その暗さは不十分に思える。

金利を決定する委員会が開かれるたびに予測を行っている地区連銀の総裁たちは、デフレに向かう傾向を十分深刻には受け止めていない。その彼らの予測でさえ、2012年末までは少なくとも続く高失業と目標以下のインフレ率を織り込んでいる。

それでも何もしないのはなぜか。

この疑問に対するもっとも説明らしい説明は、連銀理事のKevin Warshによる最近のスピーチである。

この中で、彼は、2002年にバーナンキ氏が推奨したことを行うならば、Fedへの組織的信認が失われるリスクがあると宣言した。しかし高失業率が継続し、自分のインフレ目標が継続的に満たされていないときに、Fedの信認などに何の意味があるのだろうか。15年間のデフレに対する責任のある日本銀行にどんな信認があるというのだろうか。

何が起こっているとしても、Fedはその優先順位を即刻考え直す必要がある。当時、バーナンキ氏がいったデフレはもはや仮説的な可能性ではなく、いままさに起こり始めているのである。そしてFedはそれを止めるためにできることをすべて行わなくてはならない。