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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

徹底した銀行システムの検査と開示が欧州を救う

あらゆるバブルは過剰信用から生まれる。ヘッジファンドであれ、どんな投機家であれ、自己資金(エクイティ)だけでは、投資ポジションを大きく膨らませることなどできない。銀行が大きく、貸し込んでくれなければ、話は大きくならないのだ。

バブルの崩壊による実体経済を損なわないために、国家が金融緩和や、財政出動をする。すると、別なところで、過剰信用が生み出され、銀行が貸し込める新しい対象が作り出され、別のバブルが生まれる。

しかしバブル崩壊の終わりは、いつも、銀行のバランスシートの毀損と、それに対する国の救済で終わる。

ユーロ危機もその点で目新しさはない。

足下の問題としては、ハンガリーに対する不安が市場に生まれている。

ただし、本質的な問題は、欧州の銀行システムの不良資産問題だ。

ニューヨークタイムスにベルギー元首相Guy Verhofstadtが徹底した金融検査と結果の開示が、日本の失われた10年を繰り返さないために必要という寄稿を行っている。

http://www.nytimes.com/2010/06/01/opinion/01iht-edverhofstadt.html?ref=global&pagewanted=print

ギリシア危機は一応回避されたようで、ポルトガルとスペインもなんとか欧州の救済メカニズムでカバーされるそうだ。欧州はとりあえず一安心のようにも見える。

しかし本当にそうなのか。

とりあえずの危機は収まったとしても、欧州は依然として、脆弱な銀行システムをひきずり続けている。かつては南米やアジアの病だったものが欧州大陸を脅かすようになっている。

金融危機が始まった頃から、欧州全体で、銀行規制を行うということについてのコンセンサスはそもそもなかった。加盟国が国内で解決するという立て付けになっていたので、EUによる強制という考えはなかったのだ。そのうち、この問題が公式に検討されなくなり、各国動向は、誰にもわからなくなってしまった。まさに、この状況が欧州の景気回復を難しくすることが明らかになってきた。

他方、グローバルに見ると景気回復は進行中だ。

世界貿易は回復し、成長率は危機以前の水準あるいはそれ以上になっている。この回復を主導するのは中国やブラジルのような新興国である。

驚くのは、かつてのように欧州と米国の成長率が同期していないことだ。

米国の四半期ごとの輸出成長率は2009年末から2010年のはじめにかけて5%から10%の間で変動している。これに比べて欧州は2%程度だ。

IMFによる今後4年間の経済成長予測によると、ユーロ圏よりも北米の方が2倍から2.5倍高くなっている。

この差は、米国経済が欧州に比べて、より柔軟ということもあるのだろうが、これだけでは説明しきれない。

金融危機に対応する、欧州と米国の政府介入の最初の波が終わり、銀行の健全性を評価するいわゆるストレステストが行われた。このテストは銀行のポートフォリオの内容を検証するものだ。

銀行の資産、負債、リスク水準などが検証されることになる。このようなテストは健全な回復政策には不可欠である。欧州に比べると、米国では、ストレステストは徹底的に行われた。その違いが今現れている。

FRBは米銀資産のほぼ3分の2を徹底的に評価した。その後、個別行の検査結果が公表された。結局、一連のこのプロセスが米国金融市場の絶対的透明性を担保し、民間資本が効率的に銀行システムへの資金投下を行うことを可能にした。

これに比べると、欧州のストレステストは体裁を繕うためだけのものだった。銀行が破綻するという結果が出ないような設定になっていた。面目を失うことを回避したかっただけなのだ。さらに悪いことには、個別行の検査結果は、公表されなかった。

ECBが公式に検査を担当したが、EU加盟国ごと微妙な違いが反映された。検査結果は、投資家にはあまり実践的な意味を持つことはなかった。

とはいえ、欧州の銀行にも民間資本の注入は行われた。しかし個別行の正確な数字が公表されていないのだから、本格的なものにはなっていない。

同様に、各国政府による自国銀行セクターの資本強化、保証などの介入は一応成功したが、十分とはいえなかった。

拙速に行われたので、米国に比べると、未解決の問題が多く残された。

これは危険な状況といわざるを得ない。欧州の銀行システムへの市場の信頼は頼りないものとなった。その結果、欧州の本格的景気回復はいまだ達成されていない。

欧州は今や「日本の冬」とでもいいたいような現実に直面している。1990年代初期の日本の金融危機の後に、日本政府は銀行を迅速に選別することができなかった。

その結果、10年以上も、精彩を欠いた経済状況が継続することになった。2003年になってはじめて、銀行システムの十分な改革が行われ、ようやく、経済成長と雇用の回復が始まったのである。

欧州は自分の間違いや他人の間違いから学ぶ必要がある。

ギリシア問題は、欧州に与えられた貴重なチャンスだ。

今こそ銀行に対する本格的な再建計画を構築しなければならない。欧州金融システム全体に対する規制当局を設立するべきだ。それによって我々は日本型の冬や次の危機を回避することができるのだ。(以上)