21世紀ラジオ (Radio@21)

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金バブル?

Fiat Currencyを辞書で引いたら、不換紙幣という訳になる。何に換えられないのかというと普遍貨幣として、長い間、多くの人が信じてきた金だ。

グローバルインバランスとかいって、アメリカ人が借金して気違いみたいになって消費をすることによって作り出した貿易赤字と、中国や日本などのアジア諸国が、国内で貯蓄ばっかりして、貿易黒字を溜めこむ。その黒字はドルに変わって、結局、アメリカの貿易赤字のお金の手当てに使われている。

昔は、ドルの信認は、普遍貨幣としての金に連動していた。70年代に、ニクソンがその紐帯を絶ち切ってから、ドルは不換紙幣となった。以後、ドル危機は繰り返し人々の心を不安に陥れる。ユーロがドルを補完しはじめたかのようだが、昨今のユーロ危機でそこもおぼつかない。

ドル危機はつねに金に対する需要を高める。そのことがいつも不思議だった。貨幣というものは、結局、時々に、人々が、貨幣と信用するものに過ぎないということが明らかになっていても、人々が金に戻ってくるという不思議。

そんなこと考えていたら、バロンズにRICHARD WIGGINSという人の金相場はバブルだというコラムが載っていた。

金;究極の不換紙幣
http://online.barrons.com/article/SB127508630235098425.html?mod=BOL_hps_popview

金バブルは膨張しつづける可能性がある。しかし今やかなりリスクが高くなってきている。

実際、インフレに対するヘッジだったらもっと良い方法がある。これまでの金融の流行商品と同様に、このバブルも間違いなく終わるだろう。

市場の見方は急速に変化してきている。資金はしばしば間違った方向へと向うことがある。今日、テレビのCMがノンストップで金の宣伝をしていた。多くの人々が人類最古の貨幣の価格上昇に興奮しているようだ。

金価格が記録を塗り替えるにつれて、投資家は殺到して金塊や金貨をためこんできた。

物理的な金に対する需要は5230万トロイオンスまで上昇することが予想されている。これは史上最高額である。米造幣局によると、今年これまでのところで、アメリカイーグル金貨の売上は65%上昇した。

金は最後の拠り所となる通貨かもしれない。しかし金貨に対するプレミアムはかつてみたことのない水準にまで上がっている。1オンスのコインは今、人々が追いかけ、世界中の造幣局がこの需要に追いつけないため、地金の価値以上で取引されている。

人々が追いかけているのは価格のパフォーマンスだ。ミューチャルファンドの実績は投資家からの新規資金流入量と相関している。しかしどちらが原因でどちらが結果なのだろうか。お金は常に集団をひきつける。そして最高のパフォーマンスを挙げているミューチャルファンドのすべてが金にフォーカスしているのだ。

通常金保有は、中央銀行IMFに集中しているものだ。しかし、新しい投資家からの需要に対応するために金を購入しつづけたETFも大手保有者になっている。SPDR Gold Shares(GLD)は370億ドル相当の金を有しており、世界第6位の金保有者である。

金の強気派ですら、ETFゴールドファンドのせいで、金には200から300ドルのプレミアムがのっていることは認めている。

過去の金相場のピークは1980年1月だった。この時期アメリカ人がイランで人質になっており、インフレは制御不能で、サウジアラビアでは騒擾状態が生じていた。こういった種類のことが起こりえないという意味ではない。特にこの国の金利が、世界が米国に対して身の丈以上の生活を許してくれているという事実に依存しているのだから。

しかし金は特殊なコモディティである。過去に鋳造された金すべてが、宝石に使われようとその他の何に使われていようと、いまだにどこかに存在しているのである。この金属は錆びたり、腐ったりしない。そして採掘は毎年続いている。そして金は使い尽くしてしまう可能性のある石油とも違う。

金に向う、別の根拠(安全への避難)はもはや存在していない。おそらく一昔前は、金は、独裁国を通り抜けるための便利な手段だったかもしれないが、今はそんなことはない。皆が、金に魅せられているとき、そしてそれはインフレや通貨リスクに対する最悪の事態に対する備えなのだが、金融先物は存在しなかった。今や、金融先物が存在する。そして金は三流の安全地帯となってしまった。金利も生まないし、保険料もかかる。(教科書を開くと、プラスのキャリー費用とかかれていることだ。)

金の強気筋の根拠は、FRBがこれまで18年間印刷しつづけてきたお金が、インフレの火がついたときに、我々を悩ませることになるだ。

投資家が米国のインフレを懸念するならば、今だったら、財務省証券を売って、ユーロやその他の通貨を購入して、その間の金利を稼げばいいのだ。1970年代型のインフレを恐れる投資家は、インフレ保証型財務省証券を購入すればいいだけだ。

金価格が上昇しつづける可能性はある。インフレ調整ベースで、金は1980年代のピーク時からは遠い。今日のインフレ未調整ベースの2300ドルにあたるのが当時のピーク価格である。しかし、金は今よりリスクが高くなっている。

最大のリスクは、お金が一番集まっている場所に出現するものなのだ。価格が上昇しつづけるところにお金は流入し、価格が下落しはじめると一気に逃げ出すのである。

専門家面していても、所詮、ウォールストリートも大衆心理を表しているにすぎない。市場も流行を追いかける。お金は目新しい場所に集まるものなのだ。

面白みのまったくないオーストリア学派の観察によれば、投資家は集団で過ちを起こす。そのため意見が画一的になっているということは危険なサインなのだ。

過去数十年、常に、お金が殺到する割高なセクターが必ず存在した。そういった市場で、他人を上回る実績を上げたのは、群集に先立って出口を探せた人だけなのである。

過去の避けるべきセクター-

1950年代 エレクトロニクス
1960年代 フランチャイズレストラン
1970年代、人気50名柄と債券
1980年代はエネルギーとバイオテクノロジー。
1990年代は日本とインターネット。
2000年代は不動産と建築

これらすべてのバブルには似た特徴がある。1970年代の後半には、エネルギー銘柄が市場を上回る実績を上げた。1バレル30ドルで、石油会社は大儲けだった。しかし石油価格のイカれた急上昇が1980年代にこの分野を過熱させ、最終的な供給過剰の種をまき、結果、価格が暴落した。

同様に、1970年代に1オンス35ドルでは、真剣な議論の対象外にあった金が、1978年から1980年に600ドルから700ドルになったころには投資の本流に入っていた

貨幣用に使われる金は15%にすぎない。残りは、実需だ。 しかも、非腐食性の半導体用素材としての金の実需は低下している。残念なことに、この柔らかい、ほぼ利用価値のない金属はほとんど産業用に利用されていないのである。

金も不換紙幣にすぎない。

金に価値がある唯一の理由は、人々がそれに価値があると思っているからだけなのだ。

最終的には金バブルも涙とともに終わるだろう。金価格がどこまで下落するかを予測できるものはいない。しかし賢い動きは、早めに手仕舞うことだ。(以上)