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鳩山退陣 本当に何も変わっていないだろうか

鳩山首相が辞任した。政治家としても引退するらしい。小沢幹事長もともに辞任。市場は、いまだ、その事実をどう読みこむかにとまどっているようだ。

何も変わらなかったというような紋切り型のコメントがとりあえず発せられる。これはマスコミ例文集にでもあるような類だ。

政権交代後、ぼくたちは何も変わらなかっただろうか。

そんなことはない。ぼくたちは、日米関係というものをリアルに感じるようになった。前政権と、自分達が、見ないふりをしてすましていたものがつきつけられた。

政治というものが直面する、仮借のなさと、政治的決断と民主主義というものが根源的に持っている困難さが、首相の天性の手際の悪さの中で露呈した。政治のプロたちは、その手際の悪さを亡国として非難する。

しかし、密約体質で、ものごとが決定されていくことと、物事の本質的な困難さを直視できることのどちらを選ぶか。手際の悪さの中で、ぼくたちにつきつけられたのは、こういった自分の判断である。

事業仕訳と、郵政民営化の逆コースと矛盾するものが手際悪く並存している。

世界最悪の財政再建と、デフレの克服というトレードオフには、単純な正解はない。市場と政治の間の時差のようなものが、この状況をさらに困難にする。FTのマーチン・ウルフの言うように、市場が今は求めていないが、将来求めるようになるかも知れないものに答えようとするメンタリティの広がりだ。

今のところ、鳩山氏が作り出した混乱の中で、ぼくの頭の中で明らかになったものがある。
財政再建にはおそらくどこかで増税が必要である。そして日本という国は、法人税率は世界平均で高めで、国民の税負担率はそれほど高くない。その徴税可能性が、ぎりぎりのところで、日本という国の信用力を支えている。
増税が必要であり、徹底した徴税が不可欠であるということには同意しても、その使い方に対しては、選別的に判断したい。その意味で、政治ショーではなく、本質的な意味で事業仕分けは重要だ。民主党が、この部分、公共セクターの効率化と、税金の使い方についての責任という旗をおろさない限り、政権交代の意味はあった。
③ 日米同盟というものは、過去の経緯も含めて、克明に国民に示されるべきである。そして沖縄という問題を正面から受け止める必要がある。その過程で、自分達の歴史についてそれぞれの、借り物ではない、清算をしていかなければならない。
④ マスコミというものがあたりまではあるが、党派性の強いものであるということ、しかし、それなしに、ぼくたちは、現実というものを知りえない(あるいは持ち得ない)ということを痛感した。これはテクノロジーによって根源的に変化するものではない。

鳩山政権誕生まで、ぼくは、こんなことを、じっくりと考えてみることがなかった。

この首相は、その作り出した混乱も含めて、民主主義における政治運営の本質的な困難さをさらけだすことでぼくの考え方を変えた。

これは皮肉じゃなく、彼の貢献だと思う。

鳩山さん、ご苦労様。