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21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

クルーグマン 大統領の宿敵

クルーグマンが、ヘラルドのいつものページに「宿敵(old enemies)」というコラムを書いている。オバマ大統領の政敵についての面白い見立てだ。Rand Paulなどに代表される、一見、ポピュリズムの台頭のような動きだけに目を囚われていると、真実の敵が見えてこない。実際には、企業献金の流れが、圧倒的に共和党寄りになっていることに現れる、アメリカ企業社会の現政権に対する憎悪が、草の根ポピュリズムを最大限利用し、11月の選挙に向けてフルスロットルになっているという内容。

http://www.nytimes.com/2010/05/24/opinion/24krugman.html?ref=global&pagewanted=print

オバマの敵といっても、勢いを増している、Tea Party動向のことを言っているのではない。クルーグマンはコーポレートアメリカの中の現政権への憎悪の高まりを指摘している。

大企業の動向を見るために、彼は、企業献金の動向を追いかけている。

もともと共和党寄りとはいえ、どちらかといえば中庸だった商業銀行の共和党向け献金が昨年の53%から63%に増加している。

伝統的に民主党寄りだった証券業界も、共和党への献金を増加させている。

石油やガス企業は、以前から共和党よりだったが、現在は、全体の76%を共和党に寄付している。

コーポレートアメリカは、本当に現政権を憎悪しているようなのだ。

一つの理由は、税金。

法人税というよりは、経営者などが属する富裕層に対する課税強化だ。

オバマは、最富裕層の税率をクリントン時代の水準に戻そうとしている。さらに医療改革の税源に、高所得層に対する付加税を考えている。こういった増税は、CEOや投資銀行やその他金融界の数多くの大物たちに対する打撃になる。

本当は、こんな人達のことは心配する必要などない。いまでも、極端に良い生活を送っているのだ。今回の増税も、彼らにとって大打撃になるわけではない。しかし、だからといって、彼らの怒りが収まるわけではない。

税金が全てではない。

オバマ政権の支持者たちは、オバマ大統領の金融改革の手ぬるさや、石油の海洋掘削などへの政府支援に失望を隠さない。ところが、その程度の規制の動き、すなわちブッシュ時代の寛大さからのちょっとした逆行に対してさせ、企業は、逆上する。

しかし客観的に見ても、企業の規制に対する反発は、まともじゃない。

金融業界などは、規制緩和の世界で、無謀な経営を繰り返し、結果、1500万人の米失業者を産み出し、最悪の結果を回避するために巨大な納税者の資金を使った当事者だ。

それにもかかわらず、新しい規制なしで、事業を開始できるとでも思っているのだろうか。ところが、まともじゃない、金融業界の人々は、明らかにそれを期待している。

オバマ大統領と民主党が直面しているのは、右派ポピュリズムに基づく反対運動だけではないのだ。しかも、こういった動きが主要な要因でもない。こういった草の根の怒りは、11月の選挙での共和党への大勝利へ向かって、企業によって誘導され、利用されている。

どこかで聞いたことがないだろうか。右派はこのやりかたを10年以上使い続けてきている。アイデンティティ政治によって選挙運動を煽り立て、選挙後は、政治の優先順位を、企業献金者用に組み直していくのだ。

選挙の時には、自分はテロに対して甘い東海岸のリベラル派ではなく、真のアメリカ人だと叫びながら、いったん選挙に勝つと社会保障(Social Security)の民営化が自分の政治的使命だという宣言するような類だ。

共和党候補者に対する巨額な企業献金を提供することを目的として新設されたAmerican Crossroadsという組織がKarl Rove(ブッシュ大統領の腹心として強大な影響力を持っていた)の発案であるということは、このあたりを知るものには、何の驚きももたらさない。

しかし草の根の反乱も利用されっぱなしじゃないのではないだろうかと。ところが残念ながら、これは頼りにはならない。

先週、Tea Party運動の人気者で、ケンタッキー州の上院選の共和党候補であるランド・ポール(Rand Paul)は、メキシコ湾における原油流出事故における大統領のBPに対する批判は、「反米的」であり、「こういった事故は時折発生するものだ」と発言した。こういった右派の連中はムード的にはポピュリストに見えるが、実態はかなり大企業寄りのポピュリズムなのだ。

さて、大統領と民主党はどうすればいいのか。オバマ大統領は、超党派を目指している。ところが、それに反して、彼はフランクリン・ルーズベルトとよく似た立場に置かれている。ルーズベルトはこの状態を有名な1936年のスピーチでこう述べた。

「平和の宿敵たち、企業、金融独占、投機、無謀な貸出、階級対立、セクショナリズム、戦争成金、などとの継続的戦い」

しかし、こういったオバマの状況は必ずしも悪くない。

ルーズベルトは企業からの反対をむしろ自らの勲章に変えた。

彼は声高らかに、「私は、彼らの憎悪を歓迎する。」と宣言した。

今こそオバマ大統領は、内なるFDRを見つけ、同じように振舞うべきなのだ。(以上)