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角川総一 毎日5分の「日経新聞」道場

大学に入学して、経済学を学び始めたときのことを思い出している。

買いたての教科書の説明は、世間知らずの学生の頭にはすっきりと入らなかった。

経済学というものが複数の変数の相互連動によって決定されるという大づかみの理解は大事なのだが、実際に、そういった枠組みで現実をどのように分析していくかというあたりの手がかりがなかったからだ。

最近、早朝、日経新聞をじっくり読むようになっている。

大学生の頃に、経済学の学習の中心に、日経新聞で、日々、経済現象に触れることを据えていたら、もっと経済学的思考が身についたのになあと思う。

角川総一の『毎日5分の「日経新聞道場角川SSC新書が、こういった日経新聞を通じて、経済全体を理解するための、素晴らしい手がかりを提供してくれている。

景気のよしあし、為替、金利、債券、株式、物価といった、経済の構成要素間の基本的な関係、経済・金融の世界を貫いている最も重要なメカニズムを説明している。

また最低限のデータを定点観測することによって、それをどのように具体的に続けるかを丁寧に説明してくれている。

こういった定点観測をする上で、反射神経的に身につけておくといい、経済変数間のルールを、角川さんは11の連想ゲームという形でまとめている。

①物価が上がる→金利が上がる
②景気が上向く→金利が上がる
金利が下がる→景気が上向く
金利が上がる→通貨が高くなる
金利が上がる→物価が下がる
⑥物価が上がる→通貨が安くなる
⑦通貨が高くなる→輸出が伸び悩む
⑧通貨が高くなる→輸入が増えて物価が下がる
⑨通貨が安くなる→金利が上がる
金利が上がる→株価が下がる
⑪株価が上がる→金利があがる

それぞれのルールが複数の経路を通じて実現することはわかりやすい図で示されている。

理論的に言えば、経済システムは一つの変数から別の変数への一方向的決定関係ではなく、複数の変数の連立方程式的同時決定である。

僕が学んだ大学の経済学では、経済システムの全体像が同時決定的に提示されたので、そのそれぞれの因果関係をリアルに身につけるチャンスがなかった。そんなことは自分で予習しておけというスタンスなんだろうが、単純に、教師の教える能力が足りなかっただけだと思う。

日々、日経新聞を使って、経済の主要変数の特定の相互関係を定点観測する泥臭い手順を教えることなく、きれいな理論の全体像を教えることは単純に不親切かつ二流の教え方なのだ。こういった事実の蓄積と、経済モデルの相関を体感させることが本当に経済学を教えるということなのだと思う。

とてもいい本だった。