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IMF大活躍

アイスランド危機、ギリシア危機と、久々に、金融危機専門のインベストメントバンカー、ディールメーカーとしての存在感を増しているIMFの長であるDominique Strauss-Kahnのインタビューが面白かった。

実際、ユーロ圏全体によるギリシアを含むPIIGS諸国を対象とした支援策をまとめ上げるに際しても、多くのStakeholderの押し合いへし合いが錯綜する状況の中で、ディールメーキングをしていく上で重要な役割を果たした。

特にユーロの中核であるドイツのメルケル首相は、選挙を人質にとられ、動きが取れない状況になっていたから、適宜、悪者役が必要になった。

実際、どんなディールでも当事者は錯綜するもので、交渉当事者同士の直接対決をすると、ものごとがデッドロックに陥る可能性がある。その時には、交渉相手方は、交渉当事者を直接非難するのではなく、相手方の弁護士や、インベストメントバンカーを叩くというのはよくあるパターンである。

交渉はほっておくと袋小路に陥る確率が高くなる、だからこそ、仲介者が必要となるわけだ。


http://www.nytimes.com/2010/05/12/business/global/12imf.html?scp=2&sq=IMF&st=cse
ヘラルド・トリビューンの一面のLandon Thomas Jrにいきいきと答える目立ちたがり気味のStrauss-Kahn(フランスのサルコジ大統領の政治的ライバル)。


追加債務によって債務危機を乗りきれるのかという当然の疑問に対しては、比較的こぶりのギリシアの救済によって、あえて特定化はしないものの、スペインやポルトガルの中堅諸国に対する緊縮財政のプレッシャーをかけるという意図を隠さない。

ただ今回の進め方の中で、貸し手の側に対して一定の譲歩を一切要求しなかった手法への批判があるという。

たしかに、ドイツの輸出に有利な水準で設定されるユーロによって、経済力よりも割高な通貨に拘束されることになったギリシアを、ドイツなどの銀行が借金漬けにして、輸入を行わせたことが財政赤字に拡大につながっていったというロジックには一定の説得力がある。

いわば消費者金融のような手口だということだ。

実際、グローバルな金融危機を引き起こさずに、貸し手にも応分の痛みを与えることを少なくとも検討することはできたはずだというのがロジックである。

Strauss-Kahnは、これに対して債務リストラは、ギリシアの競争力の問題を解決しないと答えている。

IMFの出自は第二次世界大戦後、金融危機にある国に対して低金利のローンを貸し出すための機関としてだった。しかしこの借入の条件として、借り手国は、財政削減、通貨切り下げなどを通じて、国のバランスシートの改善を受けれなければならない。ワシントンに本拠を置く、IMFの加盟国は186カ国で、経済規模に応じた資金貢献を行っている。

IMFは、毎年、国別の経済状況に対する分析を発表している。それによれば、すでに今回のソブリンリスクは予想されていた。

にもかかわらず、なぜ、問題は回避されないか。

”At the end of the day, it is the government that has the last word. Everyone wants a warning system, but when you tell a government they have a problem, they don't want to listen."

「結局、最終権限を持っているのは各国の政府だからだ。警報システムが不要だという人はだれもいない。しかし政府に対して、具体的に問題があると伝えると、彼らは耳を傾けようとしないのだ。」(Strauss-Kahn)

しかし、IMFの声は徐々に各国政府に届くようになりつつあるという。

資金提供力もあるが、結局、IMFの力というのは、冷徹に真実を語るところにあるわけで、それが真実であるならば、最後には人は耳を傾けることになるのだ。」(以上)

Article IVレポートはウェブ上で手に入るようなので、ちょっと気をつけて読まなくてはいけない。