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トム・フリードマン「生まれたての赤ん坊が初めて見るものは」

日本の報道だけに触れていると、日本だけが、世界に出遅れて、無策で、どうしようもない気になってしまう。でもヘラルドを読んでたら、けっこうどうしようもないと感じているのは、日本だけじゃないことがわかる。

トーマスLフリードマンが、ギリシア危機や英国の状況などを見ながら、自分達の飽食の世代の終焉について辛口のコラムを書いている。

ギリシア、英国の問題は対岸の火事ではない。

これらの問題は、まさに米国がおかれた状況そのものである。

つまりは、自分達、ベビーブーマーが、親たちの世代が多くの犠牲や投資によって営々として築きあげた豊かな世界を、イナゴのように食い尽くしてしまったのだと。

自分達の世代は、保守派が、厳しい公共サービスの削減なしでも、減税が可能だとか、リベラル派が増税なしでサービスの拡大ができるだとかいう甘い夢に浸っていた。

英国とギリシアはまさにこの甘い夢から醒めなければならないという我々の宿命を明らかにしてくれたともいえる。

国保守党が行ったもっとも効果的な選挙キャンペーンの例が面白い。

選挙ポスターには生まれたての赤ん坊の写真の横に、こんな言葉が添えられている。

「(生まれたての赤ん坊が初めて見るものは)パパの目、ママの鼻、そして借金まみれのゴードン・ブラウン。」

“Dad’s eyes, Mum’s nose, Gordon Brown’s debt.”

痛みというものが選挙の前面に押し出されたという意味で、稀有な選挙だった。

痛みに直面しなければ、我々世代は、次世代にツケを先送りにすることで、全面的な世代間闘争を引き起こす可能性がある。だからこそ、再生のための議論をはじめなければならない。国家収入を増やすための増税と、成長促進のための減税。不必要なコストは削減し、成長を刺激するインフラ投資は行うというようなバランスの再確認が必要になるというような内容だった。

日本のダメさ加減が、日本だけの問題じゃないということ、グローバル化した先進国がおしなべて抱える構造問題だということを認識することが必要な気がする。だからといって安心する必要はないが、不必要に危機感を煽るのはもっと馬鹿げている。

いずれにせよ、甘い夢から醒めなければならないことを、冷静に認識するということから物事は始まるのだろう。