ニューヨークタイムス Fackler記者 中曽根元首相インタビュー
ニューヨークタイムスのMartin Fackler記者が、中曽根元首相に対するインタビュー記事を書いた。とりたてて、鋭い切り口が見受けられるわけではないが、英語に訳された、中曽根氏の発言には、日米関係の歴史の蓄積が感じられた。(中曽根さんは91歳。今日、Obituaryが載っていたサリンジャーと同い年とは。)
この記事は、中曽根氏の来歴や、レーガン夫妻との交友なども含めた、カラフルな細部に満ちているが、日米関係についての、彼の主張が明らかになっている部分だけを抜き出して見る。
自らのレーガン元大統領との交友を美化することが強すぎるきらいもあるが、今この時の中曽根発言はそれなりの面白さがあった。
Japan’s Elder Statesman Is Silent No Longer
http://www.nytimes.com/2010/01/30/world/asia/30nakasone.html?ref=asia&pagewanted=print
民主党政権の鳩山首相に対して、混乱している日米関係について、こんなことを言っている。
It is possible, he says, for Japan to act more independently without alienating Washington, its protector and proven friend.
中曽根氏は言う。その保護者であり、長年の友人であるワシントンを疎外することなしに、より日本の独自性を発揮することは可能であると。
さらに、今の日米関係が、1980年半ばに、中曽根氏が首相だった頃に比べれば、はるかに安定していることを指摘する。当時は円安と巨大な貿易黒字と、日本資本による米国企業、資産の買収への不安や、防衛予算についての不徹底に対する米国からの批判など、問題は山積みだった。
“IN my days, we had trade imbalances, and criticism of Japan taking a ‘free ride’ in national security. We don’t have those problems now. The relationship is much more normal. It is on a firmer footing.”
(「私の時代には、貿易不均衡や国防に関する日本ただのり論などがあった。今は当時のような問題はない。関係ははるかに正常だ。関係の基盤も安定している。」)
彼はさらに、鳩山氏は、自分がロナルド・レーガンに対して持ったような個人的信頼関係の構築努力を行うべきだと述べた。
“Increase contact with President Obama. Spend as much time as possible together. I’m not talking about one or two hours. For example, have a meal together. After that, have a long after-meal conversation.”
(「オバマ大統領とのコンタクトを増やす。可能な限り多くの時間を二人で過ごす。1時間や2時間のことではない。例えば、食事を一緒にする。食後に長い時間をかけて対話を続けることだ。」)
彼は民主党政権の誕生を、戦後日本の民主主義の発達のあるべき姿として讃えてもいる。
“FOR the development of Japan’s democracy, I did not think it was good for the Liberal Democratic Party to last forever, or for it to be a permanent ruling party. Being knocked out of power is a good chance to study in the cram school of public opinion.”
(「日本の民主主義の発達のためには、自民党政権が永遠に続くこと、すなわち、常に与党でありつづけることは、良いことではないと考えてきた。自民党が政権から放り出されたことは、彼らが学校にもどって世論というものを学ぶ良いチャンスになる。」)
中曽根氏は鳩山首相が、ワシントンに対して、日中関係を日米関係よりも重要視するような印象を与えていることを非難した。
The relationship with the United States is different from that with China, he said, because “it is built on a security alliance, and not just on the alliance, but on the shared values of liberal democracy, and on its shared ideals.”
(米国との関係は中国との関係とは異なるものだ。理由は、日米関係は安全保障に基づいて構築されている。これは単なる連携というよりは、自由民主主義という共有された価値や、共有された理想に基づく関係だからである。)
国家間の友好関係も、リーダー同士の信頼感に依拠するものである。沖縄のような問題は、対話を通じて解決可能なのだという言葉でインタビューを締めくくっている。