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ニューヨークタイムス 「新しい日本、新しいアジア」

プリンストン大学の政治学教授のG. John Ikenberry とジョージタウン大学の国際関係論教授で
外交問題評議会のシニアフェローであるCharles A. Kupchanが、日本の鳩山政権が目指す、独立路線というものは、最終的には、アジア地域と米国の利益にかなうものだという論文をニューヨークタイムスに掲載している。

無自覚的にメディアにさらされると、対米従属を当たり前とする古いアメリカの印象が強くなるが、オバマのアメリカも、新しいアメリカのために試行錯誤しているというあたりまえのことを忘れてはならないのだろう。

こういった意見が、米国の外交政策の方向性にどのように影響するのかは、ぼくにはわからない。しかし、こういった論文が、ニューヨークタイムスに掲載されるということは、何らかのメッセージであるはずだ。

ジョセフ・ナイのNYTでの論文、Fackler東京支局長の検察批判。NYTやWSJが送ってくるメッセージをどう解釈するのかというのは、知的にきわめて刺激的である。

こういったアメリカの柔軟性を、日本人が、米国メディアによってモニターすることの必要性が増大している。とりわけ外交政策において、よりMatureな視点をぼくたち自身が獲得しなければならない。


A New Japan, a New Asia
新しい日本、新しいアジア
http://www.nytimes.com/2010/01/22/opinion/22iht-edikenberry.html?ref=global&pagewanted=print

今週日米同盟は50周年を迎えた。しかしオバマ政権は、これを嘆くべきか祝うべきかを心底当惑している。

一方で、米国側は、独立心が強く、積極的に自己主張する日本の新政権へかなりの不快感を表明している。Robert Gates国防長官は、沖縄基地の移転に関する議論を再開しようとする東京の動きを、「非生産的」と呼び、代替案は、「政治的に受け入れがたく、実務的にも実行不能」と述べた。

他方、オバマ大統領は、11月の訪日の際に、米日関係は、対等であるべきで、上下関係であってはならないと意見を述べた。さらに国務省事務次官のJames Steinbergは先週「日本の活気のある民主主義の発露」と、「同盟の将来を形成する上でオープンな対話を行う」機会を歓迎すると発言した。

オバマ政権は日本の政策を冷静に受け止める過程で、断固として、鳩山由紀夫首相の政権のフレッシュなアプローチを拒否せず、歓迎する方向を示すべきだ。

鳩山氏の断固とした外国政策に対しては冷たい反応が予想される、第二次世界大戦後、東京は常に保護者であるワシントンに従ってきたからである。

しかしこれは、ひどく間違った対応になるだろう。沖縄基地の立地に疑問を呈することや、米国を介在させない中国との関係を模索する中で、新政権は、日本と米国の関係を貶める意図などもっていない。むしろ、両国の関係をこの地域の新しい政治的、戦略的環境にあわせて更新しようとしているのだ。

日本政府に対して、もとのやり方に戻れというよりは、米国政府は、鳩山政権との間に、より健全でより成熟した関係を構築する努力を行うべきなのだ。

昨年の選挙による民主党の勝利は、日本政治における分水嶺となり、自民党による戦後支配の終焉につながった。自民党が日本政治にがっちりとかけていた鍵を壊すことで、民主党は、これまで表面化されることがなかった問題から抑圧を取り払った。

多くの有権者は、日本が「普通の」国なることを望んでいる。すなわち地政学的責任をより多く担い、ワシントンではなく、東京で外交政策を行う国である。

鳩山氏は、米国基地が沖縄のコミュニティに引き起こす社会問題に対する市民の懸念に対応することを誓った。更に彼は、強固な官僚権力を削減することも誓ったのである。こういった官僚たちは何十年も、外交政策における現状を維持する努力を行ってきたのだ。

日米同盟を神聖なものと考える、古い日本人にとっては、現状維持こそ、最適なものだったのである。しかし若い日本人には鳩山氏が答えを探さねばならないような難しい質問をつきつけるようになっている。

東京がより自立的な外交政策を模索しているのは、アジア地域の戦略的環境の変化を反映したものでもある。

中国の台頭がこの地域の状況を変えつつある。

中国は日本の最大の輸出市場である。中国政府はアジア地域での連携強化のメリットを発見し、日本と新しいレベルの対話に向けてのドアを開いた。一方、北朝鮮の核プログラムは地域対話の新しい緊急性を提示し、日本に米国の力の影から前に出ることを余儀なくさせている。


日本は多くの点で、ベルリンの壁の崩壊後に欧州が辿った道を歩きはじめている。

冷戦終了によって、EUは地域統合を加速し、米国からのより多くの自立を望むようになった。ドイツとフランスは2003年のイラク戦争においては米国に対して反対の論陣をはった。しかし大西洋間の同盟はより強化されることになった。欧州はもはや米国の権力の過剰について不満だけを言っているわけではない。米国の側もアフガニスタンにおける重荷を担い、温暖化を抑制する努力をリードし、グローバル経済の安定化を支援する、独立で有能な欧州の良さを享受するようになった。

日本も同様に米国との同盟を更新する必要がある。そしてワシントンから一定の距離感を持つことで、究極的にはその関係をより強固で成熟したものにすることができるはずだ。日本は平和維持、海外援助、クリーンエネルギー技術の分野でアジア地域のリーダーとなるポテンシャルを有している。

日本が中国との間の二国間関係を深めるにつれて、両国は最終的には第二次世界大戦後フランスとドイツによって達成された種類の和解を反復するチャンスがあるかもしれない。

欧州の人々が自己維持可能な地域の平和を構築したのと同じ方法で、日本は中日の和解と地域統合を推進するために米国との同盟によって得られる安定性を最大限活用すべきなのである。

積極的に発言し、独立の日本の方が、ワシントンに従うだけの日本よりもはるかに東アジアと米国にとってより多くの貢献ができるはずだ。ワシントンと東京がその同盟関係を21世紀に向けるには今なのである。(以上)