21世紀ラジオ (Radio@21)

何かと気になって仕方のないこと (@R21ADIO)

岡田クリントン会談を読む

日経新聞の「低位安定を探った日米外相」という社説。
普天間基地の移設問題で平行線の見解を述べ合い、同盟深化への協議開始で一致した。日米関係がこれ以上傷つくのを恐れた外交的知恵なのだろう。』

まあ、外交というのは、いろんな観客に対して、一度にメッセージを発するという側面もあるのだから、こういった手数というのも不可欠なんだろう。実際、企業の交渉の中でも、論理的には一つのことのイエス・ノーなんだから、早く、白黒つければいいじゃないかというところもあるが、交渉回数という手数を増やすことには明確に意味がある。これは、日本だけのことじゃないはずだ。

だから、
『先方の首脳が「私を信頼して」と言ったのに、それに見合う行動がなければ失望するのが普通である。が、角突き合わせる姿をこれ以上さらせば、両国ともに国際的に傷つくとする自制が働く。その結果が今回の外相会談だった。』

まあ、そんなものなんだろう。

同じ2面の記事で、グーグル問題や、台湾問題での、対中国外交の観点からも、不必要に、日米関係の軋みを見せることも得策ではないという米国のスタンスについてこんな記述があった。

オバマ政権が日本やオーストラリアに期待するのは中国への重し役だ。「日本と没交渉なのは戦略上、得策ではない』とのナイ・ハーバード大教授の助言が今回の軌道修正につながったようだ。』

最近は、やけに新聞を精読するようになっていて、この繋がりで、地下鉄の中で、ヘラルド・トリビューンの「New year, old task for Clinton in Asia」という記事で、Mark Landlerという記者の視点を確かめてみることにした。

日本と中国と同時に、緊張が高まったため、長年来の北朝鮮という問題だけではなく、アジアが、米国外交のhornet’s nest(蜂の巣)になりつつある。

そういった緊張緩和のためもあって、クリントン国務長官は、ハワイで、岡田外相と会見をした。

The talks did not yield any breakthroughs, and afterward, it was clear the two sides were still fall apart.

(会談からは何の飛躍的進歩も生まれなかった。そして会談後は、両者はいまだ決裂状態であることが明らかになった。)

クリントンは記者会見の中で、日本が当初のコミットメントを継続することを期待していると述べた。

Three times, she indicated that the administration of President Barack Obama was not open to any compromise.

オバマ政権はいかなる妥協策にも応じないということを3回も、会見の中で示唆した。)

アメリカメディアでは今回の合意をどのように記述しているかというと、

『2006年に、日米は、基地を沖縄の人口があまり密集していない地域へと移転することに合意した。しかし、新しい連立政権は、その移転の実行を拒否している。鳩山首相は選挙運動中、基地の沖縄県外への移転、場合によっては国外移転まで主張していた。』

事情説明に終始する岡田さんに対するクリントンの姿勢はというと、

Mrs. Clinton said she was sympathetic to political sensitivities in Japan, but she left little doubt that American patience was wearing thin.

(クリントン長官は、日本における政治的複雑さには理解をしめしながらも、アメリカ側の堪忍袋にも限界があることを隠さなかった。)

米国政府の内部には、妥協策を日本側が早急に認めることを期待する向きもあるようだ。

しめくくりのクリントンの言葉。

America’s future is linked to the future of this region, and the future of this region depends on America.
(アメリカの未来は、この地域の未来に関わっている。この地域の未来はアメリカに依存している。)

我がアジアの未来はアメリカにかかっているのよ、なんて言われると少しカチンとするが、そのあたり、大人に構えて、おだてながら、仲間に入れて上げるのが得策(国益)なんだろうな。

ここから、どこまで日本はうまく立ち回れるのだろうか。