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ハリウッド版「実録フェイスブック」なんて見たいかなあ

フェイスブックのクリス・ヒューズのことを調べている。今は、ボストンで、ベンチャーキャピタルのentrepreneur in residenceという立場になっているらしい。これは、プライベートエクイティだとかベンチャーキャピタルが、CEO、CTO候補などを囲う面白いやり方だ。一定の経営プールを人的に押さえて、その後の投資を行っていくのだ。

彼は、近くの大学を訪ねて、起業家候補の学生などと交流を行っているらしい。

そんなことを調べていたら、フェイスブックについてのかなり煽情的な本が出版されるというガーディアンのツイートが飛んできた。

A sexy saga of Facebook's birthというPaul Harris (The Observer)名の記事。


http://www.guardian.co.uk/books/2009/jul/05/facebook-accidental-billionaires-zuckerberg/print

ウェブサイトの創業なんて、ひとにぎりのオタクしか興味を持ちそうもない。さらに、出版権に100万ドルが支払われたり、人気俳優満載のハリウッド大作になりそうな代物じゃないはずだ。

そんな常識を大きく裏切った新刊本が7月14日に全米の書店に並ぶらしい。テーマは、今や2億人以上のユーザーを擁するSNSのトップサイト、フェイスブックの起業物語だ。

ところが内容が、メガネをかけたオタクばかりが登場する話じゃなく、酒、モデルとのセックス、金持ちや権力者の悪業などが満載のスペクタクルなのだ。

この本、The Accidental BIllionaresのカバーもみだらな感じだ。倒れたカクテルグラスの横に捨てられたブラ。その横に書かれた宣伝文句。「セックス、金、天才そして裏切りの物語」この暴露本の著者はボストン在住のBen Mezrichだ。彼は以前、ラスベガスのギャンブラー、影響力の大きな金融業者と日本のヤクザについての年代記を出版して論争を巻き起こしたことがある。

ハーバード大学の学生のMark Zuckerbergと友人たちによるフェイスブックの設立についての物語で、サイトが、彼の同窓生たちの魅力を評価するための内輪のプロジェクトが、クラスメートがコンタクトするための方法となり、最後には、数十億ドル規模のグローバルな現象となっていく過程を描いていると言われる。

Mezrichはこの本の中で、裏切り、ワイルドなセックス、暴飲、そしてシリコンバレーの金持ちが所有するヨットの上でのコアラの丸焼きパーティなどが描かれている。「シリコンバレーをセクシーに描くのに成功したものはいない。しかしこの本はおそらくそれを達成しているだろう。」とCNETのジャーナリストCaroline McCarthyはいう。

ケビン・スペーシーが映画化権を取得して映画化の話が起こっている。


スペイシー以外にも人気テレビシリーズのThe West WingのAaron Sorkinが脚本を書き、ファイトクラブやベンジャミン・バトンのDavid Fincherが監督をうわさされている。Zuckerberg役としては、カナダの俳優のMichael Ceraの名がささやかれている。


このような大物揃いなので、フェイスブックのZuckerbergたちは大喜びかと思った。それが全くそうではない。フェイスブックは、Mezrichの書き方に眉をひそめており、その真実性を強く疑がっている。


「Ben Mezrichは明らかにシリコンバレーのジャッキー・コリンズやダニエル・スティールを目指している。実際、彼の「この本はルポではない。かなり愉しめるはずだ。」という言葉がそれを一番よく表している。特にルポじゃないということに我々は心から同意する。読者たちも同意じ意見のはずだ」とフェイスブックのスポークスマンのElliot Schrageはオブザーバー紙に語った。

実際、この作家は、自分も認めるように、フィクションも混ぜ合わせているようだ。しかし、こういった手法には、法律家、ノンフィクションライターからも強い疑問が発せられている。(以上)


というような、記事だった。日本的にいえば、「小説 ソーシャルネットワーキング」というような感じなのだろう。ハリウッド的に言うと、裸の女と、邪悪な金持ちとヨットが出てこないとセクシーにはならない。たしかにシリコンバレーやハーバードのあるボストンは、ちょっとそんな感じのセクシーさには欠ける。ソーシャルネットワークに無理やりハリウッドの調味料をふりかえたというような感じなんだろうか。

ところで、この記事の中で、もっとも面白かったのは、作者が本に載せるdisclaimer(法的免責文言)についての大学のメディア法の先生のこんなコメント。

"Disclaimers are a legal version of chicken soup. They don't hurt, but they don't always help either,"


免責文言というのは、法律版のチキンスープのようなものだ。たしかに身体に悪くはないだろうが、いつも身体にいいとも限らない。


仕事をしていると、このdisclaimer的なことによく出会う。言っている方も言われている方も内容の有効性は信用などしていないが、風邪をひいたときの子供のように、こんなときはチキンスープよと母親にいわれたような感じが、テーブルの向う側からも伝わってくる。